『只見川』福島民報社(1964) 田子倉より上流の只見川は人も住まず…ダムがつくられ,足尾連山によって南方から保護されているので普通台風による悪影響は受けない。しかし伊南川は無防 備川で,ひとたび大雨が降れば洪水となって氾濫,手に負えない暴れん坊川となるのだ。… 特に昭和三十三年の21,22号台風はその被害の大きさで住民の記憶に生々しい。… 伊南川筋には…ダムらしいダムはなく,雨の被害を大きくしている。このため(昭和)三十九年七月十八日田島町で開かれた南会津開発協議会総会で,"伊南川 上流目的ダム"(多目的ダム?)の建設促進が大きく取り上げられた。建設地点として伊南村の内川案と大桃案があるが,内川は水没補償が大きく(約四百戸が 対象)経済的にとても無理。大桃は地形としてはよく。福島県も 一応の調査を終えているが,前述のように(とは註:[昭和三十三年の台風の被害を受け]福島県はさっそく三十三年度か ら三十八年度にかけて七億二千万円の巨費を投じ南郷村山口と只見町小林間十二キロの築堤護岸工事を施し,引き続き三十八年度から一億三千万円で,只見町亀 岡地内一千九百メートルの改修工事をすすめている。)下流で大土木工事を施し,しかも発 電の大勢が火主水从原子力へ移りつつある今日,ここに巨費を投じてダムをつくっても採算が合うかどうか,福島県も電発も東北電力も二の足を踏み,結論は出 ていない。 |
只 見特定地域総合開発計画 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 なお、只見川最大の支流である 伊南川流域については計画が頓挫した。舘岩川との合 流 点下流に建設が予定されていた内川ダム・内川発電所計画[こ の辺か]であるが、基礎岩盤が思っ た以上に悪く堤高 119m・貯水容 量3億2000万m3の巨大 ダムを建設するには不安が生じ たことや、水没物件が319戸と本計画中最大となり、交渉の 難航が予想されるという理由から建設を断念。これに伴い内川ダムから トンネルで導水 して80,000kW(80MW)の発電を行う辰巳山発電所計画[辰 巳山はこの辺]も内川ダム中止によ り計画が成り立たなくなったため断念を 余儀なくされた。 一方伊南川は1947年から3 年連続で水害の被害を受けていたことも あり建設省北陸地方建設局 が舘岩川合流点 直上流部の伊南川に洪水調節を目的とし た大桃ダム計画を1950年代後半より立 てていた。高さ74メー ト ル、総貯水容量1,388万m3の重 力式ダムで、内川ダムに比べると大幅に規模は縮小しているが、東北電力は この大桃ダムに電気事業者として参加し、20,600kW (20.6MW)の出力を有する大桃発 電所計画[大 桃はこの辺]を立てた。しかしこの 大桃ダム計画も地盤や水量調査といった 基礎調査を行うに留まり、1960 年代半ばには立ち消えとなっ た。こ れ以後伊南川本流では新規の水力発電計画は実施されず、戦前から稼働している伊南川発電所のみが残るに至った。 まあ奥只見綜合開発に関して詳しくはこの辺。 先ずは当時の計画がどんなものか探ってみる。 図-1 "本流案"に於ける新設・既設発電所の分布 原典:『福島県史14巻 近代資料4』(出 典:仁昌寺正一(1993)「復興期における只見川電源帰属問題と東北開発」より) 地点名(①~⑤は多目的ダム建設地点):①尾瀬原● ②奥只見● ③前沢● ④田子倉● ⑤内川● ⑥辰巳山● ⑦滝● ⑧本名● ⑨上田 ● ⑩沼沢沼● ⑪宮下● ⑫柳津● ⑬片門● ⑭新郷 ⑮山郷 ⑯上野尻● ⑰豊実 ⑱鹿瀬 ⑲揚川 (●:新設予定) 計画では,内川ダム・内川発電所⑤,辰巳山発電所⑥となっていて,1938.10運 開の伊南川発電所が何故か描かれていない様である。場所的には⑧の本名と⑦の滝の間に位置している事になる。 取水的には⑥の辰巳山よりも一寸下が取水口になっている様だ。 先ずは当時の計画がどんなものか探ってみる。 上の図を拡大して地名や発電所名・ダム名などを書き込んだものである。 当初案(本流案)
OCI勧告修正案 当初案(本流案)
建設省構想(1950~1960s)
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地名 | 河川名 |
