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東上田ダム(小坂ダム) 中呂発電所 東上田発電所
22.2.21大改造
21.6.11運開
佐見川の現況と電源開発計画史[23.2 訪問]
現況(発電所堰堤・開発) [飛騨川150万キロ構想: 1962年案(100万キロ構想) 1965年案(150万キロ 構想) ][1979年時点案:飛騨川筋電源一覧表][最終案【推定(+9.2MW)

飛弾川に流れ込む地味な支流,佐見川である。
開発史では無く開発計画史なのが味噌である。派手な計画もあったが何も実現しなかったのである。

現在は下流に小さな発電所(330kWしかない。。)があるのみ。(→諸元はこち ら)

23.2に訪問してきた。
佐見川の飛騨川からの分岐付近
23.2
一寸だけ上がった所にひっそりと崖にへばりつくような恰好で佐見川発電所は存った。

一寸,道(県道)から下った場所にある正面

看板と通路?水路?

諸元(スペック)はこんな感じ:

佐見川発電所[水力] [場 所]『飛騨川』
運開:1928(S3).12[濃飛電気・260kW]
認可最大出力:330kW  常時出力:83kW[25.2%]
最大使用水量:1.113m3/s (0.20%)
有効落差:38.41m
流域面積:56.7km2
取水:佐 見川271.20m
放水:佐 見川232.10m

一寸進むとすぐに堰が現れる。

堰と言っても滝みたいな感じで水を貯めておく機能は全くなさそうで嵩上げしたのか,土砂が貯まったのか,兎に角高低差を稼いだ後,水は斜面を下り降りてい た。

取水設備


佐見川発電所取水堰[場 所
取水位:EL.271.2m
取水量:1.113m3/s
流域面積:56.7km2

利水標識

上流方面の眺め。なんとなく草木発電所の取水堰に 似 てる気がしたのは,なんか道路から水面が近いという一点か。


さて増強を検討。
ほぼ飛騨川との合流点に近くで56.7km2の流域面積であるから佐見川全体でもまあ70km2は行かないのではないか。

しかもこの辺雨量が2000~2500mmしかない。取水は慎重 に,である。。取水係数は良くて0.75ってとこかな?

佐 見川(455m)に25.8km,2.0m3/s程の水源がある。現佐見川発電所に向けて放水しても使用水量が1.1m3/sしかないので結局増 強を強いられてしまう。
どこに放水しようかと探してうろうろしてたら大船渡ダム(EL.230m) にぶちあたった ♪220m取れる。

このEL455mから大船渡ダムに向けて放水してみる:

[私案]新佐見川発電所
出力:3,600kW[+3.6MW]
水量:2.0m3/s (75%)
落差:220m
集水域:25.8km2
導水路:8.5km
取水:佐 見川(455m)
放水:飛 騨(益田)川[大船渡ダム]()

ピーク時には下原80m3/s馬瀬第二113m3/sの計193m3/sが流れ込み大船渡P/S64m3/s新七宗95m3/sの計159m3/sへ給水し差し引き 34m3/sで貯まってくので3時間半弱で満杯になってしまう小容量の大 船渡ダ ムなので更に水を入れても意味有るのかは検討されねばならない。
3時間も馬瀬第二と 下原をフル稼働させる事のないように全国の調整力を整備していく必要がある感じか。

更に[私案]新佐見川に関しては出力をもうちょっと欲しい。。

[構想]佐見川第一発電所
出力:2,600kW[+2.6MW]
水量:1.7m3/s
落差:185m
集水域:21.6km2
導水路:9.7km
取水:佐見川(500m)→取水点上げた。
放水:佐 見川(310m)

[構想]佐見川第二発電所
出力:2,700kW[+2.37MW](佐 見川発電所0.33MWは廃止へ)
水量:4.4m3/s
落差:75m
集水域:55.9(=25.8+30.1)km2
導水路:3.7km
取水:佐 見川(310m)室 山谷
放水:益田川[大船渡ダム](230m)

これで合計5,300kW,佐見川 330kWを廃止すると都合[+4.97MW]で ある。勿論,投資するならもっと効率よさそうなところからでよいけど。。




さて,せこせこ計画してた所で,そう我が妄想度たっぷりの筈の計画がせこく見える展開が待っていたのである。

中部電力(株)謹製の『飛騨川』(1979年)という本にそれは登場した。

【飛騨川100万キロ構想】    
戦後,日本発送電から飛騨川の電源資産を継承した中部電力は,河川一貫開発の気運の中で,1962年"飛騨川100万キロ構想"をぶち上げる。(『飛騨川』は将にその100万キロ ワット達成を祝って発刊されたのである。)

