電 力総研 水 力あれこれ(北陸)
富山県[境川 朝日小川 黒部川 片貝川 早 月川(上流篇中流篇下流篇) 上 市川 白岩川 常願寺川 神通川 庄川 小矢部川
と はずがたりな掲示板 (利 水スレ電 力スレ )
21.5.28加筆
20.10.4完成
20.10.2運開

早月川の利水状況と水力発電所増強(下流篇)(23.5 訪問)

概況上流篇中流篇下流篇蓑輪頭首工新早月発電所幹線水路トンネ ル早月第二発電所早月発電所国営導水路(合口用水)早月第一発電所

>上市町から滑川市と魚津市の市境を 流れ、富山湾へと注ぐ早月川は、剱岳(2,998m)を源とする勾配が日本一強い急流河川です。集水域の年間降水量は3,000mmを超え、降雨日数も 200日余りと多く、豊富な水量を誇っています。[
富 山県
とのことである。多雨に急流と条件は完璧に整っている♪

北電が戦前の立山水力電気開発の水発群を継承して更にシリーズ化を増強した発電所群と,地元土地改良区主体の早月川電力が開発した2箇所,更にアルプス発 電が開発した一箇所が絡む展開である。 初見ではかなりややこしいw(最上流部中村堰堤~蓑輪堰堤蓑輪堰堤~扇状地には地図を付けてみた。)
早月川電力の母体の早月川沿岸土地改良区も絡む蓑輪頭首工が結節点になっているような印象である。(どうも後補の蓑輪堰堤を陸電のシステムは微妙にスルー する形で完成しているっぽい。)

早月川の農業用水を調べるとこんな感じであった(古そう)。
出典:竹 内(1977)

現代に於ける代表的な設備は幹線水路とそのトンネル(早月隧道)である。
出典:水 土里

下椿用水路の出口はこ こ。上の全体図の飛び地が下 椿のようである。これとは別の下流での渡河地点はこ こ

蓑輪頭首工→新早月発電所(蓑輪発電所:合流→・→分岐:大浦用水)→幹線水路トンネル(→分岐:下椿用水 路)→早月発電所→潅漑用水(→早月川扇 状地各地)と云う感じである。


今周辺の水路のネットワークを図示するとこんな感じに。「ヨッキが大日公園で見かけた室山野用水の案内板(の拡大写真)」に描かれた「 共通幹線用水」が地理院の地図に描かれてないので解りにくい。


蓑輪頭首工[富 山県][北 陸の私鉄]   
竣工:1963年竣工
取水位:204m(早月発電所取水位より)
流域面積:130.1km2(新早月発電所データより)
取水量:15.4m3/s(早月発電所水量より・潅漑用はもっと大きい可能性は有り)

>滑川市蓑輪を扇頂に形成された早月川扇状地の農地(約2,800ha)を潅漑する農業用水を取水する施設です。また、ここで取水された用水は、水力発電 (早月発電所)としても利用されています。
>戦後、干魃問題を解決するため、それまで10箇所に分かれていた各 用水の取水口を一括で取水するため、蓑輪頭首工が建設され、用水の安定供給が実現しています。(1963年完成)[富 山県
蓑輪及び早月第一・第二発電所に出てくる用水の名前は大浦用水・大崎野用水・上大浦用水・森野用水・野川用水・鋤川用水・北野用水・中村用水の8箇所であ る。これ に左岸の川緑用水・下椿用水(嘗ては小椿野用水か?←竹 内(1977)より)の2用水を併せて10箇所かな?



蓑輪頭首工周辺図     
周辺はジャンクションになっているので拡大図も提示。蓑輪発電所→(I)→大浦用水と(I)→(H)はこちらの推 定である。  



(A)水門
23.5末

(B)利水標・早月川土地改良区潅漑用水と早月川電力早月発電所発電用水

下の15.18m3/sは(水量より判断するに)幹線水路を利用する早月川電力早月発電所の水である(もしかしたらその前に使用する新早月のかも)。
問題は上である。
蓑輪頭首工での観点は蓑輪頭首工より下流にある蓑輪発電所の放流水を蓑輪頭首工が 起点となってる幹線水路で使用できるかどうかが焦点であった。
再掲してみる。


4/11~4/20
4/21~5/6
5/7~9/30
10/1~翌4/10
本取水口

注水用取水口
取水口(1)
13.518m3/s
13.518m3/s
6.826m3/s
3.677m3/s
取水口(2)
7.510m3/s
合計
21.028m3/s 21.028m3/s 14.336m3/s
3.677m3/s
内訳
本取水口用
21.028m3/s
19.996m3/s
13.334m3/s
3.677m3/s
注水口用

