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2020.11.24独立
2020.8.24作成

水窪川水系低稼働率対策②西渡発電所(22.8通過)(23.4通 過)

目次:水窪川概念図 [私案]戸中 川発電所 水窪発電所 水窪ダム  西渡発電所 1.諸元 2.問題(2-1.流域問題 2-2.低稼働率問題 2-3.降水量) 3.沿革・歴史 4.各種開発私案後の流域 

1.諸元

西渡発電所
参考文献:[④水 力.com][② 静岡県][ひ ろし
事業者:中部電力
運開:1927年
水路式・流込式
認可出力 最大:2,300kW 常時:150kW [6.5%]←ちいせえ。。
最大使用水量:3.26m3/s (常時水量:0.21m3/sか?)
有効落差:89.93m
水車:1台 (嘗ては2台体制で1台撤去??)→昔は4.6MWと云う話しは出てこない。。長良川が3台体 制で1台予備で運用してたけど串原に使い回したとかはあったけど予備?
設備稼働率:28.4%(2015 年実績)
流域面積:192.1km2(水窪P/Sと重複)→下で示す(地図)が西渡が 独占して取水出来る流域は29.2+17.3+9.1=55.6km2となる。
取水:西渡堰堤[レポ:手当次第]205.26m
放水:天竜川[秋葉ダム]106.43m

【流域問題】
さて,今192.1km2とされている流域は明らかに水窪発電所に浸蝕されている。今完全に西渡の専任担当流域となっているのは下図赤範囲の 29.2km2に加えて翁川以遠の9.1km2・翁川(水窪川)以遠の17.3km2を加えた55.6km2である。
また水窪蓋渠23.4km2も有本堰堤45.9km2もあんま真面目に取水してる感じはないのでこれも流域に加えると101.5km2となる。

水窪ダムと水窪発電所の有効活用や秋葉ダムの救済に少なくともこれらの翁川以遠の9.1km2・翁川(水窪川)以遠の17.3km2・水窪蓋渠流域 23.4km2・有本堰堤流域45.9km2からはしっかり取水したいと思って居るので西渡の担当水域は激減予定である。
下で代替流域を検討する。

【低稼働率問題】
ここも豊岡発電所同様可成り稼働率が低い。。常時出力なんか最大出力の5%しかない。調整池もな い癖に尖頭タイプ(概ね0%)かよって数値である。

水窪発電所からの水は佐久間ダムへ行ってしまうので已む無しな所はある。翁川の水取りすぎるとこっちの稼働率が更にピンチになりそうだが。。下で見る様な 河内川・相月沢川・門谷川等からの集水がコストに見合えば積極的にやっても良い。



2017年のデータも更に酷く設備利用率は8%しかない。。

令 和3年(2021年)の資料では経年が載っていた。グラフだと近年どんどんやる気を無くしていてこんな感じである。

流石に廃止した方がマシかなぁ。。とはいえ2011・12・14年辺りはそこそこ発電している。20,148千kWhが稼働率100%の値なので2012 年は60%位出てるのである。
以下で見付けた資料の出所は2010年(平成22年)の西渡発電所での不祥 事であるが,不祥事が響いたにし てはタイミングが違うしな。。
水窪との水の取り合いの可能性を考えてみる。こんな感じ。2010年(H22)の使用水量が多分誤記で10倍されてる他,2015・17(H27・ H29)年の0は未報告という感じである。
これを見ると2012(H24)以降,水窪の稼働率も下がっており,全体的にこの付近が小雨化してたのかも知れない。これが今後の傾向として定着してしま うと厄介であるのかも。。


【降水量】
図が小さくて見難いけど上流付近は2400mm~。中流付近は2200~2400mm。下流や佐久間よりは2000~2200mmしかない様だ
出典:天竜川上流河川事務所

 


~沿川風景~      

天竜川の秋葉ダム湖畔・西渡(にしど)に発電所はある。峡谷の下に発電 所はある。聚落はかなり上だ。
22.8

国道427号脇にある入口。脇の設備はクレーンか?→[ひろし]に拠ると リフトらしい。

下の発電所迄続く階段。人間(作業員)はこれを歩くのか~。確かにリフトの軌道っぽいのが横に併走している。

上の方に延びる水圧鉄管

以下で見る様に2号機が設置されて気配があるのだが水圧鉄管の用地的には2条だった事は無さそうである。最 大使用水量:3.26m3/sにしてはちょい太目?