その中で「高根・小原開発後の東上田・瀬戸第一両既設発電所の増強」の為に考えられたものだそうで,この流域の開発計画に2案が併記されていた。一つはそ の後,揚水発電が加味されて現在の馬瀬第一・第二・中呂発電所に連なる焼石発電所(128MW)・新七宗(48.5MW)構想。
そして第二案こそが佐見川を舞台とする新七宗発電所(240MW)構想なのである!第一案の新七宗発電所は実際に建設された現在の新七宗 と被る飛騨川に沿った既設の七宗と平行する発電所である一方,第二案の新七宗は佐見川のダムからの水で240MWを叩き出す大発電所を構想していたのであ る。此処では新七宗発電所では実現した新七宗と混同するので新佐見川発電所とでも呼称することにする。
おいおい。。

図を頼りにしてみると黒 川・白川ともにEL.440m程からの取水をして佐見川に建設のダムに導水,そこから新七宗PSが流れ込む名倉ダムEL.198.5.0m程にぶち込む感じで ある。
有効落差237m程として120m3/s程水は必要になる。流石に佐見川・白川・黒川だけでは集まらんやろ。。当時のピーク電源の考え方なのであ ろうか?
んなもん揚水やろとも思うのだが,lこの時点で焼石PS 128MWにも揚水の計画は含まれてない様で,从ってその平行検討案のこちらも必ずしも揚水という訳でもなさそう。

佐見川のダムも可成り広く取っているようには見える。→一寸興奮したが冷静に考えると馬瀬川第一・第二の代替案なんだから混合揚水と云う考えも出来るし, 寧ろ 240MWも混合揚水ならまあ普通である(馬瀬第一PSは288MW)。
また岩瀬ダムへ水を送る中呂を建設出来た馬瀬川ルートと違ってこちらはEL440mに益田川本流から水を送るのは無理そうである。(取水位が440mだと すると中呂から20kmの導 水となる。)
但しもう一寸満水位が低いと話は別。下で見る様な取水位380mのダムであると すると瀬戸ダム(満水位 EL.382.07m)から送水することが出来る。この場合,高低差から概算される最大使用水量は160m3/s程度となる。(288MWの馬瀬第一の使 用水量は335.0m3/s)

さて,この計画をぶち上げた後,馬瀬川の揚水発電なども浮上し計画は練り直されることになる。

【飛騨川150万キロ構想】       
3年後の1965年,再び中電は飛騨川筋開発を発表した。今回は"飛騨川150万キ ロ構想"と呼んでいたそうな。
佐見川の電源開発は白川等からの導水が消えて単独になったがそれでも150MW(15万キロワット)を誇り150万kW構想の一翼を担っていた。

飛騨川筋電源一覧表(『飛騨川』p502)
この表がいつの時点かよく解らんが昭和40年の計画の一覧表の様である。
関連する所を抜き出すと以下の如し。こちらも参照
発電所名
最大使用水量
有効落差
発電力
ダム高さ
有効容量
とは記入備考
新七宗
150.0m3/s
28.8m
36,800kW
既設大船渡ダム利用
新七宗として実現(最大使用水量95m3/s・有効落差24.57m・ 最大出力20,000kW)
新名倉
150.0m3/s
84.8m
108,500kW
23.5m
450,000m3
新上麻生として実現(最大使用水量62.50m3/s・有効落差 51.3m・ダムは既存名倉ダム[堤高13.5m・容量38.2万 m3] を利用)
佐見川
100.0m3/s
175.6m
150,000kW
98.0m
35,000,000m3
実現せず

新七宗も新名倉も規模を縮小して実現しているようなのに佐見川だけ実現しなかったのである。惜しい。
ここで,新七宗が既設大船渡ダムを利用となっているのにも拘わらず,新名倉が既設名 倉ダムを利用となっていない所に注目で ある。
大船渡ダムと違って名倉ダムを嵩上げするor直下にダムを新設する等の対応が考えられていたのでは無いか?(図的には後者)
それにしても3,500万m3を100m3/sで流すと97時間しか持たないけど,尖頭需要対策ではあるんだろうけど,下池が貧弱すぎるけど混合揚水にす る感じでもないのかねえ・・??
新名倉用のダムを佐見川 発電所の混合揚水の下池にしたり出来ると良い感じなのだけど。。


【最終案?】     
最新(1979)の?発電計画。
出 典:『飛騨川』
新七宗が佐見川ダム湖畔で発電している?!


