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20.9.28運開

益田川(飛弾川)上流関連発電所(その2)(22.5/22.7 訪問)

そ の1はこち ら。・0.貯留量など比較確認・1.現 況 高 根第一ダム高根第一発電所高根第二ダム高根第二発電所朝日発電所関係<秋神ダム・朝日ダム・朝日 発電所>増強篇2.増強案(高根上流) 3.増強案(秋神上流)]

0.貯留量など確認   

本項でまずは最上流(朝日秋神を含む)での貯留の状況,次ぎに現況を概観した後,高根第一の(揚水ではない)一般発電所としての機能(使用水量)増強最上流での発電所 に関して議論する。

結局,安定化の為に必要なのは貯留量である。秋神ダムと朝日ダムの合計3,948.9万m3で可成り機能している様だが明記して比較してみる。
高根1・2と似たような位置付けに畑薙1・2がある。流域面積と貯水量の規模感覚も似ている。岩屋ダムに似ているのが多目的ダムの牧尾ダム・長島ダム・大 滝ダムと云ったところか。
三浦ダム(6,160万m3・17m3/s・73.48km2)も貯水量を一冬掛 けてはき出して春先から貯め始める様[wiki] だが連動する秋神・朝日(3,949万m3・31.2m3/s・ 308.3km2)も似たような運用の様である。こちらの方が貯水量が少なく木曽川よりは機 能が劣りそうだが上流の高根第一ダムの3,401.3万m3を加えれば貯留量では比肩する。面積当たりの貯留量で云うとあちらがまだまだ上だが,朝日ダム も冬の間平均13m3/sを供給して渇水期の水量安定化に絶大に寄与しているそう で,十二分に頼もしい存在である。勿論,朝日・秋神の機能は上流の高根第一・第二で確り支えられているに違いない。飛騨川流域一貫開発の心臓部とも云える 区域である。

益田川・馬瀬川
名称
有効貯水量
目的
常時満水位
その他備考
高根第一ダム便覧 3,401.3万m3
P
EL 1,080m
流域:173km2
高根第二ダム便覧   587.5万m3
P
EL 955m

秋神ダム[便覧][wiki 1,697.6万m3 P
EL 872
流域:83.3km2
朝日ダム[便覧][wiki 2,251.3万m3 P
EL 872
流域:225km2
小 計
7,937.7万m3


流域:225km2
岩屋ダム[便覧][wiki
1億5,000万m3
FAWIP

直接:264.9km2
間接:770km2
合 計
2億2,937.7万m3


1034.9km2
(直接:489.9km2)

[参考]木曽川・王滝川
名称
有効貯水量
目的
常時満水位
その他備考
味噌川ダム[便覧
5,500万m3 FNWIP

流域:55.1km2
三浦ダ ム便覧] [wiki
6,160万m3 P

流域:73.4km2
牧尾ダム便覧 6,800万m3

流域:304km2
小 計
1億8,460万m3


流域:349.1km2
木曽ダム  184.4万m3 P


読 書ダム  267.7万m3 P


山 口ダム  126.4万m3 P


落合 ダム  100.0万m3 P









[参考]梓川高瀬川
名称
有効貯水量
目的
常時満水位
その他備考
奈川渡ダム 9,400.0万m3 P
982m
流域:380.5km
水殿ダム 400.0万m3 P


稲核ダム 610万m3 P

流域:444.9km2
小計
1億410万m3


流域:444.9km2
高瀬ダム
1,620万m3
P


七倉ダム
1,620万m3
P


大町ダム
2,800万m3
FNWP

流域:193km2
小計
6,040万m3


流域:193km2
合計
1億6,450万m3


流域:537.9km2



[参考]大井川・寸又川
名称 有効貯水量 目的
常時満水位
その他備考
赤 石ダム




畑薙第一ダム
8,000万m3
P

318km2
畑薙第二ダム
360万m3
P


井川ダム[便覧
1億205万m3
P
EL 665m
取水位
長島ダム[便覧][wiki
6,800万m3
FNAWI
EL 470m
534km2
小 計
2億5,365万m3