地 図で確認出来る水路。恐らく余水吐。実際は吊り橋より上流のこ の辺にあった。
24.4
それなりに新しい様に見える。ダムのリプレースと共に余水吐も新調したのかも知れない。この辺はEL138m付近。まさかの西渡ダム(佐久間第二ダム)への導水構想(妄想)と位置が整合的である(笑)



西渡堰堤
西渡発電所への取水堰
水窪川

昔はこんな感じの無骨な の[damnet]がいぶし銀の存在感で山峡に佇んでたけど,工 事を経て今はこんな感じの護謨袋 の起伏で鉄板を上げ下げするSR合成起伏堰[手 当次第]というものらしい。これはもう最小限しか取水しない気満々ですな。。
R152をぐいぐい走って行くとバイパス部分からちらっと取水施設が見えた。ダムは見えなかったけど先を急いでいたので旧道に回り込むのは省略した。
取水しない気満々とは書いたけどコンクリートもなんだか真新しく投資をして行くという姿勢は確乎たるものがあるとも云えるのか。。
22.8
22.8はちゃんと見ずにBPを快走してしまったので24.4は旧道を辿ってみた。
24.4

利水標


取水(発電)はしてなかった?大した出力では無く堰堤に貯留量も無く(推定),ゲートもなんだか略式なのものに変更されてしまった西渡発電所とはいえ,水 は貯まっており低稼働率なのは良くある様にピーク電源として利用されているからなのかも。


堰堤とバイパス


3.歴史
今では稼働率も低いし地味で水窪PSや佐久間Dと干渉する邪魔な発電所の印象すらある西渡PSだけど戦前に於いては静岡県の奥地電源開発の最前線であっ た。
wikiに 拠ると岡崎を発祥として地盤とする岡崎電灯が成長して三河地区の電力を統合した中部電力(株)という会社があり,戦後の中電と区別して中部電力(岡崎)と 書かれることもあるこの会社は電力供給能力の向上に努め,
>中部電力は建設中の段階で同社(第二富士電力)と電力受給契 約を締結し、 出力全部を受電するとともに自社で発電所から自社変電所まで送電線を建設することとなった[46]。1935年3月に湯山発電所は出力2万4000キロ ワットで竣工し、同時に中部電力への供給が開始された。湯山発電所か らは、西渡発電所に 至る約43キロメートルの間に77キロボルト送電線が架設され、既存送電線によってさらに豊橋市郊外の玉川変電所へ送電された。上記のように増強された電 源に対して、電力の供給先としては、1934年時点では日本レイヨン岡崎工場(現・ユニチカ岡崎事業所)、日清レイヨン岡崎工場(後の日清紡績美合工 場)、内外綿安城工場などと契約していた。
とのこと。wikiに 拠るとそもそも富士電力は今でもある富士紡(しらんなあ。。)の系列会社だったそうな。
それにしてもこんな所に西渡発電所が出てきて寸又峡の奥地と繋がってたとは!電発の遙か前から佐久間辺りはもっと東と直結してた様だ。
また岡多線の北岡崎に専用線のあったユニチカ,名鉄本線美合に専用線のあった日清紡など迄出てくる始末♪因みに中部電力は名古屋をその地盤の一つとする五 大電力の一つ東邦電力と関係が深く,後に東邦電力に吸収合併されることとなる。名古屋のガス会社は今でも東邦ガスであるが,電力会社は東邦電力ではなく中 部電力として戦後発足している。

堰堤のお手軽感に加えて 嘗ては2台有った発電ユニットも 一台に縮小されてる様子である。これはwiki で東邦電力時代は2,400kWという記述も見かけて小さめの発電ユニット1200kW*2を後に大きめ 2300kW*1にしたのかもしれない。ただ上で見た様に水圧鉄管が二条あった形跡は無い。建屋部分で分岐させてた?そういう目で見るとちょい太目に見えなくもない
また水窪発電所が無ければ192km2もあるので規模を二倍にしても十分引き合う量の水を取れたであろう。将来の5MW級に増強されるのを見越しての先行 投資として二号機の設置スペースが確保されてたのかも。
出典:中部電力

