電力総研 水力あれこれ(四国) 四国 水力
剣山吉野川開発篇下流部開発篇
祖谷川名頃
貞光川穴吹川 松尾川松一・松二
潅漑用水
とはずがたりな掲示板(利 水スレ電 力スレ)



松尾川の水力開発②[名頃発電所・名頃ダム・祖谷川取水ダム他](→
松尾川篇松一・松二篇祖谷篇)(22.4訪問)

松尾川ダム・松尾川第一・第二発電所(→①で扱う)は設立間もない四電が初めて手が けた大規模開発事 業。四電の気合いを示すように物凄い量の取水支線を張り巡らせている!
これに気付いた水力発電趣味を始めたばかりの私は度肝を抜かれたものである。本項では最奥部の名頃から始めて導水路の祖谷川側を辿り,松尾川ダムの最奥部 に至る辺りをレポする。

まずは現状から。(こちらも参照)
出典:四 国電力
ダム名・取水川名
ダム名・取水川名
貯水量 有 効貯水量 流 域面積
その他・備考(ダム)
事業者:発電所名
最大出力
常時出力
形式
有効落差 使用水量 その他・備考(発電所)
名頃ダ ム
四 ツ小屋谷川
祖谷川 136.7万m3 115.0万m3 28.0km2 1961年竣工 水量比28.85 ‰以下
名頃 1.3MW 0MW ダム水路式・調整池式 47.0m 3.50m3/s [水 力]1961年運開
支水路[小 島谷(第 二小島谷川)(900.1)・与 市谷小 白谷(第二坂瀬川)コ タバ谷赤 枝谷(第一坂瀬川)ウ ツロ谷・[宮 谷]・長 チャレ谷釜 土谷白 井谷]・支水路[セ ト内(瀬戸内)(924.8)・長 谷
祖 谷川(名頃)(903.6)
赤 滝川(899.8)・同 支流(903.3)
霧 谷川(897.3)
落 合谷川(901.8)
九 十九谷(895.9)
鎖 谷川(901.7)・同 支流(911.4)
松尾川ダム 1430万m3 1260万m3 103.0km2 水量比:5.00 ‰
松 尾川第一 20.8MW 11.9MW ダム水路式・貯水池式 382.40m 6.30m3/s [水 力] 1953年運開,
井内谷川支流, 松 尾川第一放流水
松尾川第二 21.4MW 13.0MW 水路式・貯水池式 392.77m 6.30m3/s [水 力]1953年運開,


43.5MW 24.9MW




放水効率…松尾第一・第二6.79MW/(m3/s)+名頃0.37=7.16MW/(m3/s)

今,名頃ダム直下にある水を考える。冒頭の地図にもある様に二通りの経路がありうる。
この水1m3/sが祖谷川を下ると祖谷6.3/3.7MW・高野5.2/8.8MW・一宇8.7/9.46MW・出合9.3/9.461MW・三縄 7.0/14.6MW・更に池田5.0/62MW,合計して4.76MWを発電することが出来る。
一方松尾川ダムへの導水路を下ると松尾川第一20.8/6.3MWと松尾川第二21.4/6.3MW,合計して6.70MWを発電することが出来る。
詰まり,水は松尾川側に 流した方が効率的である。

この辺から,1961年運開の名頃ダムは,松尾川 ダムの取水口が名頃ダムの逆調整池になってる様であり,1953年運開の松尾川第一・第二発電所の補助システムを構成(名頃発電所で発電した水は松 尾川の方へ引っ張ってく凄いネットワークの起点になっている)って感じである。名頃ダムの増強は基本的に松尾川方面への増強に直結すると考 えて良かろう。松尾システムへの補給がメインの任務の名頃ダムと解釈して間違いはなさそうで有る。祖谷川の源流は多雨地帯の剣山であり,その辺は松尾川に誘導されてゐると云う訳である。

更に松尾川第一に直結する松尾川ダムへの導水路は徹底的網羅的でこれ以上の余地 はなさそう。
とはいえ名頃ダムの有効貯水量は115万m3と割と小さめなので最大限活用していかないと行けない。
また地形図の標高や放水口の標高を有効落差(47m)と見比べてみると発電所は地下にあってダム標高と放水口標高の差を有効落差として結構フルに活用して いるようである。
水 色線の様に平 尾谷の辺の砂防ダムから発電所へ取水したら良いかも。まあ平尾谷は松一・松二用の水量としては利用できてるけど。

