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2021.1.4大改訂
2020.8.24作成
気田(けた)川水域水力発電所(とr389水窪森線)現況篇A(21.1.2逍遙)(24.7再訪)

T.現状
1-1 概況 利水状況・年 間降水量 【水量データ 水 量推計
1-2 沿 川風景
U.増強・新設(→別頁・開発篇)

〜 沿 川風景(続)〜
(天竜川合流)─(熊切川合流)─(杉川合流)気 田発電所気田堰堤(石切川合流)─豊岡発電所―(初沢)──(灰 縄沢川)─明神峡─(大島谷)―豊岡堰堤門桁 堰堤瀬戸の 沢堰堤(→水窪発電所)―(門桁川・源流 部・山住峠・水窪河内川)

本稿では前回に引き続き気田堰堤付 近から奥を見て行 く。

気多堰堤と隣接して直ぐ上に豊岡発電所があり,気田川奥地に向かって豊岡発電所の取水口が点在してい る。気田発電所が気田川と杉川の合流点にあったように豊岡発電所も気田川と石切川の合流付近にあり,杉川が現状全く水発に利用されてないのと同様に石切川 も現状では全く水発に利用されていない。

最奥部には門桁堰堤と瀬戸ノ堰堤があって,取水した水は水窪発電所に送られて発電に使われて,その後佐久間ダムへ放水されている。

気多堰堤地点での流域面積は公称143km2であるが,実際には水窪発電所に吸われる門桁堰堤・瀬戸ノ谷堰堤が存在している。
が,それら以奥を除いても86.5km2もある。色々開発余地がありそうである。冬期は冬枯れの静岡県であるが,夏期を中心に降水量はそこそこある(→雨量)。開発は開発篇で検討す る。


【豊岡発電所】→諸元堰堤利水票    
この後石切川と分かれ(杉川同様,本流の筈の気田川が曲がり気味である),道路も今度は暫く杉川を遡上 してトンネルで蛇行をショートカットした様なことは せず石切川を渡り気田川に沿って遡上して いく。曲がるのが県道の本線の丁字路であり,なんかどん詰まり感が結構強い第一印象だった。直進は(恐らく)市道で石切川沿いを遡上し,県道は水窪を目指 しこの青い橋を渡る。
その橋の直上にあるのが豊岡発電所である。この豊岡の放水位(233.03m)の直下に気田の取水位 (231m)があり,連檐している事が判る。


中電:豊岡発電所[水 力][静 岡県発電量][国 交省][wiki]・ [DB]     
運開:1938年[東邦電力(株)(中部電力(岡崎)を1937に合併)]
一般水力:水路式・流込式…定義上流込式となるようだが,豊岡堰堤には 多少の貯留量があるようだ。 30分程持つ量だから小さいけ ど。
出力 認可最大:8,100kW  常時:700kW
最大使用水量:5.009m3/s(180立尺?)
有効落差:212.10m (▲22.45m)→落差ロスが22m超と結構大きい。と思ってたけど久々野強化の検討で大水量で概ね0.1%程度の勾配がついてる様子という経験 則を得 た。水量が少ないので0.3%位の勾配が就いてるとすると導水路堰長8kmで24mはそんなものなのかも。。
水車:2台 総出力10,000kW→ 割とデカい余力あり。
設備利用率:28.0%(2015 年度実績),24.8%(2017 年度実績) 24.6%[09-17平均 [→水量データ
流域面積:73.3km2※
導水:総延長7985.7m(無圧トンネル、蓋渠、水路橋)
取水:気田川[豊岡堰堤](167立尺?)・大島谷(こ こか)(3立尺?)・灰縄沢川(10立尺?) 467.58m
放水:石切川(気田川)[気多堰堤]233.03m

取水量が極めて中途半端だが立尺だとまあまあキリの良い数字になる。特に灰縄沢0.278m3/sとか1 立尺=0.02783m3/sなのでビンゴである。尺貫法かっけえ。まあアメリカのヤードポンド法と華氏の使用は好い加減に止めて欲しいとこだけ ど。。

また気田発電所(→諸元)と全く同一の最大使用水量。これは普段は流込式で運 転していて,いさという僅かな ピーク時のみ最大水量で豊岡・気田と連続して合計10.5MWを叩き出せるという構造の様だ。
コンセプトは良いんだけど問題は門桁の存在による流域の狭さと折角ダムがあるけど貯留量の少なさである。。