この中電謹製の概要のファイル名がnisiwatariと なってるけど地名はに しどみたいだがどっちが正しいんだ?水力 さんはnishido派の様にお見受けする。地名も「にしど」でありこの辺には笹間渡 (大井川)と云い北又渡(遠山川)と云い「ど」が付く地名が多い。渡河地点共通 の地名なのかな・・


4.各種開発私案実行後の残集水流域
冒頭でも見たが現在,西渡発電所の一次(専取)流域は29.2km2(赤い部分)+17.3km2(翁川下流)+ 9.1km2(翁川上流)=55.6km2ある。ここか ら3.26m3/s取るも低稼働率という構図である。
独占流域に対してそれ程取水量が小さい訳でもないのに低稼働率というのは残った場所はそれ程山深い場所でもなく降雨量も少ないということであろうか?二次 流域(一次的には水窪発電所や水窪ダムが取水していく流域)も広くあるにはあるが発電に適した流れの水は水窪がガメてしまっているのであろう。

さて,今,翁川上流からは 水窪ダムに,翁川下流からは佐久間ダムにそれぞれ導水貯水して利 水すると良さそうである。
水窪ダムには比較的余裕がある様子と云う事で水窪(戸中)門桁では徹底的に集水してみた(最近一寸日和り気味だけど)。更に佐久間にも徹底的に送水してみた。結 果残っ た水源がこれである。
1次水源(西渡発電所でのみ使用する流域)が29.2km2で二次水源(一回だけ佐久間ダムor水窪発電所に取水される流域)が45.5km2(翁川下 流・水窪川・水窪河内川)ある。
現行でも水量の足りない西 渡PSであるが,現行より純減なのは翁川上流(9.1km2)と下流(17.3km2)の26.4km2である。翁川の減少分+アルファを出来れば増やし たくはある。
とはいえ,現行での29.2+17.3+9.1の流域面積で西渡の僅か3.26m3/sの水量でなんでそんな低稼働率になるのか解らない(勿論,水窪発電 所無しが前提のスペックではあろうけど)。冬期の静岡県は好天が続き雨も雪も殆どない。可成りの渇水で冬期は開店休業となるってことか。。確かに一月・二月の数字は酷い。。

まとめると,前提:水窪の増強の検討で水量が低下する
翁川導水:540万m3/年の水窪川水量取水
水窪川導水:6,440万m3/年の水窪川水量取水
合計:6,980万m3/年の水窪川の流量低下…①

考察結果 豪雨の後の本谷堰堤などはゲートを開放して発電してないように見えた。流込式は雨に弱くて(多分土砂混じりの水で発電すると勿論沈砂は通常する けど量的に間に合わず水車の命である羽根を傷つけたりするのかも)折角の書き入れ時に機能しない可能性がある。水を増やすなら発電使用などと云うスケベ根 性を出さずに直向きに水を集めるのに徹するべきなのかも知れない。有本堰堤がやる気無いように見えるのも大雨時のみ取水することで下流の西渡辺りに配慮し ているかも。
となると,白倉川でも洪水時に主に取水して水窪ダムに貯めるのが仕事だと割り切れば西渡の発電量低下はそれ程気にしなくても大丈夫なのかも。

と云う事で基本,水の確保は出来てるというスタンスであるが,とはいえ直接専任流域 29.2km2で3.26m3/sは微妙に惜しい(足りない)。
現実には今でも低稼働率に喘ぐ中, 更に水量を減らすので更に稼働率が低下するのは確実である。そんな苦境の西渡発電所のフォローが本項のアジェンダである。

【周辺流域増強図】
上流の水をだいぶ水窪・佐久間に取られてる様子の西渡である。下流域でこまめに取水したい。佐久間河内川・相月沢川・福沢川なんかからの導水の可能性があ る。
出典:電源開 発(株)



2号機が撤去された可能性があると云う事は途中の導水管にも余裕があるということで(多分水路をわざわ ざ狭くする工 事はしない。但し一台にして水車を大きくした可能性もあるけど。。),上の図に既に書き込んであるが,水窪発電所周りの増強で西渡堰堤の取水力が更に低下することを踏まえた救済措置として 西渡にこ まめに導水してみる。