534km2
千 頭ダム便 覧
434.9万m3
P

132km2
大間ダム
74.1万m3
P


大井川ダム[便覧
50.3万m3
P

537km2
寸又川ダム[便覧
52.2万m3 P

直接:240.9km2
間接:778km2





合計



1018.9km2

[参考]熊野川(天ノ川・十津川)
名称
有効貯水量
目的
常時満水位
その他備考
川 迫(こうせ)ダム便覧
40万m3
P


九尾(つづらお)ダム便覧
64.8万m3
P


猿谷ダム便覧
1,730万m3
NP


風屋ダム便覧
8,900万m3
P


二津屋ダム便覧
1,100万m3
P



[参考]紀の川(吉野川)
名称
有効貯水量
目的
常時満水位
その他備考
大 迫ダム便 覧 2,670万m3 AWP EL 398.00m 114.8km2
大滝ダム[便覧 7,600万m3 FNWIP EL321.00m 258km2
津風呂ダム[便覧 2,460万m3 AW
EL 236.00m 160.7 km2(+123.4km2[と])
合 計
1億2,730万m3


418km2

奥地だけだと8,000万m3であり徳山ダムの長良川や御母衣ダムの庄川,奥只見ダム・田子倉ダムの只見川・阿賀野川等に比べればそれ程大きいとは云えな いが亜熱帯型に近い?紀の川や熊野川がガバッと降って濁流となって流下するタイプの河と冬期は雪が降ってじっくり雪解け水として流れる河川は設計思想が一 寸違うのかも。
木曽川,大井川などと比べると一寸物足りない気もしてくる。ただ岩屋ダムなどをカウントすると寧ろ十分で木曽川が物足りなく見えてくるけど…。一方,諏訪 湖があるのは違うけど,それ以外に最奥部にはダムのない天竜川よりは充実している様な気もする。
最奥部取水一 覧はこちらに纏めた

落差や標高関係はこんな感じ。高根第一がアーチ型で描かれてるように芸が細かいw

飛騨川上流ダム群縦断位置図
出典:『ダ ム工学』野池(1991)


(朝日ダム)(867m)


因みに降雨量としては乗鞍岳側は小雨,御岳山側は多雨の傾向。

飛騨川発電倍増計画を睨みつつ現況と開発を検討する。

1.現況  

高根(たかね)第一ダム[水力] [便覧][マニア] 
河川     木曾川水系飛騨川
目的/型式     P/アーチ
堤高:133m、堤頂長:276.4m
総貯水容量:4,356.8万m3    有効貯水容量:3,401.3万m3
引水:道 後谷黍 生(きびゅう)川小 長谷 →増強案
満水位標高:1080m    低水位標高:1035m
流域面積/湛水面積     159km2 ( 直接:125km2 間接:34km2 ) /117ha  ←間接流域について:黍生谷だけでは精々間接領域は8.7km2程度である。道後谷を計算しても13.4km2程度。地図には表記がないけど塩蔵川や小 長谷からも取水しているのかと思ったら水力さ んにはそんな表記になっていた。塩蔵川は10.1km2程度,小長谷は2.6km2程度。いずれもとは推計(地理院 図上の手動)だが,併せると8.7(黍生)+13.4(道後)+10.1(塩蔵)+2.6(小長)=34.8km2。ほぼ一致だ,俺の手動なかなかすげえ ♪
ダム事業者     中部電力(株)
着手/竣工     1963/1969

右岸間接流域:



ダムマニアさんに拠ると
>トイレや案内板、駐車場などがあり、気軽に見学することができる
そうな。黍生谷の旧道が通行止めになってて萎えて湖岸寄りの旧道から攻める気をなくしてスルーしてしまった… orz

中部電力(株) 高根第一発電所[水力]   
  昭和44(1969)年 9月:1、2号機運用開始
    昭和44(1969)年11月:3、4号機運用開始
ダム式・混合揚水式
認可最大出力:340,000kW  常時出力:0kW
最大使用水量:300.00m3/s(発電)
有効落差:135.00メートル(発電)
最大有効落差:137.00メートル(発電)
ポンプ水車:4台 総出力372400kW
導水路:総延長2105.8/1229.5/1407.1m
 水車中心標高: 908.00m
流域面積:159.8平方キロメートル
上部貯水池:飛騨川 [高根第一ダム]1080.00m
下部貯水池:飛騨川 [高根第二ダム]943.00m

~黍生谷~

現在は高根第一ダムへ導水をしている。
現地では,色々導水を検討する中で出て来た谷の一つ位の認識で導水路探して見に行くの忘れてた…。
導水の適地位に思って川を覗き込んだ位で終えてしまった。。