今は松尾川ダムへ直送している赤 滝川笹 平谷川から一旦,名頃ダム湖へ送水し て発電してから松尾川へ送っても良いかもとは思う。両者が合流する辺りでも良いが一寸高さが足りぬ。砂防ダム建設して土砂貯めつつ標高上げても良いかも知 れないけど。問 題は一回名頃ダムに貯めて好きな時に使える様にするメリットと一回名頃発電所で発電できると云うメリットの和を水路建設工事と保守作業のコストが上回れる か否かで ある。(両沢への建設時期が名頃建設より後か先かは不明であるが,設計思想としては松尾川ダムに送水するのを優先していると云えよう。)
名頃(なごろ)ダム[水力][便覧]
河川     吉野川水系祖谷川
目的/型式     P/重力式コンクリート
堤高/堤頂長/堤体積     37m/119.4m/45千m3
流域面積/湛水面積     21.2km2 ( 全て直接流域 ) /9ha
総貯水容量/有効貯水容量     136.7万m3/121.3万m3[便覧]・15万m3[利水標]
取水量:3.5m3/s
ダム事業者     四国電力(株)
着手/竣工     1960/1961
満水位標高:950.00m

利水標


建屋・正面 国道の直ぐ真正面にあった。数年前に通りかがった時は全く興味がなくスルーしていた。



堰堤

湖面。正面の谷は唐谷川。
上の写真の堤体見てもそれ程渇水な感じはしないのにダム湖はなんか土砂が見えててあんま水が貯まって無い感じ。土砂で埋まってる??
確かに便覧の表記と比較して利水標の貯留量は減少している。。


~四ツ小屋川~

四国電力株式会社 名頃発電所[水力]
運開:1961.3
ダム水路式・調整池式
認可最大出力:1,300kW     常時出力:0kW
最大使用水量:3.50m3/s
有効落差:47.00m
水車:出力1360kW×1台
導水路:総延長1000.2m    放水路:延長247.745m
流域面積:28.0km2[名頃ダム21.2km2・四つ子屋谷6.8km2]
取水:祖谷川[名頃ダム]+四ツ小屋谷川(950.0m)
放水:祖谷川(901.36))
備考:世界で最初に立軸デリア(可変翼斜流)水車が設置された水力発電所[wiki]・ 地下19m,直径6mの円筒形地下室に設置[[水力]

一寸判りにくい場所にあった。変な公園みたいな脇の未舗装道路を大丈夫かといぶかしみながら上がっていくと発電所に辿り着く。

建屋…四ツ小屋谷川脇にある地下式発電所である。規模は天と地程違うが下 小鳥発電所が下小鳥川ではなく稲越川端の地下にあるのと一寸似ている。また立軸デリア(可変翼斜流)水車と云えば馬瀬川第一発電所であろう。あっちは混合揚水発電所だから単なる水車では無く喞筒(ポムプ)水車 である。
そして地下19mで発電した水は一寸離れた祖谷川に放流されるという構造である。1961年とこのくらいになると発電所の配置も地形の制約をはなれ自由になってきてるイメージがある。山の中を水路でうろうろする1960年運開の太田口がちと古すぎる感じはある。

四ツ小屋谷川…上流に名頃発電所の取水施設がある筈。なかなかの水量。降雨後なので取水は停止していたのかも知れない。矢張りダムに送水した方が良さそ う。


放水口…放水口は四ツ小屋川を潜って祖谷川本流にある。

地図からこんな感じ。 2,500mm~3,000mm程の降水量の様で ある。

今,降水量は2,750mm(=2.75m)程となる。と云う事で名頃ダムの集水域28.0km2=28*1000*1000=28,000,000m3 (=2.8億m3)の年間の平均降水量は凡そ(28万*2.75=)7,700万m3である(計算合ってる?)。となると有効貯水量121.3万m3は 63.4回満水になる?天竜川の項で推定したように1km2あたり300万 m3/年で考えたのを援用すると8.400万m3ぐらい。まあ8,000万m3内外ってとこか。そんなことはないだろうけど正確に年間平均して雨が降ると すると6日に一遍満水に?こりゃ雨の降る夏場は結構忙しそうである(余裕が無いと云える)。一方で流域面積の狭さに渇水のリスクも拭えないであろう。

121.3万m3を3.5m3/sで使い切るには96時間(4日)掛かるので夏場などは毎日の様に満水になる場合は取り溢しもありそうである。その場合は 頼りないけど祖谷川下流の発電所群に頑張って貰うことになろう。常時尖頭出力がどの程度か気になる所である。
また渇水時は四国の電力調整力そのものが低下する事になる。

もう一寸増強したい感じはある。

松一祖谷川取水ダム
取水量:??→この日は割りと利水標識見付けられたのだが残念ながら此処にはなかった。松尾川ダム本体への突が必要か!?(→本体に設置の利水標に細かい 表記はないようだった。。[G すとびゅう])
貯留量:0?→少量なら貯められそうな感じではあった。
流域面積:31.6km2程度[名頃発電所28km2・その下流域:3.63km2程度]