※73.3km2で取水量5.01m3/s(係数:68%)である。取り立てて高くは無いけどそれ程低 くも無い。低稼働率(正確には低常時出力)は昨今の大有効落差を活かした流込式水力発電に良くある形態(割と新しい1980〜90年代に開発された小坂川北又渡平谷荒谷早木戸などがこんな形態である)であるが,本発電所はその様な発 電所が 開発される様になるよりももっとずっと前の戦前生まれである。また流込式と良いながら最奥部にはゲート付き,少量の貯水量付きのダム(堰堤)迄持って居 る。

これは察するに後から水窪発電所の建設に伴い門桁取水口で 流域の水が水窪に持ってかれた為のものであろう。門桁の取水が1/3程度とad hocに推計すると実質的 な 流域面積はそれを計算にいれると35.8km2相当になり,5m3/sってのは相当,強気な設定とも云える

結局,豊岡発電所の課題 は水量が足りないということに尽きるのである。。
独自の水源は17km2程し か無い。内8.3km2が豊岡,残る8.7km2が途中の沢だが大島谷と思われる沢は地理院だと川の記載すら無いw
これでは精々1.7m3/s相当,門桁の2/3か らも 取れて3.6m3/sってとこであろう。

後にここらで取水・発電量増強を検討する。

取り敢えず遡上を開始する。

<初沢>   

まず直ぐ現れるのは小さな初沢である[場 所]。
豊岡の取水位は467mだけど上 部水槽の標高は442m程度なので初沢の450m程度で取水出来ないかと思ってるのに,地理院だと地 下水路が294m地点で沢と交叉してるように描画されててこれは間違いやろと思っていた初沢である。

1956年竣工の古い橋が架かっていた。
24.7
川の流れはこんな感じ。それほど水量は無い。取水スルには物足りないのかもしれないけど

と,いつもの様に看板があるが,よく見ると異変が!

川の上流のダムからの放水では無く,この沢の上流の余水路からの水流に 注意とのことである!

早速進入を…と行きたい所だが,門桁遡上の行程の初っ端でもあり,道は初っ端からこの惨 状(出典:ストビュウ)でもあるので諦めて次へ向かってしまった。誰かジムニー奢ってくらはいw





中電:灰 縄沢川堰堤(401m)[豊岡発電所へ送水]   
水利権:0.278m3/s
推定流域面積は6.07km2。取水量面積比は45.8%。大島谷と大体似たようなものである。


>写真は取り忘れたのでス トビュウだけど支流に放流警告の看板が出てるので,ああ此処だなと判った。ただスピード出てたし止まりもせず通過してしまった。(21.1)
すっかり忘れてたけど前回22.1に来た時はこう書いてたのは間違いでこれが初沢であった。

二回目の24.7はナビに目配りしてしっかりと灰縄沢を捕捉。
しっかりと入り口に横付けするもしっかりと塞がれていた…orz
24.7
横にも針が飛び出してるが昔(23.12 すとびゅう)より厳しくなっとるw

しかし入り口の看板にはそれっぽい堰が描かれているようないないような。。

黒い台形の部分(写真のこれ)はこ の辺EL.344m。取水工にしては低すぎるようだ。。

2017年のYamaRecoで のレポ。昔(といっても10年も前ではない,割と最近迄)はもっとゆるゆるだったようだ,,
1km程登った灰縄沢川起点標識付近で右 岸林道と左岸林道に岐れる様だ。で,その辺に灰縄沢の起点があるそうな。ただ標高は401m程度で豊岡発電所には落差が足りない。発電用取水堰はこ の辺(★)になるであろうか?★地点だとすると,流域面積は6.073km2と推定される。

また地理院が記載する導水管の破線付近に本当に導水管が通っていると仮定するとこの辺では逆サイフォンで地上から視認できる筈だが,googleの空撮にもそれらしい施設は確認出来ない。もっと山側の地下深くを通っているようである。

この灰縄沢,約20年前には工事が行われた形跡も。。

2006年の大昌建設(千葉県茂原市)の受 注した工事
物件名
場所
施工内容
機械種類
受注日
豊岡(発)灰縄沢堰堤河床整形工事 静岡県周智郡春野町灰縄 堆積土掘削、はねつけ 「RCM06」 2006年11月

灰縄沢合流の様子。水量はそれなりに豊富に見える。



途中,どこだったか水殿ダ ムの余水吐の様な構造物を潜る。→明神峡という場所の様だ。

ロックシェッドにしては余りにも余水吐なのである。なんでこんなとこになんかの水利施設が!?特に発電所みたいなのは無い筈である。
調べてみるとここだっ。
https://www.google.co.jp/maps/@35.0871374,137.9132093,91m/data=!3m1!1e3?hl=ja

