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伊奈川の利水旧ルート篇(23.10訪問)(→概要篇新ルート篇須原問題篇)

(伊奈川上流)―伊奈川ダム(諸元)─田光堰堤相之沢発電所田 光発電所橋場堰堤橋場発電所─大桑 堰堤(須原堰堤)[→須原問題篇]─(木曽川)

上流からの模式図は上の様になる。現地レポ[→ツイッタではこれ] は下流から追ったので配置は下流から遡って行く。

まず,橋場発電所である。この日のメインと考えて居た。

関西電力(株) 橋場発電所[→巣原問題篇
運開:1929.2.14[伊奈川電力(株)]※
水路式・流込式
認可最大出力:1,900kW[→発電効率84.9%]  常時出力:220kW[11.6%]
最大使用水量:4.09m3/s
有効落差:55.80m
水車:出力1935kW×1台
導水路:総延長1913.6m
流域面積:119.5km2
取水:伊 奈川[田光PS](588.48m)
放水:伊奈川[大桑PS?]525.94m

23.10

伊奈川への放水点と思われる混凝土の構造物。対岸から確認するべきだったが脇から恐る恐る接写。

拡大してみると幟にこの場所は突然水…と見えるのでここが放水口で間違いなさ そう。場所はこ こ(地理院)となる。

が,放流水の大桑発電所での利用の有無がこの日のメインだったのにそちらは確認は出来ず。。地下にサイフォンでも埋めてあるのであろうか?

さて,メインを落としてやや気落ちして奥地の田光へ向かう。とこのトンネル,(・∀・)イイ!!感じだけど,工事通行止め…otz

地図上での二本線より明らかに狭いんですけどw
で,その北 側に併走する二本線の道路も見当たらず(超狭小の小径ならあったw),仕方がないので対 岸の道路(→地理院)からアプローチ。
特に心の準備もしてなかったのに途中から未舗装になって一寸はらはらさせられたが,地図上でも途 中から細い線(→地理院)で描かれていた。


意外に苦労してやっと白っぽい丸っこい大岩が河原に大量に転がっている伊奈川に出た。


この一寸下流側に田光発電所は佇んでいた。


田光発電所[水 力][ひろし
関西電力(株)
運開:1924.12.17[中央製紙(株)]※
水路式・流込式
認可最大出力:2,500kW  常時出力:0kW
最大使用水量:2.78m3/s
有効落差:108.79m
水車: 出力2550kW×1台
導水路:総延長2445.4m
流域面積:88.8km2
取水:伊奈川[相之沢PS(6.11m3/s)・越百川]711.37m
放水:伊奈川[橋場PS]587.54m

建屋


※元々製紙メーカーの自家発電だった様だ。中央製紙はこ こ(wiki)参照。中津川市で操業中の王子エフテックス中津工場。
御料林からの払い下げ木材を目当てに会社を立ち上げたが払い下げには失敗,北海道や樺太から買い付け名古屋港や富山県の伏木港で陸揚げし、須原まで鉄道輸 送だったとのこと。
結局それがきっかけで高コストの工場は閉鎖,もともと田光の電力を工場のほか大桑村全域に供給し、余剰電力を大同電力へ売電していたが,橋場の水力発電所 と田光発電所は木曽工場閉鎖後、大同電力系の伊那川電力(後の木曽発電)が継承し、橋場の水力設備については改造されて橋場発電所となったそうな。歴史で すなぁ。橋場の項も参照されたし。

ひろしさんのレ ポによるとこ この沢渡りはサイフォンになってる模様。しかも新しい様子。今更増強(=新投資)は無理やね。
また相之沢発電所の少し上流にある取水堰堤からとのこと。こ の辺か?

