電 力総研 水 力あれこれ
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21.5.17独立
20.9.28運開

益田川(飛弾川)関連発電所(その3・中上流部支流篇)


飛騨川水系電源開発: 飛騨川 益田川(下原~朝日) 益田川 (最上流・源流) 益田川支流開発(小坂ダム口有道谷・大坊本谷小坂川[小坂川発電所など]山之内川竹原川)   馬瀬川

支流の様子をふくめ利水はこんな感じ。基本,倍増計画に整合的な開発を目指す ことになる。というかここでの計画を起点に倍増計画を上から組み立てて行く。


本項では支流部の開発を検討していく。とは云へ結局本流の大開発につらなってしまうのだけど。。
結局,佐見川100m3/s及び新久々野20m3/sを実現しうる水源を上流に求める形になりそうであ る。先ずは 青屋川。

~青屋川~

益田川本流に建設された久々野ダムの直ぐ上を流れる川。この辺は飛騨川水 電シス テムの最上流なのでケチな発電するよりはダムに流し込んで下流での有効活用を図りたい。

『飛騨川』(中電1979)に拠ると第4次水力調査で青屋川が対象となっている。川の長さが現実と対応してない(岩井谷が長倉本谷より長いなど)ので修正 してみた。
出典: 『飛騨川』(中電1979)
これを見ると九蔵本谷と小俣谷の分 岐付近(EL996m)と二又川の途中(長倉本谷と岩井谷の分 岐がEL988なのでそれ以下)で取水する様に描かれているので一寸矛盾がある。
朝日発電所も2系統あるのもよく判らない。
実は『飛騨川』(中電・1979)には久々野の建設とともに朝日発電所増 設の可否を検討せよと通産省から指示があったが地形的に困難という結論を得たとの 記述がある。それを描いているのかも。
いずれにせよ青屋の導水は第一次水力調査や中電の100万キロ構想などにも出てこない割りとレア案件?である。

朝日ダムは満水位872.0m,久々野ダムは満水位793.50mなのでその辺を狙って行きたい。

2.2kmの導水で久々野ダムに導水出来る46.0km2の流域を取れる。

一寸上流にしても面積は余り犠牲にならない。どちらかというとこっちか。久々野ダムの貯水量は朝日・秋神連合の1/100とかなり少ないのである。
但し久 々野Dに流れ込んでくる水を朝日PSの発電を抑制する事にはなるけど朝日ダムの放流を抑制して対応すれば良いだけなのでそれ程問題にならないのではない か。
もともと久々野ダムの最大使用水量(放流量)(34.60m3/s)は朝日発電所のそれ(31.10m3/s)よりもデカいので久々野ダムが満水の状 態で青屋川流域46km2から水が流れ込んでも3.5m3/s迄なら使い切れる。

ということで久々野には4.3km程伸ばして青屋川の他柳瀬谷・深谷からも取水して見 る。11.4km2。 二又・九蔵から朝日への導水42.5km2と併せると53.9km2とな る。狭いけど最大5.0m3/s程度の導水量を設定すれば良いかな?


導水は二又川・九蔵川導水に任せて発電に専念するなら高高度からの落水であろう。EL.1327m付近で取水して見たのが以下の図である。流域15.9km2取 れる。
御岳の裏でちょっと降水量が少ないので落差を加味しても 1.50m3/s程度は期待持てるか。朝日ダムのEL860m落とす と有効落差は460mはとれる。5,880kWってところ。

徳河谷や塩蔵川の水も取れそうであるが,その場合は高根第一ダム導水拡大構想と取り合うこ とになる。塩蔵川 5.9km2程度なら影響は軽微なのではあるまいか。
ただ高根第一・第二をスルーして発電する5,900kW弱にどの程度の意義を見出せば良いのかも不明である。導水込で高根第一にしかも黍生谷辺りに落とす の が良いのかも知れない(塩蔵川でも導水が来ていれば良いんだけどイマイチ実態が不明。)
ということでEL.1350mで取水して見た。黍生と塩蔵で迷いなく取水してみると小俣谷を諦めても結構広い。

