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2021.1.4大改訂
2020.8.24作成
気田(けた)川水域水力発電所開発篇B[豊岡・(岩井戸)]

T.現状 1-1 概況  利水状況・年間降水量 1 -2 沿川風景  U.設備利用水量(【→参 照:水量データ】・→ 参照:水 量推計)
V.増強・新設
水量推定・開発方針・開発計画[奥気田豊岡(諸 元低稼働率について)岩井戸気田・竜山春野・光明・横山
(源流部)─奥気田発電所開発[+11.6MW](→水窪ダム)─門桁堰堤(→水窪発電所佐久間ダム)─(岩井戸発電所開 発[+5.1MW])─豊岡発 電所増強[+1.9MW]気田発電所増 強[仮] 春野発電所・気田川秋葉ダム(→秋葉ダム周辺開発→) 光明発電所・ 遠江横山ダム・横山発電所(→天竜川船明ダム周辺開発)


先ずは諸元及び地域の年間降水量を確認。その後低稼働率の現状を分析。

現行豊岡発電所諸元

中部電力(株) 豊岡発電所[→ 気 田川現況]    
一般水力:水路式・流込式
出力 認可最大:8,100kW  常時:700kW[8.6%]←小せえ。。
最大使用水量:5.009m3/s
有効落差:212.10m (▲22.45m)
水車:2台 総出力10,000kW→ 割とデカい余力あり。
設備利用率:28.0%(2015 年度実績),24.8%(2017 年度実績)←低い。。
流域面積:73.3km2※(60km2近くは門桁・瀬戸野堰堤と被る)
導水:総延長7985.7m
取水:気 田川[豊岡堰堤](167立尺?)・大 島谷(こ こか)(3立尺?)・灰 縄沢川(10立尺?)467.58m(上部水槽はこ こ(EL.440m程)にある)
放水:石切川233.03m

何を更新したかは不明だが豊岡の現 行施設の運開は1966との事。

現況の所で色々書いたが結論は"結局,豊岡発電所の課題 は水量が足りないということに尽きるのである"であった。水を余所から引っ張って来たいと思う。
また今は水量的に同一の5.009m3/sと気田発電所豊岡発電所は完全連動しており,豊岡堰堤の様な極小の調整池ではなくもう ちょっと量があると調整電源として役立つのに,と惜しい。
この二点を課題(agenda)として見て行きたい。


〜低設備利用率に就いて〜
豊岡発電所・増強(現況のおさらい)
門桁堰堤によって気田川奥地の水量の多くは水窪発電所へ送られる。これが豊岡発電所が低稼働率の原因に成ってゐると思われる。その下流の面積は極めて小さ かった(17km2程。つまり実質的に17km2程し か無いことになる)。
更に門桁以遠は水窪ダムに積極的に貯水しに行きたいというのが拙案である。
門桁以北は水窪P/Sへの供給(というか水窪ダムでの貯留)がメインが効率的であるとすると豊岡P/Sは水窪と被らない新しい 水源を求めた方が良さそうで 有る(以下でも多少の補強をする)。

豊岡堰堤取水位標高は465m程で ある。上部水槽は EL.450m程。距離によってはもう一寸低くで取水しても大丈夫そう。
現在水量5.009m3/sに対して出力8,100kWであるが,水車の能力は10,000kWある。水量を6.1m3/s位に迄増やせ そうである。
有効落差が 200m超なので,流域面積に対して厚めの水量を積める。6.1m3/s欲しいので45.8km2程流域が欲しい。今は実質的に17km2 程し か無いので(門桁以外の場所で)追加で28km2程欲しい。こ れが目標となる。

稼働率と使用水量と発電効率(→データ)
年度
2015年
2016年
2017年
2009-17年平均
稼働率
28.0% 32.2%
24.8%
24.6%
使用水量
4,620万t
5,080万t
5,950万t
9,400万トン

異常値?っぽいのもあるが,概ね7,000万〜1億トン程度のダム通過流量(=堰堤放流量+発電使用水量)の様である。2014年の堰堤放流量0万m3は 機械の故障かなんかか? 2011年はとんでもない量が通過してるけど,濁流で指を咥えて流れていくのを見ていただけっぽい。
2015年3月なんかは効率的に(1.4百立米しか放流せずに)4.8百立米使い切って発電しているのに同じく4月や12月は何やってんだ?
めっちゃ発電量少ないのに結構放水しちまっている。。流込式で殆ど溜め込み出来ないから一気に流れる時に流れて後は川が干涸らびてたってことか??