相之沢より使用水量が減ってしまうのは勿体ないとはいえピーク電源とはそういうものではある。
【小検討】
水量確保の為にはそもそもどの程度の独自の面積を持っているかが重要。伊奈川ダムより上流側を除 いた面積が知りた いがどうもどっかにエラーがあるらしく田光の流域面積から 相之沢のそれを引くと11km2になってしまって如何にも狭すぎる。調べてみると実際は35km2程らしい。
これは地理院が載せて無くて判らなかった越百川から伊奈川ダムへ の導水[→新ルート]の流域を控除すると11km2程になるってことか な?!此処の面積から空撮でもイマイチ所在不明な越百川堰堤の場所が判るかも知れない。詰 まり越百川導水の流域面積は24km2程ということになる(→もしそうなら私の推計(26km2)ほ ぼ的中したことに♪)。

ピーク電源とはそういうもの(=連檐発電所が下流に行くにつれて有効落差も減って使用水量も減じていく)であるけど,相之沢PSの放水量(3.11m3/s)を田光PS(最大使用水量2.78m3/s)が受け止められないのはその差は僅かと云えども やはり勿体ない。
先ずは田光発電所への新規投資を促す為に集水の可能性を検討する。
浦川710m付近より 18.32km2 1.8m3/s程度か。併し浦川は伊奈川ダムへ導水したい。 (11.6km2)
こちらに持ってくるとしても6.7km2程度か。。やる程のことは無いのかもしれぬ。。

先述の様にひろしさ んのレポに よると途中の鉄管も更新されちゃったみたいで今更のタイミングで増強は望めない。

まあ相之沢・田光は伊奈川発電所の尖頭用サブシステムとして今後もこのままかなという感じはする。実際両発電所ともに常時出力は0kWとなっている。

さて,先を急いだせいで直下にある,田 光の放水池兼橋場の取水堰堤(→地理院)を見逃したので還りがけに寄った(→こちら)。

またここに谷 を跨ぐ鉄管橋もありそうだが此処もスルー。再訪を期したい。

その後ひたすら上流に向け走り,伊奈川ダム・伊奈川源流方面へ抜ける道を岐(わ)けて越百(こすも)川沿いに上がるとやっと発電所付近である。

橋からの川の眺め。。越百川の右岸に実にはない未舗装の林道?があった。地図に載ってる側も伊奈川ダムへの導水点迄行くのは大変そうである。

大人しく上に見上げる(意外に立派な建屋の)相之沢発電所へ向かう。ヘアピンカーブで上がっていく。


意外に立派とは現在では40.7MWを叩き出す伊奈川発電所(1977運開)にメインの水源を取られた哀れな発電所という印象だからであるが,現代では 40MW程出せる水源を使って戦前の1938に建設された際は割と"攻めた"発電所だったのであろう。

相之沢発電所[水力
関西電力(株)
運開:1938.3[木曽発電(株)]
ダム水路式・調整池式(伊奈川ダム建設以前は水路式・流込式だった筈)
認可最大出力:6,200kW 常時出力:0kW
最大使用水量:3.11m3/s
有効落差:243.80m(運開当時245m)
水車:出力6420kW×1台
流域面積:76.6km2→伊奈川ダムの流域つまり越百川からの間接流域含む
取水:伊奈川[伊奈川ダム]982.0m
放水:伊奈川[田光発電所]711.50m

読書ダムが後補で設置されて更に新読書PSが建設されて,サブになった読書発電所1~3号機的な発電所がこの相之沢である。勿論規模は相当に小さいがそれ でも6.2MWはある。有効落 差の勝利である。

水 力さんの資料だと相之沢の放水先に伊奈川が載ってなくて田光の取水先に相之沢の他に伊奈川も載ってるが,それでは使用水量に勝る相之沢の放流水の 行き場が無くなってしまって矛盾するので諸元には伊奈川を 入れて 置いた。
現地でも伊奈川から随分高い所に位置しては居たけど特に農業用水的なものも見当たらなかったし入れて置いて間違いはないような,,
もしかしてそのまま田光の取水路に全量流して余水吐で捨てる等してる!?もしそうだとすると勿体ないので田光の使用水量増加など検討しても良いかも知れな い。