[私案]黍生谷発電所
出力:6,500kW[+6.5MW]
水量:3.0m3/s
落差:250m
流域:24.5km2 (九蔵本谷のみで2.96km2ある)
導水:主導水路9.76km(長倉迄なら7.65km)
取水:九 蔵本谷長 倉本谷徳 河谷塩 蔵川黍 生谷 1350m
放水:黍生谷[高根第一ダム導水路取水口]1086m


~朝日付近~

1956~1959年に通産省によって行われた第4次水力調査(取り纏められた結果はこ れ?)には朝日・久々野周辺にはこんな感じになっている。
青屋川からの導水も目を引くが,朝日ダム・発電所と平行して取水口△と発電所○が描かれている。
出典: 『飛騨川』(中電1979)

当時,既に朝日ダムと秋神ダムと朝日発電所は完成(直)後(1953運開・秋神ダムは1954)であり,実は『飛騨川』(中電・1979)には久々野の建 設(1960久々野ダム着工)とともに朝日発電所増設の可否を検討せよと通産省から指示があったが地形的に困難という結論を得たとの記述があるが,それに 先だって調査時点で通産省内のそういう意向に沿って調査が行われた事を示唆してるとみて良いだろう。

また青屋川からの導水はこの朝日以下の増強を睨んだものということなのであろう。

その計画ではこんな感じになっていた。


発電力
水量
落差
取水
放水
水源
貯留量
その他・備考
朝日発電所
既設
20,500kW
32.1m3/s
77.0m
益田川[朝日ダム]
益田川[久々野ダム(予)]
朝日ダム・秋神ダム


新朝日発電所
新設
22,900kW
35.2m3/s
77.0m





久々野発電所
新設
125,000kW
55.2m3/s
268.0m
〃[久々野ダム]
〃[小坂ダム(東上田ダム)]
久々野ダム


久々野発電所
実現
38.400kW※
34.6m3/s
127.48m

〃[引下堰堤(小坂堰堤)]


※現在では38,900kW
新小坂発電所
実現
31,000kW
28.0m3/s





1966運開
小坂発電所
既設
18,400kW※
16.7m3/s





※現在では19,100kW
東上田発電所
既設
35,000kW
40.0m3/s
104.72m
〃〔小坂(東上田)ダム〕
〃〔瀬戸ダム〕



新東上田発電所
新設
38,900kW
44.0m3/s
105.0m
〃〔 〃 〕
〃〔 〃 〕



調査地点の久々野は今の久々野発電所を凌駕する55m3/sの水量で一気に小坂ダム (東上田ダム)迄水をひっぱっていく計画だったようである。そして朝日発電所と平行して新朝日発電所が計画されていた。

こうして朝日発電所~瀬戸ダム迄は今の二倍程度の容量を調査報告していたということになる。

久々野発電所は結局二分割されて上部は使用水量37m3/sの久々野発電所として,下部は小坂発電所3号機として実現している。

結局,朝日時点での増強は実現せず,朝日~久々野は想定よりも小さいまま,時代は火力に移り大々的な流域開発時代は終わりを迎えてしまった様である。


1959当時
1959構想①
2022現在②
①②差
その他・備考
朝日ダム~久々野ダム
32.1m3/s
67.3m3/s※1
32.1m3/s
35.2m3/s
※1 新朝日発電所:35.2m3/s
久々野ダム~引下(小坂)堰堤
0m3/s
55.2m3/s※2
34.6m3/s※5
20.6m3/s
※2 久々野発電所:55.2m3/s ※5 久々野発電所34.6m3/s
引下(小坂)堰堤~小坂(東上田)ダム
16.7m3/s
71.9m3/s※3
44.7m3/s※6
27.2m3/s
※3 久々野発電所:55.2m3/s ※6  小坂発電所3号機28.0m3/s
東上田ダム~瀬戸ダム
40.0m3/s
84.0m3/s※4
40.0m3/s
44.0m3/s
※4 新東上田発電所:44.0m3/s

詰まりこれ以下の区間ではこの増強を睨んでの開発も検討される。


~鈍引川・甲谷~

久々野ダム・発電所のバイパスルートを建設する為にも途中の取水は積極的にして水を増やして行く必要がある。
導水距離を節約するにも新ルートには秋神から西南へ直結した方が良さそうである(新秋神ルートとする)。その場合は秋神ダムの方が水面が高いので面積が 減ってしまいはする(この辺参照)。
新秋神ルートで鈍引川から取水すると6.63km2程の様なので残りは2.5km2程となる。青屋・久々 野導水で11.4km2なので甲谷6.4km2と鈍引2.5km2で合計20.3km2が此処迄の久々野発電所の累計の新規水源流域面積となる。

既存のルートに接続するとなるとこんな感じか。




~無数河(むすこ)川~

珍しい河川名だけど,一寸離れた下流の岩崎谷の益田川合流部に無 数原という場所がある。そちらは「むすはら」なのか?