人口 | 世帯数 | 人口統計ラボ | 標高 |
浜野 | 伊南 |
70 | 24 | ○ | 600m |
(堤体) |
伊南 |
ダ
ム想定地 |
597m |
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内川 | 伊南・舘岩 |
45 | 23 | ○ | 620m |
大原 | 伊南 |
26 | 10 | ○ | 650m |
恥風 | 舘岩 |
46 | 16 | ○ | 630m |
穴原 | 舘岩・西根 |
18 | 9 | ○ | 640m |
たのせ | 舘岩 |
21 | 12 | ○ | 650m |
塩ノ原 | 舘岩 |
82 | 35 | ○ | 670m |
前沢 | 舘岩・前沢入沢 |
41 |
18 |
○ |
670m |
福渡 |
舘岩 |
59 |
28 |
○ |
690m |
松戸原 |
舘岩・湯ノ岐 |
83 |
40 |
○ |
700m |
小立岩 |
伊南 |
34 |
11 |
○(字居
平) |
660m |
大桃 |
伊南 |
133 |
53 |
○(字下ノ
原) |
700m |
内川ダム諸
元 堤体:こ こ(EL.596m) 満水位:655m 有効貯水量:6400万m3 湛水面積:256.7ha 流域:397.56km(桧枝岐堰堤以遠・舟岐堰堤以遠を含まず) |
<大桃ダム> さて,その上流,旧大桃構想に対応する案の検討である。 取り合えず,大桃もその上流の鱒滝も人が住んでるので立ち退きが不要の此 処ら(EL730m)に 堤高80m程のダムを建設,取水位780m程度 で発電してみたい。嘗ての大桃案よりは多分上流になるな。。 利用水深:20mで概算 有効貯水量:V=1,270万m3となる。なかなか。舘岩川合流点直上のV= 1380万m3の 案に匹敵するでは無いか♪100万m3程足りないが,伊南川発電所の60m3/s化,只見ダム(V=200万m3)への導水等を組み合わせて伊北 での通過水量を下げる事が出来るであろう。 流域面積も狭くなろうが,上流の檜枝岐堰堤で16m3/s程取水されて流域面積が小さくなってる分,東隣の西根川や湯ノ岐川(更に東には鱒沢川・舘岩川が ある)から導水すれば良い。(小)内川ダムとどっちが良いかの判断は保留するがこちらの方が立ち退きは少なくて済みそう。小豆温泉の一寸した嵩上げぐらい で行けるであろう。こちらは黒谷方面の発電と絡められる。 大桃ダム諸元 堤体:此 処(EL730m) 満水位:780m 有効貯水量:1,270万m3 流域: 直接:88.2km2(桧枝岐堰堤以遠・舟岐堰堤以遠を含まず)・間接:以下の表の間接累積面積に从(したが)う。
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水源 |
~内川ダム案~ |
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~大桃ダム案~ |
伊南川上流 + 黒谷発電所 |
[増強私案]東北電力
(株) 伊南川発電所 認可最大出力:61,700kW[+41.3MW] 最大使用水量:65m3/s(流域面積826.7km2なんでこれくらいは行ける) 有効落差:109.32m 水車:出力25000kW×1台+ 導水路:総延長9671.9m 流域面積:826.7km2 取水:伊南川432.30m 放水:只見川314.00m [新設私案]伊南川第二 発電所 出力:10,000kW~16,600kW[+16.6MW] 水量:40m3/s~65m3/s 落差:30m 流域:新規取水流域:489.6km2 取水:白沢・黒谷(25m3/s)・塩ノ岐川・伊南川(40m3/s)466m 放水:伊南川432.3m |
[増強私案]東北電力(株) 伊南川発電所 認可最大出力:56,100kW[+36.7MW]←当初 概算の42.8から-6.1してる。。 最大使用水量:60m3/s 有効落差:109.32m 水車:出力25000kW×1台+ 導水路:総延長9671.9m 流域面積:826.7km2 取水:伊南川[伊南川第二発電所]432.30m 放水:只見川[本名ダム]314.00m [新設私案]伊南川第二 発電所 出力:10,000kW~15,000kW[+15MW] 水量:40m3/s~60m3/s 落差:30m 流域:新規取水流域:489.6km2 取水:白沢・黒谷(30m3/s)・塩ノ岐川・伊南川(30m3/s)466m 放水:伊南川[伊南川発電所]432.3m |