建屋


田光堰堤からの導水路。相之沢の放水路も兼ねていそうであるが,適当な見学で写真だけ撮って終わってしまっ た。。川 への余水吐もありそうな感じ(→G空撮)である。

脇には作業小屋があってこの先の田光発電所の取水堰堤が田光堰堤であることが解る。


さて田光堰堤へ水路の脇に道筋が着いている。熊が怖いが,先客らしき軽トラックもあるしと意を決して鈴を掻き鳴らしながら奥へ進んでいく。今後は鈴だけで は心許ないし熊除けスプレー位も常備すべきかも知れない。


直ぐに柵があって立入禁止となっていた。残念,堰堤には辿り着けないようだ。


と,脇にいきなり林鉄の橋!?

鉄橋に廃レールが遺されている。

林鉄は隣接分野(w)ではあるものの事前知識は一切無しなので山の中で一人発見に大興奮する。まあ林鉄界隈では有名なのであろう。
地理院の地図にも橋 は描かれているが林鉄の廃鉄橋なのかよ。先程の発電所へ上がるヘアピンカーブも林鉄由来のもののようだ。越百川の奥へ至る林道と合流しているので 対岸迄クルマでいってみれば良かった(再訪をk…n回目)

田光堰堤
橋の上に立ったりすれば直ぐ上にあって撮れたっぽいけど廃橋の上に立つ度胸も無い私はそのまま引き返してきた。

水圧鉄管…伊奈川ダムへ向かう林道は延々と続いている(結構遠い)が途中水圧鉄管と交叉する。

錆々のもみじ荘の看板と薮に呑み込まれつつあるようなもみじ荘らしき建物。(→大桑村研修センターの様だ[→週末は…♪])

この辺に路駐車輌が現れる。

と間も無く橋があり,其処から先は車輌進入禁止のようであった。

柵には四角い人間が通る部分があって登山者の通行は禁止されていないようだ。
折角あと少しなので歩いて見る。
橋の上からの冬枯れの川の様子。


伊奈川林道というらしい

ダムの手前あるあるの急坂とト ンネルを越えるとダムが見えてくる(樹々が邪魔して写真だと解りにくいw)


伊奈川ダムに到達。水利標識がこんな山奥迄クルマも置いて良く来てくれたと歓待してくれる。

拡大


堤体の下の方に相之沢の取水施設と思われる構造物が見える。

あそこで一旦圧力から放たれるのであそこの標高が取水位で伊奈川ダムの満水位と思われる伊奈川発電所の取水位との差なのであろう。

林道脇から河床に降りれたのでダムを正面に拝む。ダムマニアじゃないんだからねっ(一寸ツンデレ風w)

渇水期の尖頭用に活躍出来るのであろう。貯水量が50万m3しかなく心許ない印象のダムだったがこうしてみるとそこそこデカい。伊奈川PSの11m3/s という使用水量が一寸強気に与えられているのであろう。

伊奈川ダム[地 図][→新ルート]    
堤高/堤頂長/堤体積     43m/105m/55千m3
流域面積/湛水面積     76km2 ( 直接:54km2 間接:22km2 ) /6ha
総貯水容量/有効貯水容量     803千m3/505千m3
着手/竣工     1974/1977
取水:伊奈川[伊奈川2PS]・越百川(間接)
送水:伊奈川PS:11.0m3/s・相 之沢PS:3.11m3/s

先を急いだ都合で最後になった橋場堰堤。利水標の類は見つからなかった。

橋場堰堤

取水部

沈砂池

なんかの施設


最後道なりに進むとこ の峠を経て須原の聚落に直接出た。さっきのトンネル工事があっても特に問題ないのは地区の中心の須原に出るメインルートがこっちで橋場は街外れ だったからか。

その後中央道経由で帰ってきたが土岐付近で事故渋滞。下道を経由するなどして関西に戻ってきた。