先ずは高根第一ダムへ至る旧道(ダム建設前は更に旧旧道があったっぽい?)の入口になっている立派な橋がある(こ こ)。
併し,ここも(朝日ダム等でも通行止めに阻まれた所…)通行止めでダム近傍への到達は断念。。。
22.7
既設ではなく新設検討対象と勘違いしていたので水量はどんなものかと覗き込んだりはしてみたけど谷は深く樹々が茂っていてよく判らん。。
国道(新道)の橋の上から南側(下流)を覗き込むと巨大な砂防ダムっぽいものの半円形が見えた。こ こ。1023mが一気に1007m程になるようだ。
22.7
橋の北側(上流側)では小長谷の合流があるようだった。
22.7
黍生谷からの導水はこの小長谷を地図で見る限り水 道橋or水路管で越えてる様だ。(この画像[北 陸私鉄]は今では通行止めの国道の旧道を跨ぐ此 処らしい)

~小長谷~
小長谷にも取水口があるらしいという記述もあったが状況証拠のみで未確 認。

~塩蔵川~
高根第一発電所に水を供給する高根第一ダムであるが,今も道後谷等から導水しているが,小長谷・黍生川の 導水路を更に 延伸して塩蔵川(現在は高根第二ダムへ流入)からも高根第一に引水したい。1.18kmと近い。どうも検討してみると既にやってるくさい。。
面積は10.75km2
グー グルだとこれが取水設備か?地 理院だと此処に相当。


~徳河谷~
となると新規開発の為には更に約3.7km延ばすと徳河谷に至る。流域は8.4km2。まあ少ないかな。。

この辺は青屋川上流の電源開発(徳河谷や塩蔵川の上流から取水する私案)と被る。 二重投資は不効率ではあるので,塩蔵川の水は共有して棲み分けて,高根第一ダムから距離も遠い徳河は 建設せず青屋川上流部の電源開発に譲るのが順当かとは思うが,塩蔵川や黍生谷の上流の水迄上そちら(青屋側)に取られる代わりに徳河谷迄貪欲にこちらも集 水すると事で高根第一が集める水が減るのを防ぐという考えもあり得るのかも知れない(→詳しくはこちらで色々検討) 。



高根第二ダム[水力]  
着手/竣工:1963/1968
堤高:69m、堤頂長:232m
総貯水容量:1,192.7万m3    有効貯水容量: 578.5万m3
満水位標高:955m     低水位標高:943m
流域面積:173km2     湛水面積:58ha

正面遠景
22.7

背面アップ
21.5

21.5
天端と湖面
22.7
ダム背面と湖面
22.7


中部電力(株) 高根第二発電所[水力] [DB
 運開:1969.3
ダム水路式・調整池式
認可最大出力:26,100kW(以前は25,100kW)  常時出力:2,600kW(以前は590kW)
最大使用水量:40.00m3/s
有効落差:74.60m
最大有効落差:77.50m
水車:出力26615kW(以前は26300kW)×1台
放水路:  総延長1,672.5m
水車中心標高:877.50m
流域面積:173.0km2
取水:飛騨川[高根第二ダム](955.00m)
放水:飛騨川[朝日ダム](875.80m)

高根第二ダムの巨大な放水口(ウォータースライダー!)に圧倒される場所に発電所(左手の建屋)は立地している。
22.7
位置関係はこんな感じ。
雨上がりというか雨も交じる日だったけど特に豪快な放水を見ることは出来なかった。あの程度の水量は未だ未だ余裕ありと云う感じだったか。
22.7
この立地はぼダム式に見えるんだけどダム水路式なのか。。と思ったら放 水路が遥か下に位置してて地下に造って放水路長で落差を稼ぐタイプだったようだ。。

水力さんでは高根第二ダムの引水に塩蔵川や道後谷等ダム湖に流れ込んでいる川が記載されているが明らかだと思うし省略。また道後谷は高根第一ダムに引水さ れている。

前項で既に紹介したがこの下に朝日発電所関連の設備がある。

<朝日発電所関係>     
朝日発電所には二つのダムから水が供給される。一体的に運用される2ダムを併せると3,948.9万m3。そこそこの巨大ダムには違いない。
益田川 の下流のダムの安定的な発電に寄与している。勿論,億単位の年周期運用ダムと比べると物足りなくもあるのは事実。東上田付近770km2で 9,900万m3/年という推計が出たが,山岳部なので比率は高そうであるけど朝日・秋神ダムで390km2。年間どの程度の水を送り出しているのか な??