その後の1979年(S54)の『飛騨川』執筆時点での計画と思われる計画に以下の様に載っている。
発電所名
最大使用水量
有効落差
発電力
とは記入備考
新七宗
(実現値)
95.0m3/s
(95.0m3/s)
25.4m
(24.57m)
19.7MW
(20.0MW)
1982.6運開
新上麻生
(実現値)
80.0m3/s
(80.00m3/s)
87.17m
(88.5m)
60.2MW
(61.4MW)
1987.6運開
小坂川
(実現値)
6.0m3/s
(6.0m3/s)
432.7m
(423.9m)
21.0MW
(21.3MW)
1983.11運開(こ ちら参照)
西村
18.0m3/s
79.5m
12.0MW

佐見川
9.5m3/s
194.7m
15.7MW
水車効率87%
小坂川迄は実際にそれも可成り近い値で実現している。西村ダムは清流馬瀬川に沮まれた形か?佐見川はダム建設が付随しておりやはり水没人家の多さが原因 か?
実際名倉ダムの常時満水位と思われる198.50~198.79mで放水するとすると有効落差194.7mとすると取水位は最高400m付近となる。ただ1965年計画の表の「ダムの高さ」ってのが堤高だとすると岩盤からの高さであっ て地上部の高さはもっと小 さくは成る。

いずれにせよ徳田の聚落は水没してしまうことになろう。
以下でみる様なこんな感じの長閑な閑散とした山村であった。


機能
名称
出力など
名称
出力など
上池
佐見川ダム
3,500万m3
岩 屋ダム
6,190万m3
(利水容量)
水量

100.0m3/s
[揚]180.0m3/s

335.00m3/s
混合揚水発電所
新佐見川発電所
[混合揚水ケース]
150.0MW
[揚]260.0MW
馬 瀬 川第一発電所
288.0MW 
下池
名 倉ダム
38.2万m3
馬 瀬川第二ダム
610.0万m3
水量

80m3/s
62.5m3/s

113.00m3/s
一般発電所
名 倉発電所
新麻生発電所
22.2MW

馬 瀬 川第二発電所
66.4MW

下池の名倉ダムは38.2万m3と少々小さい。下池が小さい混合揚水を提示してみるとこんな感じ。

繁藤堰堤(穴打川発電所) 19.3万m3(利 用水深 2.0m) 最大揚水量は13.1m3/s
木曽ダム(三尾発電所) 67万m3(利用水深 1.5m)  揚程水量13.9~28.3m3/s 揚程143~114m
表にしてみる。
河川
佐見川
穴打川
王滝川
機能
名称
出力など
名称
出力など 名称
出力など
上池
佐見川ダム
3,500万m3
穴打川ダム
4,330万m3
牧尾ダム
6,800万m3
水量

100.0m3/s
[揚]180.0m3/s

22.0m3/s
[揚]13.1m3/s


[揚]13.9~28.3m3/s
混合揚水発電所
(新)佐見川発電所
[混合揚水ケース]
150.0MW
[揚]260.0MW
穴打川発電所
12.5MW
[揚]
三尾発電所

[揚]
下池
名 倉ダム
38.2万m3
繁藤堰堤
19.3万m3
(利用水深2.0m)
木曽ダム
184.4万m3
[揚]67万m3
(利用水深1.5m)
水量

80m3/s
62.5m3/s

21.5m3/s

65.8m3/s
60m3/s
一般発電所
名 倉発電所
新麻生発電所
22.2MW

平山発電所
41.5MW
寝覚発電所
木曽発電所
35.0MW
116.0MW

繁藤よりは多いが木曽ダムよりは小さいレベルである。ふうむ。

このプランでの飛騨川(名倉ダ ム付近EL.200m)に 堤高100mのダム造っ て有効落差175mでぶちかますとしたら川の標高はだいたい280m弱ぐらいかな?こ の辺と見た!
EL.380mでダム湛水域を推計してみる(瀬戸ダムと同じ位の標高が示唆 的)。渡合・徳田・薄野・せせらぎの里辺り迄水没しそうである。何人ぐらい住んでいる のであろうか?
現実問題としてこのダム建設で地元にどの程度活性化をもたらすか,である。勿論,巨大電源施設が出来るのであるから先ずは建設で村は活性化するしその後は 継続的に中部電力やシーテック(中電工)のおじさん達が泊まりがけで仕事に来るだろうけどそれ以外にも新しいダム湖とこれまでもある清流を組み合わせる形 で下呂やら郡上やらと一緒に一緒に寄って貰える工夫が必要であろう。