と,そもそも今,門桁取水口にいる1m3/sの水を考える。下流のことも考えるとルートは二通り

水窪ルート:門桁取水堰→水窪発電所[1.887MW発電] (取水 位:505m)→佐久間ダム→佐久間発電所[1.144MW発電]→佐久間第二発電所[0.104MW発電]→秋葉ダム→ 秋葉第一発電所[0.45MW]→船明ダム 合計3.585MW
気田ルート:門桁取水堰→豊岡ダム→豊岡発電所[1.62MW発電] (取水 位:467.58m)→気 田発電所[0.479MW発電]→(新設発電所(竜山案):[0.8MW発電])→秋葉ダム→ 秋葉第一発電所[0.45MW])→船明ダム 合計3.36MW

である。(下で検討する新設発電所を 経由して 秋葉ダム へ流して行くルートを見切りで積むせいもあって)見かけよりは発電力に大差が付いてる訳では無いけど,水窪P取水位と豊岡P取水位の40m近い取 水位の差もあり,こちら(気田川ルート)に勝ち目はないのである。
更に(豊岡低稼働率ではあるのだが)門桁には低稼働率の水窪発電所を活性化できるというメリットがある。また必要な時に必要な電気を起こせるのが重要であ るが,水窪・佐久間・秋葉とダム を連ねる天竜川ルートの有利さは明らかである。
ということて豊岡発電所 は門桁 の水は水窪PS(それは佐久間Dで貯留される)に送るとして(出来れば水窪ダムに水を送って貯留含めトータルで水利用効率を増加させたい),豊岡には別の 水源を開拓したい。


門桁の水はなるべく水窪発電所に譲り水窪ダム・佐久間ダムに貯留してもらうとして,石切川や杉川の流域から取水して豊岡堰堤からの常時取水に加えて稼働率を上げて行くのが順当であろ う。

豊岡発電所の一次水域(約17.0km2)

更にその内,メインの水源である豊岡堰堤の一次水域(約8.3km2)


現況5.0m3/sで8.1MWの豊岡発電所であるが,水車能力は何故か10.0MWもある様で,単純計算で水量も6.2m3/s程度に引き上げたい所である。
この水量に対応するには出来れば水源は60km2程度欲しくて(有効落差が212.10mと200m超なので40km2程度でも可),足りない流域面積は30〜40km2と云った所。この分の追加は気田川支流で今は未利用の石切川系統上流からの取水が基本となろう。
出来ればどっかに水窪ダム程度(有効V=2,283.6万m3)の調整池を設けて行きたい。まあ上流は流込式で下流に調整池式がセオリーではあるんだけど。

〜石切川〜
今導水距離8kmほどで落差ロス20m程度となる(豊岡発電所の上部水槽はEL.436m程度にありそう)。石切川側の主要水源となりそうな京丸川と洞木沢の合流点付近迄4.6km程。10〜15m程度の落差ロスで行けるとなると京丸川での取水は450m程度で行ける感じか?
京丸川・洞木沢には410m程の合流点に堤高50m程のダム建設で取水口を纏めたい感じはする(→後から検討)。

呆れるぐらい延々と導水路を延ばしていた豊岡発電所(総延長8.0km弱)の印象だがこうやって見ると杉川迄延ばすとこれまた結構遠いことが解りはする。
また京丸川が一寸標高低くて遠回りになってしまうのでダムを造るならここか。



これは水窪に水を集めようという作戦の桁 から水窪 ダムへの導水路を更に京丸・杉川迄伸ばす計画とぶつかるが,距離的に京丸と杉川はこちらで発電した方がバランスが良いようである。

新規にダムを造れないなら水窪ダム迄導水して貯水出来た方が良いかもしれないが,気田堰堤の ダム化やら気田川最下流のダム建設が出来るなら気田川流域で発電した方が良さそうである。

杉川は遠いし小 俣川(469m)は一寸ずれるが頑張って集水したい。効率はそんなに悪くない。
豊岡堰堤の取水位とおぼしき467m程度で取水した場合の各河川の流域や導水距離は以下の如し:


新最大水量
流域
追加導水距離
導水効率
現行からの変更・その他
玄馬沢・杉川[EL.440m※0]
3.0m3/s(150%) 22.6km2 4.3km※1
4.26※2
※0:諸元は以下参照
※1:合同導水路合流部迄
※2:小俣川含まず
小 俣川 0.6m3/s
5.25km2 1.1km※1
4.77※2
※1:合同導水路合流部迄
※2:杉川含まず
[杉川・小俣川合同導水路]


1.0km※1
4.35※2
※1石切川ダム放水口合同導水路分岐部
※2小俣川・杉川含む
石切川(京丸川・洞木沢)
[石切川ダムEL.396m※1]
2.0m3/s(83%) 18.04km2 4.6km
4.50※2
※1:諸元は以下参照
※2金剛沢・田京沢含む
金剛沢田京沢 0.25m3/s
2.7km2