朝日ダム[便覧][水力
中部電力(株)
着手/竣工:1952/1953
堤高:87m
総貯水容量:2,551.3万立方メートル    有効貯水容量:2,251.3万m3
取水量:32.1m3[朝日発電所]
満水位標高:872m    低水位標高:830m
流域面積:308.3km2 (直接:225.0km2    間接:83.3km2)
湛水面積: 98ha (0.98km2)

朝日ダムと発電所は久々野ダムの奥,寺附の聚落の上にある。
が,道路は此 処で最近起きた災害から通行止になった風で閉鎖されていた。
22.7

国道側からも道路は塞がれており,こちらは長らく通行止めにされてる風体であっ た。
村道徳河線 この先行き止まり 高根村とあって,村道と村が合併に伴い消されたようだ。
徳河ってのは途中,徳 河谷が益田川に合流するからであろう。地図上では寺附迄道路が通っている様に見えるが。。



国道上からのダム湖風景(ダム側)。
22.7

国道上からのダム湖風景(上流側)。
22.7

と云う事で,22.7現在。朝日ダムと発電所を見に行くことは出来ない様である。。
 
~秋神川 ~
秋神(あきがみ)ダム[便覧][水力
益田川支流秋神川
中部電力(株)
着手/竣工:1952/1954
堤高:74m
取水量:24.3m3/s[朝日ダム]
総貯水容量:1,758.4万立方メートル    有効貯水容量:1,697.6万m3
満水位標高:872m    低水位標高:830m 利用水深:42m
流域面積:83.3km2    湛水面積: 70ha (0.70km2)

(株)シーテック 秋神発電所[水力
所在地:岐阜県高山市朝日町小瀬ケ洞
運開:2016.5
ダム式・流込式(河川維持流量従属型)
認可最大出力:290kW
最大使用水量:0.76m3/s
有効落差:50.33m
水車:1台
取水位標高:872m
流域面積:83.3km2
取水:秋神川[秋神ダム]
放水:秋神川

堤体遠景:
22.7
堤体背面:
22.7
一寸混凝土の表面もザラ付きが目立つ様な。。結構老朽化してない??竣工は1954年。未だ昭和20年代である。

湖面風景
22.7


秋神ダムの水利標識。取水量32.1m3/s(連絡水路24.3m3/s)とある。

両ダムは一体的に運用されているので先ずは最大24.3m3/sで朝日ダムに運んで朝日ダムの水と混ぜてから朝日発電所での発電に32.1m3/s使うと云うことの様である。
勿論,河川名が「飛騨川および秋神川」となっているので両方併せてこの表記をしているのだろうけど,それなら貯留量 (建設当初)の16,976,000m3も秋神ダム(1,697.6万m3)と朝日ダム(2,251.3万m3)の合計3,947.9万m3と書くべきで は?

川別に見て見ると,益田川側は約225km2で約6,000万m3,秋神川側は約85km2で約1700万m3と秋神側の水量がやや足りないか?ただ益田 側の高根第一の580万を揚水の水甕分とカウントすると約225km2で約4,800万トンなってこちらの方が少ない位になるのかも知れない。とは水を一 旦貯めるのに役立つことは役立つのでそれ程意味がない訳では無さそう。



朝日発電所[水力]  
中部電力(株)
所在地:岐阜県高山市朝日町寺附
運開:1953
ダム式・貯水池式
認可最大出力:20,500kW      常時出力:6,700kW
最大使用水量:32.10m3/s
有効落差:77.00m
水車:2台 総出力21800kW
導水路:総延長1825.7m
流域面積:308.3km2
取水:飛騨川[朝日ダム]秋神川[秋神ダム](872.00m)
放水:飛騨川[久々野ダム](793.50m)

いずれにせよ朝日D・秋神DのV=4,000万トン弱を背景としたこの朝日PS31.1m3/sが起 点となって(高根第一は混合揚水だし,高根第二はその下受け(=揚水発電の下部調整池)に加えて朝日ダム受け止 めを前提とすると尖頭用っぽくて一寸水量多め。勿論高根両ダムの合計V=4000万m3弱も多いに役には立っている筈だが) 以下,久々野・小坂・東上田・瀬戸・下原と益田川を駆け下って行く。朝日以下で複線化 する計画を構想するならば,上流の貯水量を増加して行きたい所で有る…少なくとも積極的に既設ダムに導水していきた い所である。その他,御岳回りで降水量の多い小坂川や加子母川(白川)や,嘗てダムの計画があった佐見川等も活用して行きたい所で ある。小坂川等は結構上流で下流への波及効果がデカい。