相月川導水:
流域:8.3km2  導水距離:0.5km(水窪川渡河) 取水位:210m

水窪川を渡る必要はあるけど川の向こう直ぐに導水路が走っており導水距離は兎に角少なくて済む。

横吹・立原(たっぱら)
流域:合計1.55km2



【佐久間河内川導水】

佐久間河内川(河内という川が水窪にも佐久間にも長野との県境にもあってややこしく,また寸又の 所でも河内が付いた川がいっぱい出てきたが,此処らで河内(寸又界隈では「こうち」と呼んでいた)は沢の事らしい。あちこちにある「ひら」は平らな場所で は無く崖,「なぎ」は風が無い穏やかな凪ぎではなく崩れの事で今の日本語の感覚だと解らないけど生半可漢字を宛ててしまって語感が失われてしまった様だ。 こうちは河内を書くようにかわうちなんだろうけど谷や沢を川の内って呼ぶ感覚がいまいち解らん。)からの取水を検討。

西渡発電所へ送るか佐久間ダムへ送るかの選択。
佐久間ダムに送るより西渡PSに送る方がもう一寸標高が低くて良いので流域は広く取れる。けど流込式の西渡では貯留が出来ず秋葉ダムに直送せざる得ないの で貯留を考えると佐久間ダムへ送った方が良 いことはよい。
もし佐久間ダム導水をやるとすると西渡導水の残りは0.62km2。両立は不可。
面積としては狭小で,ここは西渡の流域確保が優先かな。。佐久間ダムへは取水口3箇所にするか堰堤の建設で一箇所に纏めるかの必要もあるし。 

佐久間河内川・西渡発電所導水:
流域:6.78km2  導水距離:2.4km 取水位:210m

6.78km2*400万m3/km2*(1/3~1/4)=904~678万m3/年

佐久間河内川・佐久間ダム導水:
流域:6.21km2  導水距離:1.76km 取水位:250m 2,400万m3 →佐久間ダム
佐久間ダムへ:
流域:6.21km2  導水距離:1.76km 取水位:250m
標高的に3箇所に分散して取る必要があって不効率ではある。。実際には満水位は260mなのでもっと上から取水した方が良いかも知れない。
出水時ではなく渇水時に水が欲しいのかも知れないけど此処は西渡ダム建設によって佐久間市街地 に流れ込む水を減らしたいってのもある。

流域はこんな感じ。計り直すと随分面積減った。。こ の支流域を諦めたせいか。

堰を造って取水し直せば6.2km2程になる。出来れば260m程度のサーチャージ満水位が欲しいので堤高35m程のハイダムとなる。




福沢川:

流域:7.6km2  導水距離:1.18km(水窪川渡河) 取水位:207m

7.58km2*400万m3/km2*(1/3~1.4)=1,010~758万m3/年


無名の沢(仙戸)・取 水点
流域:2.2km2


まとめ:

流域
導水距離
その他
摘要
相月沢川 8.3km2
0.5km
水窪川要渡河

横吹・立原
1.6km2
0.0km

二箇所
佐久間河内川
6.8km2
2.4km

△:ちと遠い
福沢川
7.6km2
1.2km
水窪川要渡河

仙戸
2.2km2
1.2km※

※福沢川迄
小計
26.5km2
5.3km



先程
>純減なのは翁川上流(9.1km2)と下流(17.3km2)の26.4km2である。翁川の減少分+アルファを出来れば増やしたくはある。
と提起し,佐久間河内川を含めなんとか減少分を補填は出来たが,但し翁川の下流部よりは相月沢川や福沢川の方が山の中で降水量は多そうな気はす る。

[増強構想=最大版]西渡発電所
出力:2,300kW
水量:3.26m3/s[0.57]
落差:89.93m
導水:主導水路:4,681.6m 新設水路:5,300m
流域:29.2+26.5=55.7km2(一次流域・水窪発電所や水窪ダム・佐久間ダムに引水される分を控除)
取水:西渡堰堤(水窪川)相月沢福沢川 他4 計7箇所
放水:天竜川(106.43m)

下流域は降水量も少ない。これ以上西渡の水量を減らすのはなかなか厳しいがカネを掛けるのももっと厳しい。