なんとか久々野PSに送水したい所ではある。無数河川迄5.48km。無数河川から洗足谷迄1.04km程。併せて導水路堰長6.52km程 で20.7km2確 保。

更に神通川水系の 宮川や大楢谷 川からも引っ張って来れれば46.6km2程にもなる(!)け ど流石に厳しいかw





~口有道谷・大坊本谷~<東岸>

秋神から新秋神ルートの建設の有無に拘わらず,秋神の取水に協力したい。こんな 感じで秋神に導水出来る。
久々野・朝日・秋神方面から小坂・引下方 面へ新ルート建設する場合も発電しない時は秋神ダムに取水出来る様に作れるのでは無いか?(奥入瀬方式)
鈍引川は既に計上したので22.6km2が新規水源。


下流には小坂発電所の集水口があったようだが,上流で色々取水して久々野発電所経由で下流に流しているのでこちらの取水量が減っても問題はないだろう。

小坂発電所・集水用取水口[こ れ
取水量:0.8m3/s
流域(推計):22.8km2


現地で視認してきた。
22.7

~阿多粕谷・万願谷~
こちらも大坊と同じく秋神方面へ協力したい。



久々野発電所[水 力
高山市久々野町[場所]・中部電力(株)
出力:38,900kW
最大使用水量:34.60m3/s
水車:出力39500kW×1台
有効落差:127.48m
流域面積:312.3km2
取水:久々野ダム(793.5m)
送水・放水:小坂発電所(3号機)・飛騨川(649.5m)
運開:1962

増強案
さて,此処迄青屋川甲谷・鈍引川口有 道谷・大坊本谷などを確認してきた。これらを纏めるとこんな感じになる。まとめは第二ルート の頁参照

この(案)の一番の問題点は,久々野・引下地点で10m3/s程水が余ってしまう上 に同地点に調整池がない為に水を捨てざる得ないと云う点である。要検討課題である。

小坂ダム(小坂堰堤・引下堰堤)[水力
高山市久々野町[場 所]・中部電力(株)・発電
取水堰堤・貯留量無し
取水:飛騨川(久々野発電所直下)
送水:小坂発電所(1号機・2号機)

~牛牧谷・岩崎谷~<西岸>

小坂発電所の取水口があるようである。
引下堰堤(小坂堰堤)にて

集水路ってのは口有道谷・大坊本谷参照

取水量はそれぞれ 牛牧谷0.2m3/s 岩崎谷0.1m3/s である。

例の如く『飛騨川』を紐解いてみるも水路トンネルの難工事や両谷を跨ぐ水路橋の記述はあるものの取水口の記述はみあたらなかった。図面上にも特にないよう である。後補なのか?






小坂川(→こちら参照)   

今は一箇所のみであるが凄い水量である。ペルトン水車利用で水の変動対策もばっちりである。

中部電力(株) 小坂川発電所[水力
下呂市小坂町落合[場所]
運開:1983
水路式/流込式
認可最大出力:21,300kW  常時出力:4,300kW
最大使用水量:6.00m3/s (156.6%)
有効落差:423.90m
水車:立軸ペルトン水車 出力22000kW×1台
導水路(兵衛谷→濁河川):総延長986.1m
導水路(濁河川→発電所):総延長5660.4m
流域面積:38.3平方キロメートル
取水:兵 衛谷濁 河(にごりご)川(1116.00m)
放水:小坂川(659.35m)

流域面積39.3km2にしては最大使用水量が多く6.00m3/sもあって,有効落差が驚異の423mってこともあり,巨大な発電力を叩き出している。
ここは御 嶽山の西側山麓であり,3000~3500mm期待出来る場所であり,ダムもないし一気に 押し寄せる水をがつんと受け止めるのがベストな感じであろう。