水源 |
~内川ダム案~ |
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~大桃ダム・黒川経由案~ |
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~大桃ダム・内川経由案~ |
伊南川 + 舘岩川 |
[私案]新辰巳山発電所 出力:50,000kW[+50MW] 水量:30m3/s 落差:195m 取水:伊南川[内川ダム]660m 放水:伊南川465m |
[私案]新辰巳山発電所=保留 出力:23,000kW[+23MW] 水量:20m3/s 落差:135m 流域:256km2※ 取水:伊 南川(浜野)・宮 沢入川・滝 倉沢川・久 川・滑 沢・富 沢・富 沢川600m 放水:伊南川(和泉田)465m |
[私案]新辰巳山発電所=保留 出力:46,000kW[+46MW] 水量:40m3/s 落差:135m 流域:256km2※ 取水:伊 南川(浜野)・宮 沢入川・滝 倉沢川・久 川・滑 沢・富 沢・富 沢川600m 放水:伊南川(和泉田)465m |
水源 |
~内川ダム案~ |
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~大桃ダム・黒川経由案~ |
~大桃ダム・黒川経由案~ | |
黒谷 |
[増強私案]電源開発(株) 黒谷発電所[水
力][DB] 水路式・流込式 認可最大出力:19,600kW→20,300kW[+0.7MW] 常時出力:1,500kW 最大使用水量:12.00m3/s→15.0m3/s 有効落差:194.30m 水車:立軸フランシス水車×2台 総出力40600kW←?! 導水路:総延長8162.4m 流域面積:83km2(既存)・倉谷・塩ノ岐引水21.3km2 取水:黒谷川[黒 谷ダム]、他2(多分,大 幽谷と小 幽谷)・増設:倉 谷川・塩 ノ岐川 678.00m 放水:黒谷川465.50m |
[増強私案]電源開発(株) 黒谷発電所[水
力][DB] 水路式・流込式 認可最大出力:40,500kW[+21.1MW] 最大使用水量:25m3/s(+13m3/s) 有効落差:194.30m 水車:立軸フランシス水車×2台 総出力40600kW←?! 導水路:総延長8162.4m 流域面積:83km2(既存)・倉谷・塩ノ岐引水21.3km2・伊南川第三放水:204km2 取水:黒谷川[黒 谷ダム]、他2(多分,大 幽谷と小 幽谷)・増設:倉 谷川・塩 ノ岐川・伊南川第三 678.00m 放水:黒谷川465.50m |
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[増強私案]電源開発(株) 黒谷発電所 水路式・流込式 認可最大出力:19,600kW 常時出力:1,500kW 最大使用水量:12.00m3/s 有効落差:194.30m 水車:立軸フランシス水車×2台→1台(どっかに転用出来そう・200m/12m3/sの発電所新設) 導水路:総延長8162.4m 流域面積:83km2(既存)・倉谷・塩ノ岐引水21.3km2 取水:黒谷川[黒 谷ダム]、他2(多分,大 幽谷と小 幽谷)678.00m 放水:黒谷川465.50m |
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黒谷ダム 電源開発(株) 取水堰 取水:黒谷川・倉谷塩ノ岐引水[倉 谷川・塩 ノ岐川]678.00m |
黒谷ダム 電源開発(株) 取水堰 取水:黒谷川・倉谷塩ノ岐引水[倉 谷川・塩 ノ岐川]・伊南川第三発電所 678.00m |
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伊南川・ 舘岩川 |
[新設私案]伊南川第三発電所 出力:9,000kW[+90.0MW]程度 水量:10m3/s程度 落差:80m 流域: 取水:伊南川・安越又川・山毛欅沢(16.5km2)740m 放水:伊南川[内川ダム]660m |