1.032m3/s
1.002m3/s

本取水口用と注水口用の 違いは現時点で不明であるが,取水口(2)は7.51m3/sの数字に見覚えがあり,これは蓑輪発電所の最大使用水量で ある。詰まり取水口(1)は蓑輪頭首工であり, 取水口(2)は蓑輪発電所放水口で間違いないだろう。
詰まり,無事,蓑輪発電 所から幹線水路への導水が可能であると(書類上)確認されたことになる。(以下で施設的にも確認する=未完)

(C)取水口([早月川電力])。 先ずは一旦此処に水は取り込まれる。 脇の道は迷走県道として名高いr67宇奈月大原野線である(マウスオーバーでヘキサ拡大)。


(D)沈砂池([早月川電力])  脇の道は狭隘県道として知る人ぞ知るr51滑川インター蓑輪線である(マウスオーバーでヘキサ拡大)。実はこの日,蓑輪頭首工へは滑川ICで降りてr51経由で辿り付いたのである。


(E)利水標

道路の看板の向こう側に何やら取水施設の一部があってそこに貼り付けられていた。水量的にこちらは新早月PSのものと判断出来そう。(→その後の調査で断定できた)

平成31年とあるので2019年に許可された水利権の様だが,新早月PS建設時に作られた制水門がこれであろうか?
2015年(H27)に建設された除塵機と導水路制水ゲートだそうな。諸元と比べると着工が 2015年なので整合的である。平面図・縦断面図とも整合的である。

直ぐ隣の水路は割と水量が少なかった。後で見るサイフォンに繋がっていそうで,水量的にもサ イフォンを出た所の水路と似たような感じ。新早月で使用される水はこの区間は別ルートなのであろう。


(F)蓑輪堰堤[富 山県
目の前の川に何も無い(様に見える)頭首工の下部の川べりに看板は立ってた。。(地図だとなんかある様に書いて はある)
どれが堰堤?蓑輪頭首工の堰が蓑輪堰堤とも云う(取水施設が頭首工)という解釈が自然かとは思うけど。


(G)これらの下流側に先程室山野から蓑輪に下ってきた際 に見えたテニスコート(みのわ温泉・テニ ス村温泉施設の不調により温泉を提供できないそう なw どこも苦労している ねぇ。勿論,貧困に苦しんでいる人がいるのに,既に散々保護されているふるさとみたいなのに無駄金を遣って良い訳はないが…)があって,そこそこ利用者も 居て優雅に庭球を楽しんでおり,ゴツい混凝土製のマッシブな利水施設を求めて彷徨 うにはやや場違いな雰囲気ではあるが,気にせず進入。

良く見ると上の風景の中にも利水の気配が(お解りであろうか?)。サイフォン横断場所の看板である。利水設備の真上にふるさと活性化か何かでこの施設を 作ったのであろ う。
テニス客で一定の効果はあるようだったが,一汗かいた後に温泉あると最高だと思うけどシャワーぐらいは使えるのであろうか?

さて,今はこ の辺である。この施設の為というより,蓑輪の聚落をサイフォンでくぐった様である。
サイフォン出口

サイフォン出口付近から早月トンネル・幹線水路方面を眺める。
利水標(B)に拠るとこの時期(5月末)の蓑輪頭首工での潅漑用水取水量は 14.336m3/sであり,しかも利水標(E)によるとこの脇にある新早月で11.6m3/s程利用するのでその残 りの高々5m3/sが流れている感じか。割と流水量は少ない様だ。


直ぐ横(水路左岸)には蓑輪発電所がある。この上が(K)地点であり,ここへ来る為に室山野 からr51で下ってきた際に横切っている(写真1写真2)。


北陸電力(株)  蓑輪発電所[水 力][場 所]      
運開:1926.12[立山水力電氣(株)]
水路式・流込式
認可最大出力:4,100kW→8,200kW[+3.9MW]      常時出力:1,400kW
最大使用水量:7.51m3/s[0.71]▲→13.16m3/sに 増やせる筈
有効落差:65.80m
導水路:総延長2995.6m、
流域面積:106.4km2(恐らく中村砂防堰堤地点の数字)
取水:中村発電所・早月川[中村砂防堰堤?(こ こ)](266.67m)※
放水:●大浦用水[早月川第 二発電所]・早月川?(188.80m)→大浦は此 処ら。蓑輪頭首工からなら兎も角,幹線水路トンネル下の早月発電所放水位では低すぎるようだ。

水力.comさんも中村発電所の放水先に蓑輪発電所を,蓑輪発電所の取水元に中村発電所を挙げているが,中村発電所の放水位(260m)<蓑輪発電所の取 水位(266m)であり,放水位は水流の底位,取水位は水流の水面位で測るようなので放水位<取水位でも連檐している発電所は幾らでもある(例えば中村発 電所とその上の伊折発電所)が,ここはその差が6mもあって一寸そのままでは無理そう。ただ思うに導水でロスする分があって,実際の 有効取水位(的なもの)は中村発電所放水位以下な のであろう。