気田川は明神峡という峡谷で,其処に流れ込む谷がある様だが砂防ダムが一杯造られてる様子で道の下に収まるような大人しい子(沢)ではないりょうだ。
グーグルの写真だと水が流れてるし蔦も這ってるしで印象が全然違うな。気持ち悪い絵なんか消して蔦を這わすか苔を生やすかしておいて欲しいとこである



中電:大島谷堰 堤[豊岡発電所へ送水]…位置不明    
水利権:0.084m3/s

真冬の冬枯れに全体に白っぽく色が飛んでしまって色が褪せた感じだけど酷そうな林道で子どもも恐がりそうだったので行かず。
場所は恐らく此 処。林道も大島谷も地図では描かれて無くて不明。24.7に再訪時は夏なので色彩豊か♪
21.1/24.7

→調べるとここ↓(出典:川の名前地図)だっ。 沢っぽいの此 処位しかないよなとは思ってたけど地理院だと川扱いすらされてないww
こちらには林道大島線が描かれている。

 この地図だと林道大島線は大島谷迄は通じてない様に見える。。大島谷へはもう一寸奥(地点)から分岐する道が通じているように見える。

24.7の再訪時は熊鈴を掻き鳴らしながら一寸歩きで奥迄進入を試みる。
大岩が転がるなどしている道は直ぐに土砂崩れ箇所が現れたので無理はせずに直ぐに引き返してきた。上の地図の道が途切れたあたりであろうか。


但し以下で見る様に豊岡堰堤での取水位465mを下がすとこ の辺。この辺だと土砂崩れを乗り越えて進めばこの林道大島線で辿り着けそうな感じはする。。(標高線的に川の分岐点はさっきの川の名前地図(これ)とは違う気がする。。)

大島谷へいくのは山道みたいで上図A点(地理院)らしいが,この点のストビュウはと,,→ これはワイルドww

取水量は最低ランクの0.084m3/s。これでもペイするとは。。
推定流域面積は   1.9km2
基準取水量(私の勝手な経験則・面積[km2]の10%が取水量[m3/s])は0.19m3/sとなるので面積比で44.2%。




豊岡堰堤  

さて,豊岡発電所から随分山の中を走ってやっと豊岡堰堤に着く。滝波・西村・西渡・明谷と更新を機に ゲートが撤去されるダム・堰堤に枚挙に暇がないが,此処は(大した量を取水出来ない癖に?)確りとゲートが残っていて頼もしい。
結構大きな発電力を持つので尖頭タイプとして少しは存在感在るのかもしれない。まあ30分ぐらいしか持たない極小の貯留量なんやけどな。。上流の水窪発電 所門桁堰堤の存在等が関係してる(でも建設はこっちが先)のかも知れないけど,どういう設計思想だったのか。

正面






中電:豊岡堰堤[豊岡発電所へ 送水]    
貯留量:8,572立米(2001年11月現在)→8.868m3(2016.11現在)
水利権:4.647m3/s
流域面積:65.0km2(一次8.3km2・二次[水窪P]56.7km2)→計算
取水位:465m 程度?
レポ:[加 藤のひとり旅=リンク切れ…ゲート空いている][ダ ムの訪問記…ゲート閉まっている][ggl ストビュー]

この青い橋の上の天端は,対岸の山への山道の経路に成ってゐるらしく進入可能っぽい様に見えた。(立入禁止の表示や柵は通路上には無かった。→帰宅後調べ たらこんなルートで 山歩きしてる人がいた。)

利水標ないなあと思ってがっかりして門桁方面へクルマを走らす。ダムの直ぐ脇にトンネルがある。地名から倉柱隧道と云うらしい。

トンネルと抜けると取水施設,そして其処に標識が!
此処は(何故か)途中の全取水施設の水利量も明記されている。

取水部。発電しているようだった。


流域面積:合計65.0km2=単独8.3km2+水窪取水用56.7km2(瀬戸ノ沢3.1km2・門桁 53.6km2)


豊岡堰堤を過ぎて暫く行くと門桁(「かどげた」と訓むらしい。[水窪100山])の聚落が現れその端,県道 が山住(やまずみ)峠へ向かって大きく方向(北から西へ)と性格(川沿いから山越えへ)と変える場所に取水堰が現れる。豊岡発電所から豊岡堰堤は可成り延 々と山の中を行くことになるが,豊岡から門桁へもそれ以上の山の中の遡行となる。呆れるぐらい山の中である。一寸厳粛な気持ちにすらなる。

 門桁  
更に進むと門桁の聚落に至る。厳粛な気持ちが緩んでホッとする。

この聚落の外れに堰堤がある。其処で門桁国有林への分岐もある。以下こちら(そのB)でレポ