電力総研 水力あれこれ(四国) 四国 水力
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21.07.07運開
穴内(あなない)川[吉野川水系]・ 新改(国分)川[二級河川・高知県]の利水

早明浦ダムの下流で吉野川に流れ込むのが穴内川である。
徳島県へ流れて行く吉野川の上流域の高知県山岳部から高知県の平野部への導水をしての発電は鏡川へ 流れ込む天神発電所仁淀川へ流れ込む分水第一~第四発電所と此処の計3箇所もある。愛媛県も似た様に分 水が三箇所ほどある。香川も香川用水が命の水甕となっており,四国全県の水源となっている吉野川である。

さて現在一番上流にある発電施設の穴内川ダムの満水位は419mである。此処へ流し込む発電所 を検討する。
名 無し名 無し穴 内川EL599mから6.96km導水すると穴 打川ダム419mに至る。実際は395m位に放水出来そうだけど180mとしてみる。約10.5km2。1m3/s取れるとすると1,500kW 程度。一寸キツいな,,


650m取水にしてみる。下図の様になる。
穴内川水域以外からも取水して面積と水量を確保。11.0km2。小さいな。。マウスオーバーで山野目橋や樫谷にある沢の上流も取ると 追加で3.2km2で合計13.2km2。
多雨地帯に近年の資本財価格の低下を背景にした強気に2.0m3/s取れると仮定して3,900kWと惜しくも4.0MWならず。。穴内川水域外からの導 水をどう評価するかにも関わってきそうではある。

先ずは一寸異例な水の流れを見て行きたいと思う。

この穴内川には穴内川ダ ム穴内川発 電所が建設され ,更にその逆調整池の機能も果たすと思われる繁藤堰堤を下部調整池として混合揚水が行われている。この繁 藤,ダム便覧にも載っていない15m未満の非ハイダムで貯水量は34.8万m3しかない。何m3/sで揚水するか不明であるが,この35万m3を使い果た したら,(繁藤堰堤か らの水のみを使う平山発電所の流域面積が102.3km2で穴内川発電所の 52.7km2であるか らこの差の)49.6km2から流れ込む水を使って揚水か?
使用水量は22.0m3/s。8割の 17.6m3/s程度で揚水するとすると5時間半ぐらい揚水出来る感じ?また揚水時は平山の発電も完全に停まるのであ ろう。穴内川ダムの流域も57km2しかなく全てに小さめの混合揚水である。(規模が小さいのは四電ぽさはある。)

扨(さて),上でこんな小さい下部調整池でどないすんねんと疑問を呈していた私であるが,三尾発電所を調べている中で,詳細が判明!日立が出している『日立評 論』1964.11が揚水発電所特集で,穴内発電 所も載っていたのである。

>余剰電力時に繁藤調整池より穴内川貯水池に揚水運転する。また豊水期に繁藤調整池より穴内川貯水池に揚水して繁雌調整池のあふれを救済する。
のだそうな。豊水期に取水するのは実は三尾PSと 同じで昭和30年代の混合揚水は昨今の巨大純揚水とは設計思想が違っていて,小さめの下部調整池が溢れそうになった時に大きめの上部調整池に溜め込むと云 う運用をしていたらしい。(繁藤は堰堤そのものが小さいけど大きな木曽ダムを前にして放取水口と発電所をもっと地下深くに造るという発想は無かった?)ま た調べて行くと新豊根が佐久間ダムの溢れを毎夜救済してるっぽいが 佐久間ダ ムと新豊根も建設は古く規模は巨大だが設計思想は似ているのかも知れない。

穴内川ダム[便覧]『日立評論
河川     吉野川水系穴内川
目的/型式     P/中空重力式コンクリート
堤高/堤頂長/堤体積     66.6m/251.9m/219千m3
流域面積/湛水面積     52.7km2 ( 全て直接流域 ) /195ha
総貯水容量/有効貯水容量     4,626.0万m3/4,330.0万m3
ダム事業者     四国電力(株)
着手/竣工     1961/1963
満水位:418.0m / 利用水深:40m