大島谷
0.15m3/s(79%)
1.90km2

既 設・0.084m3/s(44.1%)
灰縄沢川 0.60m3/s(99%)
6.07km2

既 設・0.278m3/s(45.7%)
初沢
0.13m3/s(93%)
1.39km2


新設
豊岡堰堤 4.647m3/s
8.3km2 8.0km
2.29※
既 設・※:門桁以遠除き大島・灰縄・初沢含む
豊岡発電所
6.2m3/s
[10.0MW]





締めて追加で48.6km2。実質的に17km2程し か無い現行の取水量と足すと66.6km2と現行の豊岡発電所の発電量に対して門桁で取水強化する分追加で欲しい量を集水するには恰度良い面積なので ある。

鍵となるのは京丸ダムや杉川堰堤がどの程度で出来るかって所であるな〜。

石切川ダム('京丸ダム)
堤体場所:浜松市天竜区春野町小俣京丸(石切上流)EL.396m
天端標高460m程度・堤頂長100m程度
湛水面積:0.14km2(13.9ha)・満水位450m・利用水深20m・有効貯水量284万m3

杉川堰堤
堤体場所:浜松市天竜区春野町小俣京丸(川上上流)EL.440m
天端標高:460m程度・満水位:450m

【検討】
伊奈川発電所が高落差(483m)とはいえダム貯水量が80万m3しかない(流域面積は76km2)。それを思えば落差は半分以下だけど貯水量は3倍以上と発電量は伊奈川より出せる可能性はある(流域面積は66.6km2となる)。
とはいえ向こうが最大使用水量11m3/sの水車を擁して40.7MWを発電するのに対してこちらは6.25m3/sで10MW。向こうは雪解け水があっ て貯水量の少なさをカバーしている可能性があるが,こちらは冬はカラカラの遠州である(ただ御嶽山は降水量豊かだが伊奈川のある木曽谷そのものはそれ程降 水量は多くない。)
水窪発電所の26m3/s・50MW・V=2283万m3には遠く及ばないとしても,使用水量を倍増して12.5m3/s・20MW程度にして調整力電源として頑張っても良いのかも。というかその位の投資をしないと引き合わない可能性はある。
とはいえ,巨額投資はなるべくさけるという方針で先ずは最低限現行の水車スペックを活用する方向で行くべきか。水車の更新をする時に,気田堰堤のダム化(→この辺で検討)と併せて放水位を上げつつ,使用水量を倍増させると云った方向性はありかもしれない。そもそも気田堰堤のダム化などせずとも,気田発電所の下流に更に新発電所(竜山発電所(→この辺で検討)or春野発電所(→この辺で検討))を設置するとすると豊岡→気田→下流新発電所→秋葉第一or第三発電所→船明発電所と連檐出来るので豊岡の出力を倍増させるのはそれ程不効率でもないのかも。更に新設の水車は現行設備よりも高効率に出来る筈であるのでもう一寸余裕を持って増強出来そう。

以上を纏めると以下の如し。
[増強案] 豊 岡発電所
出力 認可最大:8,100kW→10,000kW[+1.9MW](〜20,000kW[+11.9MW])
最大使用水量:5.009m3/s→6.2m3/s[+1.2m3/s](〜12.4m3/s[+7.4m3/s])
有効落差:212.10m (逸失落差:▲22.45m)
水車:横軸ペルトン水車ラ2台 総出力10000kW
導水路:8.21km(既設)+10.45km(新設)=18.25km(0.54)
流域面積:73.3km2※+47.9km2
放水:気田川(石切川)233.03m
取水:気田川[豊岡堰堤]、大島谷(こ こか)、灰縄沢川467.58m
+初沢・田 京沢(466m)金 剛沢(476m)・石切川(ダム)[洞 木沢京 丸川]玄 馬沢杉 川[杉川堰堤](459m)

 


【岩井戸発電所構想】
京丸川や杉川水点を更に引き上げるかこちら側の従来導水路はいっそ廃止して一旦 は保留にした岩井 戸発電所(私案を実行に移しても良いのかも知れない。
重複を気にせず30km2フルで使えれば7.8MW程度にはなる。しかも発電した水は 秋葉でもう一度使える。気田経由よりは効率的かも。
と色々考えて見たが一寸導水距離も長く,豊岡の水利用と衝突はする。まあ保留で,豊岡の増強に全力を上げたい。(没案の検討はこちらに移転・保存しておいた。)

[私案・改]岩井戸発電所
出力:5,100kW[+5.1MW]
水量:2.85m3/s
落差:212m
導水:6.4km(小胡桃沢EL.304m付近に堤高20m超のダム建設の必要あり)
流域:23.5km2(但し豊 岡発電所の一 次流域(灰縄沢川0.278m3/s・大島谷0.084m3/s 取水)含む)+豊岡堰堤以遠8.3km2+門桁堰堤瀬戸ノ堰堤以 57km2からの水も流れては来る。
取水:半 血沢入 地沢気 田川(灰縄沢出合) 325m
放水:天竜川[秋葉ダム]108m