堤頂長が長い。。こりゃロックフィルだな。。
さて佐見川ダムの推定流域面積    はこんな感じ。

ダム便覧風(w)に纏めるとこんな感じである♪

[未成(計画消滅)]佐見川ダム
目的/堤高/堤頂長 発電/ 87m/189.5m/190m程度[と推計]
流域面積/湛水面積     56.7km2 (直接のみ )[と推計] /146.3ha[と推計]
総貯水容量/有効貯水容量/満水位     ?m3/3,500.0万m3/380m
ダム事業者     中部電力(株)
着手/竣工    未着手/未完成

瀬戸発電所から送水時にロスをすることを考えると満水位を370m位とすればせせらぎの里辺りの水没は免れる 感じか。いずれにせよ徳田の聚落は水没を免れ ない気がするが,現地はこんな雰囲気
先ずは下流から上がってきて入口付近。

中心部?未だ結構人は住んでるんだなという感じはする。

とはいえ,歩いているご老人みたいな方も見かけず,ダム建設に関してお話しを伺う事は出来なかった。またこの上流に更に薄野という聚落があるがそっちまで は行かずに引き返してきた。
徳井辺りは20 世帯51人,薄 野辺りは17世帯52人の様だ。全部が水没する訳では無いから水没対象は100人以下ではある。まあこれを多いとみるか少ないとみるか。また実際 にどの程度の反対が起きるのか,地域振興と組み合わせられるのか,その辺が課題であろう。
ただ地域振興とは言っても殆ど振興には役立たず地元に一回限りのおカネを落とすだけのような施策は辞めねばならんだろう。

また100m3/sで3,500万トンってことは97.2hもつ事になる。渇水期の冬場は夕方ピーク時に2,3時間程100m3/sで放水してる岩屋というか馬瀬第 一っぽいが97時間持つって事は一ヶ月ぐらいは補給無しで持ちそう。
多少の降雨(というか降雪)もあるだろうけど秋の長雨で貯めても一冬持たすのは難しそうではある。。やはり白川からの導水なんかも期待したい所である。

とはいえ,150万ぶちあげの為の宛て馬っぽい感じがしなくもないのも事実である。そしてこの宛て馬に宛てられて以降白川の諸開発も消えてしまい,終ぞ今迄実現してないのも残念である。

白川が未開発で残り,佐見川が異様に小さい発電所がちょこんと残ってるのは,将来的には導管で大々的に佐見川へ流し込む開発の準備なんかと思わなくも無く もないかもしれないぐらいの淡い期待はしておきたいw
是非この計画とともに水源供給地として開発が進んで欲しい所である。加子母発電所③案[5,400kW 程]は併せて開発出来る。


徳田と佐見川取水堰の間の谷の様子。割と狭隘で堰堤建設は(・∀・)イイ!!感じ♪  
23.2

途中には中電の水位観測所もあった。


もう一寸狭いところを探してみるとこ こが天端標高383mで堤頂長184mと200m以内で行けそう。ダムは大部小ぶりになった。。


【最終案】
恐らく『飛騨川』発行の昭和50年代の最終案的なものによる使用水量・ 9.5m3/s,有効落差・ 194.7m,発電力・15.7MW(多分ダムは無し)辺りが穏当な案として再検討必要かも。
ダム新設の新名倉発電所が潰えた(代わりに既存名倉ダム共用の新上麻生発電所と して実現した)時点で,下池の機能不足は明らかであり,混合揚水は非現実的となった可能性もある。


[推定案]新佐見川発電所
出力:9,200kW[+9.2MW]
水量:6.0m3/s
落差:200m
導水:7.79km
流域:41.2km2(無渡谷除く)
取水:無 渡谷稲 田川佐 見川 410m
放水:飛騨川[名倉ダム]199m

他所から取ってくるかダムでもない限り41.2km2程度で使用水量9.5m3/sは無理やろ。。この辺が実際には現実的っぽい。