四国電力(株) 穴内川発電所[水力] 『日 立評論
所在地:高知県香美市土佐山田町繁藤
運開:1964.7
ダム水路式・混合揚水式
認可最大出力:12,500kW   常時出力:1,400kW(計画時は1,600kWか?『日立』)
年間発電量:24,677MWh  (2,467.7万kWh)
最大使用水量:22.00m3/s
    有効落差:69.50m
    水車:立軸斜流ポンプ水車 最大出力13500kW×1台 (可動翼斜流ポンプ水車)
    導水路:圧力トンネル延長1178.3m
    流域面積:52.7km2
上部貯水池:穴内川[穴内川ダム]418.0m(満水位) 利用水深:40m
下部貯水池:穴内川[繁藤堰堤] 利用水深:2.0m (久寿軒谷川[田 村谷(tw)]→角茂谷川[田 村谷(tw)]→河の川→穴内川)344.5m

使用水量:発電最大22.0m3/s 発電常時4.35m3/s 揚水最大14.3m3/s
有効落差:発電最高69.5m 常時52.25m 最低29.0m 揚水最高75m 最低33.0m


久 寿軒谷川
くすのき[楠木??]と読むのか??

久寿軒谷川堰堤(仮称)
流域:15.8km2[推計]
取水位:349.4m[推定]


角 茂谷川
角茂谷は繁藤同様その名の国鉄(JRだけどw)の駅がある。此処が一番狭い。


河 ノ川
凄い名前だw
かわのかわと呼ぶのかな??
割と面積が広い感じ

河ノ川堰堤(仮称)
流域:17.2km2[推計]
取水位:346m[推定]





繁藤堰堤[88箇所]『日立評論
形式:重力型越流ダム 目的:P
取水位:346.4m
取水:穴内川[穴内川発電所]・導水[久 寿軒谷川→(角 茂谷川→)→(河 ノ川→)→繁藤堰堤]
送水:平山発電所・(旧平山発電所=こ れ?)
堤高:9.9m(88箇所) 11.7m(日立)  堤頂長:95.7m
総貯水容量:34.8万m3(88箇所=死水容量込みのもの?平山発電所のもの?) 有効貯水量:19.3万m3(日立・揚水用のものか?それとも平山発電所の容量込みか?) 利用水深2.0m(日立=穴内川PSのものか?三尾PSの木曽Dの利用水深も1.5mであった)
流域:102.3km2(直接:62.9km2 間接:39.4km2)

>地表のEL.352.650に対して, 水車中心はEL.338.900に設置された半地下式の発電所
>本揚水発電所の設計においては,上部穴内川貯水池の季節的調整 方法を電力系統経費が最小になるよう規則化し穴内川貯水池,繁藤調整池のあふれ,国分川の最大,最小流量制限などの条件を加味し,水力および火力余剰電力 の使用規則などをまとめて計数形電子計算機のプログラムを作成した。
>過去10年間の毎日の流量および将来の電力需要を想定したものをもとにし て,毎日を昼間,夜間,ピーク時の三つに分け,純発電,複合揚水(ダムあふれ救済,余剰電力時にのみ揚水する),日調整揚水(毎日夜間に揚水する)の三つ の場合について,運転のシュミレーション計算を行なった。

だそうな。繁藤堰堤溢れ救済とあるので,平山発電所を止めて揚水すると云うよりは平山発電所21.5m3/sで使い切れない程の流入量があり且つ穴内川ダ ムに余裕がある場合に平山PSで発電しつつ穴内川PSの発電を止めて揚水すると云う運用の様である。

>運転面より考えると,全変落差範囲を通じて,水中最大水量は一定であるこ とが好ましいので,有効落差69.5mより45mまでの水車最大水量は22.0m3/s一定とし,最低落差29.0mでも水車最大水量は17.0m3/s 流せるように選定されている。
>穴内川発電所のように発電に重点がおかれ,水系を経済的に運用するために 付随的にポンプ運転を行なう場合には,それぞれの揚程に対する揚水量を制限することにより,吸出高を浅くすることができる。経済計算結果に基づいて,吸出 高は-5mと,高落差カプラン水車,斜流水車と同じ程蔭に選定され,回転数ほ360rpl-1と水車専用機のものに近い値が採用されている。このためポン プ最大揚水量は13.1m3/sと水車最大流量の約半分に制限されている。