ハイダムでは無いが割りと広い。

見づらくて恐縮だが「四国電力(株)松一発電所祖谷川取水ダム」とある。

ダムを下流の橋の上から望む

ダム下流の端から祖谷川下流を望む。雨上がりで結構流れがある。この日の松尾川ダムは未だ余裕がありそうで,もう一寸取水量増やせそうである。残念ながら (この日は割りと収穫あったのに此処での)現行の取水量が解らなかったが。。


名頃はかかしがいっぱい置かれていてひとけの無さと相俟って不気味であったが,完全に無住化したらこの辺(El.810m)に堤頂長190m・満水位900m程度のダムを造って松尾川の発電能力を増強出来そう。

~田之内谷川~
地 図より取水堰ありそう(こ の辺?)。破線の山道はあるようだが車道は無し。入り口はこんな感じ(ストビュウ)
田之内谷川が祖谷川に合流する菅生(すげおい)には切谷と並んで祖谷発電所の起点となる堰堤がある。


~切谷川~[→祖谷PS関連はこちら

祖谷川筋から小島峠を経て貞光川筋 へ出るのがr261菅生伊良原線である。峠付近は県道指定がなされていない勝浦川から那賀川へ 抜けた時もそんな感じの区間があった。
峠付近は林道白井線というらしい。
出典:とくしま林道ナビ
水力発電に興味を持つ前の数年前に通りがかって 水管に気付いたけど無論写真を撮る訳もなく21.2 に再訪を試みるも立ち往生した因縁の…もとい思い出深い峠である。

祖谷発電所集水堰(→ 祖谷発電所関連はこちら)
22.4

松一発電所 切谷サイフォン[場 所


霧谷岐れ。
この先迄県道指定されているようだが霧谷林道との分岐手前の赤滝川を渡る橋の手前(祖谷谷寄り)にr261のヘキサがあってこれが最後のヘキサのようだっ た。



(~霧谷~)
林道名は霧谷林道であった。切谷が此処から霧谷と赤滝谷に分かれるのかも知れない。


松一発電所取水堰=未踏

~ 赤滝谷川~

霧谷を岐けると赤滝谷となる。谷のどん詰まりの向こう側は貞光川であ る。

ゴウロ谷からのサイフォン[場 所
切谷のサイフォンが本線筋なのに対して支線筋なので細い!
22.4 






~五郎谷~
水発的(河川行政的にも)には ゴウロ谷というが林業的には五郎谷と云うらしい。

林道分岐[場 所


林道の起点標


~第一ゴウロ谷~

松一発電所取水堰=未踏




松一発電所赤滝谷取水設備[場 所

堰堤
22.4

堰堤の右側にある取水路。水が勢いよく流れていた。


取水設備


堰堤裏側


ダム湖









~落合川~

落合聚落から松尾川の最奥部経由で三加茂に抜ける県道はr44三加茂東祖谷山線で 結んでいる…筈なのであるが,実際に落合側のr44は途中で行き止まりに なっている。
時間があればこのへろへろの現県道の末端迄辿ってみたい所である。更にその先には松尾川の取水堰(なべら谷と丸見谷)が潜んでいる様だし。
また道は今ではヨリマシだと思われる(二本線で引かれた)林道深渕落合線が結んでいる。

上図(A)地点のR438と林道深渕落合線の分岐交叉点にある看板。
22.5

~丸見谷川~



~なべら谷川~

松一発電所取水堰=未踏[場 所



松一発電所取水堰=未踏[場 所][G: これ?



~九十九谷~
松一発電所取水堰(=未踏)がある。なべら谷や丸美谷よりは敷居が低い。

(A)に階段あり[場 所][す とびゅう

熊鈴を鳴らしながら降りて行く。

だいぶ降りる。

と,何か小さな人工物っぽいものが現れた!

!?

ダムゲートが板きれ一枚w

   / ̄ ̄\
 /   _ノ  \
 |    ( ●)(●)
. |     (__人__)  流石にちいさすぎんだろ
  |     ` ⌒´ノ   常識的に考えて…
.  |         }
.  ヽ        }
   ヽ     ノ        \
   /    く  \        \
   |     \   \         \
    |    |ヽ、二⌒)、          \

萎えて(薄暮に不安にもなって)戻ってきたが,もう一寸上流側に堰が二つあったらしい。
常識的なちゃんとした堰がG 空撮から判明する・・。まあ将来の課題かな~。。

この先は松尾川の源流部へと入って行く。こちらでレポ

~鎖谷川~

松一鎖谷取水設備[場 所

おそごえ谷川
松一おそごえ谷取水設備[場 所

奥ノ井谷川
鎖谷川の支流である。奥ノ井は聚落名のようである。

松一奥ノ井谷取水設備[場 所G空撮

このアクセス道路,最後こんな感じ。[場 所G 空撮
気になる。こんなとこにカネ使って道作ってんの誰やねん。