小坂川発電所直下(659m)から小坂ダム(509m)迄落差あるので開発可能である。

[私案]新小坂発電所
最大出力:22,900kW[+22.9MW]
最大使用水量:19.0m3/s
有効落差:145m
新規流域;131.65km2→13m3/sは追加取水出来る
取水:大洞川・濁河川・小黒川658m
放水:益田川[小坂(東上田)ダム]509m

本州内陸部のというか中部山岳地帯のポテンシャルすげえな。大洞川上流取水で新小坂発電所大洞川取水口での発電も出来そう。
詳しくはこちらで。

 
~山之内川~

東上田ダムへ導水しようと思ったら川西北部用水路が直下から取水しててもろにかち合う。。

北部用水路取水堰
場 所(EL=576m)
流域:40.55km2


この辺は2,500mm地帯。3.4m3/s程度は取れそう。
用水への配分がどんなもんかは気になるがそれは確保したい。
また平谷・北又渡方式だと5m3/s程取れることになるが勿論,用水への配分が優先されよう。
まあ多分大した水量ではないだろうけど,,

一応4.5m3/sにして取水地点も気持ち高めに取って増強を目論んで東上田ダムにぶち込む。

[私案]山之口発電所
出力:3,500kW[+3.5MW]
水量:4.5m3/s
落差:96m
導水:6.8km (0.51)
流域:38.2km2
落差:605m→505m

調べてみるとこの山之口川,第4次水力調査では調査されている。四美辻発電所という名前である。変わった地名だけど今 でもバス停に残っているようだ。
谷としてはこれ。

諸元は以下の通り:
水量:3.8m3/s 落差:118.0m 出力:3,800kW

私の妄想計画もなかなか良い線行ってるじゃあないかw
落差を取ればもっと出たけど私の案では上流の調整池に導水する事を優先してしまった。

小坂1・2号機の上部水槽に送って新ルート建設[→こちら参照]後使える量が減ってしまう分の補填にしたい。
それを考えると小坂の取水位で取水するのが良さそう。北部用水への流域もより広く残 せる。
導水距離8.66km。



さて此処迄見て来た所で強引に纏めに入る。

私の妄想計画ではどうも大胆に踏み切れなかったけど,高度成長を前に飛騨川の朝日からの二重化を考えてた様であり,脱炭酸ガス・SDGsの現代も二重化を 考えて大丈夫そうである。

朝日~久々野~小坂増強策
嘗て,久々野発電所が現在の小坂3号機を含んだ様な形で一気に小坂ダム(東上田ダム)迄来る様に構想されてた様に,秋神ダムから一気に盛ってきてしまう案 である。なかなか壮観♪
山之口川は取水位を小坂発電所取水位に上げてる。大島谷からも4.74km2取水可能。   

小坂堰堤(引下堰堤)では貯留量がなくて立ち往生したが東上田ダムには56.1万m3と僅かながら貯留量があって貯めることが出来る上に,いずれにせよ増 強を強いられる引下堰堤~小坂ダム間を一気に解決している所は魅力である。勿論今から東上田ダム以下の増強は強いられる訳だが(笑) ただここはただでさ え隘路なので小坂川開発と併せて増強必至なのでええねん♪
とりま上の案での諸元を記しておくと以下の様になる。嘗ての久々野発電所計画を彷彿とさせる朝日ダムと東上田ダムを直結する大発電所となる♪

〔私案〕新秋神発電所
出力:59,100kW[+59.1MW]
水量:20m3/s (←とは原案と同じ)
落差:355m
流域:308.3km2 +アルファ
導水:18.9km
取水:秋神川〔秋神ダム・朝日ダム〕872(~830)m
放水:益田川〔小坂ダム(東上田ダム・東上田発電所・中呂発電所)〕503m

上でも触れた様にもともと此処から中呂分岐迄は益田川の超隘路であったのでそれが更に悪化する訳で解消は急務である。愚直に現行の東上田に平行して増強し ても良いかと思う(その場合(B)の侭で良 い)が,小坂川上流で開発を考えてるのでそっちと投資案件を纏めるとより良さそう である。