ともある。まあ繁藤堰堤の規模が極めて小さいので喞筒最大揚水量が小さくなるのは合理的なのであろう。

88箇所に拠ると
>四国に台風襲来の際には必ずといってよいほどニュースで雨量が報道される ここ繁藤地区。昔は『天坪(あまつぼ)』という地名であった。天から降ってくる雨が坪のように集まる場所・・・なんとも言いえて妙な地名である。
>それほどこのあたりの豪雨はすさまじく、堰堤脇を走る基幹国道32号線に も一定量以上の雨を観測すると自動的に通行止め表示が出る機械が設置されているほどである。
>また1972年の夏にはおりからの集中豪雨で繁藤駅に停車中の機関車が駅 舎ごと土石流に飲みこまれてしまい、多数の犠牲者を出した。世に言う「繁藤災害」であり、線路沿いに流れる穴内川の対岸まで流された機関車はいまだに掘り 出しが不可能である。
まあ集中豪雨時に道路が通行止めになるのは珍しくもなんともないが雨が多い地区であるのは確かであろう。
繁藤堰堤近傍には僅かながらも聚落があってダムで水没させるに忍びないとするなら河ノ川久寿軒谷辺りに洪水対策込みで発電用調整池設けて もええんちゃうか。多雨を有効活用出来る様に成るのはデカい♪

~新改川(国分川)~

四国電力(株) 平山発電所[水力
所在地:高知県香美市土佐山田町平山
運開:1963.4  運開(旧平山発電所):1909.2
    発電形式(落差を得る方法):ダム水路式)
    発電方式(水の利用方法):貯水池式
    認可最大出力:41,500kW     常時出力:6,100kW
    最大使用水量:21.50m3/s
    有効落差:230.40m
    水車:立軸フランシス水車 最大出力43200kW×1台
    導水路:総延長8197.2m
    流域面積:102.3km2
    取水:吉野川水系 穴内川[繁藤堰堤]346.5m
    放水:新改川(国分川)[新改発電所]108.0m


休場(やすば)ダム[便覧
河川     国分川水系国分川
目的/型式     P/重力式コンクリート
堤高/堤頂長/堤体積     18m/64.2m/5千m3
流域面積/湛水面積     110km2 (直接7.3km2 ・ 間接102.3km2 →便覧には全て直接流域となってるけど穴内川を図々しくも直接流域にカウントしてる様に見える) /9ha
総貯水容量/有効貯水容量     292千m3/254千m3
ダム事業者     四国電力(株)
着手/竣工     1961/1963

小さめのダムである。平山発電所からの放流水が殆どで国分川そのものの流量は殆ど期待出来ないと云っても良さそう。
今,平山発電所から21.5m3/s流れ込んで新開発電所で16.5m3/s使用するので差の5.0m3/sが流れ込む水量となる。14時間でいっぱいに なる計算となる。平山が頑張る尖頭需要発電のバッファー用としては十分な量という訳か。

四国電力(株) 新改発電所[水力
所在地:高知県香美市土佐山田町大法寺
運開:1963.4 (旧新改発電所:運開:1919[高知県]810kW・1.25m3/s・有効90.0m)
ダム水路式・貯水池式(水路式・流込式:旧新改発電所)
    認可最大出力:8,700kW      常時出力:1,200kW
    最大使用水量:16.50m3/s
    有効落差:69.20m
    水車:立軸フランシス水車(1号機)、横軸フランシス水車(2号機) 総出力9390kW
    導水路:総延長1452.5m
    流域面積:110.0平方キロメートル
    取水:平山発電所→新改川(国分川)[休場ダム]110.30m
    放水:灌漑水路、新改川(国分川)35.7m

新開放水時点でEL.35mなのでまあこれで普通は終わりだが物部川下流とコラボ出来そ う。