[新設私案]伊南川第三発電所 出力:13,700kW[+13.7MW] 水量:16.5m3/s(=15m3/s +1.5m3/s) 落差:100m 取水:伊南川[伊南川ダム]・安越又川・山毛欅沢(16.5km2)780m 放水:黒谷川[黒谷ダム]676m [新設私案]伊南川ダム(大桃ダム) 有効貯水量: 流域:188.0km2[直接:88.2km2(伊南川・桧枝岐堰堤・舟岐堰堤手前迄)・間接79.8km2(赤沢・西根川・湯ノ岐川・渡沢)] |
[新設私案]伊南川第三発電所 出力:23,200kW[+23.2MW] 水量:20m3/s 落差:170m 取水:伊南川[伊南川ダム]・安越又川・山毛欅沢(16.5km2)780m 放水:伊南川[浜野堰堤黒谷ダム]600m [新設私案]伊南川ダム(大桃ダム) 有効貯水量: 流域:188.0km2[直接:88.2km2(伊南川・桧枝岐堰堤・舟岐堰堤手前迄)・間接79.8km2(赤沢・西根川・湯ノ岐川・渡沢)] |
番外・【舘岩川ダム】 ▲ 伊南川の最大の支流は舘岩川である。伊南川(桧枝岐川)方面に大桃ダムを建設するとして,内川ダムが範囲に入れていた舘岩川がカバーできてない。なんとか 鱒沢川まで導水路を伸ばしてみたが。 さて舘岩川側にもダムの適地が無いか調べて見たら舘岩川と鱒沢川の出合直上に適地を発見。 満水位700m・堤頂180m・湛水面積1.31km2(131ha)で行けそう。 さて,貯留量を調べる前に立ち退き人数を調べて見る。。 残念ながら立ち退き無しとは行かず,伊与戸・熨斗戸・森戸・八総などが水没してしまう。 森戸…37世帯102人 ○ 八総…26世帯70人 ○ 熨斗戸…30世帯63人 ○ 広そう 伊予戸…21世帯64人 ○ 井桁…42世帯111人 ○ 一部 何か人口多いんですけど。。 この辺は川の上流というイメージに反して,実は街に果てしなく遠い内川なんかよりも寧ろ会津田島に近くて沢山人が住んでる!? |
番外篇2・【混合揚水発電所計画】
▲ 折角なら内川と大桃の両方造って使ってやろうという欲張りぷらん♪ 今,混合揚水式の諸元を並べて見た:
何を狙うのかにも拠るけど,有効落差100~130mもあり得るということで内川ダム(HWL=655m)と大桃ダム(取水は小白沢迄か。HWL= 780m)の130mでいけるのではないか。 高根第一的な規模感となる♪ 建設が1960~70年代に偏ってるけど,運用が難しくて既に時代遅れなのかね?時代が下る程規模がデカくなってく傾向はあって,現代の様な純揚水の時代 になっているのかも。 [番外篇私案]大桃ダム 満水位:780m 有効貯水量:1,270万m3 流域:88.2km2(桧枝岐堰堤以遠・舟岐堰堤以遠を含まず) [番外篇私案]新内川発電所 混合揚水式 出力:409,000kW[+409.0MW] 水量:400m3/s 落差:120m 上部貯水池:大桃ダム780m 下部貯水池:内川ダム655m 最大連続発電時間:9h48m [廃止]内川発電所 出力:0.0kW[▲0.53MW] [番外篇私案]内川ダム 堤体:こ こ(EL.596m) 満水位:655m 有効貯水量:6400万m3 湛水面積:256.7ha 流域:397.56km(桧枝岐堰堤以遠・舟岐堰堤以遠を含まず) [番外篇私案]辰巳山発電所 出力:69,000kW[+69.0MW] 水量:45m3/s 落差:180m 導水: 取水:伊南川[内川ダム]655m 放水:伊南川[伊南川第二発電所]466m [新設私案]伊南川第二 発電所 出力:15,000kW[+15MW] 水量:60m3/s 落差:30m 流域:新規取水流域:489.6km2 取水:白沢・黒谷(30m3/s)・塩ノ岐川・伊南川(30m3/s)466m 放水:伊南川[伊南川発電所]432.3m [増強私案]東北電力(株) 伊南川発電所 認可最大出力:56,100kW[+36.7MW] 最大使用水量:60m3/s 有効落差:109.32m 水車:出力25000kW×1台+ 導水路:総延長9671.9m 流域面積:826.7km2 取水:伊南川[伊南川第二発電所]432.30m 放水:只見川[本名ダム]314.00m |