蓑輪発電所の放水口がイマイチ不明だが,現地視察の結果,冒頭の地図で先取りで示した様に水路を くぐって交叉部(I)に送水されていそうである。そしてその後は大浦用水に主に送られているようで,中村→蓑輪→早月 第二→早月第一という発電用水の流れがある様である。(→その後の調査で現在は蓑輪→早川第二→第一は農業用 水では無く発電水路扱いとなっていることが判明した。(後述))

逆に早月発電所の水は大部分を蓑輪頭首工で取水している事になり,これは中村と蓑輪に15m3/s程(小早月川からの流入分を除く必要はある)の増強余地 がある事を示している。また以下で見る様にその15m3/sから小早月川を除いた分の水は現在新早月で11m3/s程使っているがその取水位は蓑輪頭首工 であり,蓑輪発電所放水位では低すぎるとなる。
増強するとすると10m3/s程の水で中村堰堤(伊折発電所放水+早月川取水)で取水して蓑輪頭首工で放水という感じであろう。

新早月発電所建屋と幹線水路の制水門


早月川電力 (株) 新早月発電所[水力] [早月川電力]    
着工/運開  2013.8/2015.4.10
水路式・流込式(小水力発電)
    認可最大出力:1,300kW
最大使用水量:11.6m3/s(利水標(E)より)→蓑輪発電所の放流水は使えな い構造で早月発電所より使用水量が少ない様だ。
有効落差:13.2m
    流域面積:130.1km2
    取水:合口用水(早月川)[蓑輪頭首工]204m(早月発電所取水位)
    放水:合口用水[早月発電所]191m?(推定・地 図読み)

平面図
出典:早月川電力

縦断面図
出典:早月川電力


(H)水路交叉部





更に別アングル

地理院でも確認出来る(H)をぐるっと回り込む小川。結構水がちゃんと流れてた。こんな小さいけど地図に記載して貰えるんだなw

新早月の敷地の脇を流れていた。発電所建設に伴って側溝状に整備されたのであろう。


(I)分水工…恐らく蓑輪発電所の水はここに流され,幹線水路(交叉部(H))方面と大浦用水(早月第二発電所)方面に分水される。

覗き込んでみる。そこそこ水はざばざば流れていた。
正面が大浦用水方面,左手が余水路的な早月トンネル・共通幹線方面

その余水路・早月トンネル方面

分水工(I)と交叉部(H)の水量を判断するに蓑輪発電所放流水(Max7.51m3/s)は主に大浦用水・早月第二発電所(Max6.96m3/s)に 送られて,余水が幹線水路に流される感じの様である。

(J)大浦用水を求めて此処ら迄来ると工事中で進入は憚られた。掲示は「×この先通り抜けできません」で「進入禁止」ではなかったので行ってみても良かっ たか。。

ただ余水路の様子は見れて,からからであった。クレストゲート的な超緊急時にしか使って無さそうである。
水路方向

早月川方向


今蓑輪堰堤から下流方向への水路ネットワークを図示すると以下の様に成る。

大浦用水は蓑輪発電所放流水と連続して いそうであるが未確認である(→解決)。
蓑輪頭首工も幹線水路(早月隧道)も完成後,早月発電所は運開前の時点の竹 内(1977)に拠ると大浦用水(⑧)がうねうねと描かれた図が載っており(当時は出来ていた蓑輪頭首工・トンネル完成前の図であろう),大浦用 水⑧経由で取水して大崎野用水へ放水して発電する早月第二発電所もあるし廃止になったとは思え ないのだが,水土里の表記だと「蓑輪頭首工から取水した水はすべて同トンネルを通過し て農地に届けられる」とあり,地理院の図にも蓑輪頭首工~早川第二発電所の間で途切れている様に描かれている。 大浦用水も蓑輪頭首工が水源だと思う(→例えば富 山県の表記:10箇所に分かれていた各用水の取水口を一括で取水)のだけど,この辺の矛盾も未解明で ある。23.5の現地訪問時も時間もなく深追いは出来なかった。右岸の下椿用水路のように幹線須路トンネルから途中分岐があるならここもその旨書かれてい そうであるが,その様な表記も現時点では確認出来ていないない。すべて同トンネルを通過っ てのが勇み足の表現ではあるとは思ってるけど大浦用水も大崎野用水も基本は隧道経由で,(後から農業用水となる)発電用水のみ旧大浦用水を流れてくると云 う扱いなのかも知れない。
出典:竹 内(1977)

調べて行く内に旧大浦用水路が水力発電所水路になっているという文書を見付けた。幹線水路建設後のこの 区間は持って居ても管理を含めコストが掛かるし全て北陸電力に移管した様である。また「 大浦用水は蓑輪発電所放流水と連続して いそうであるが未確認である」という疑問も,ちゃんと繋がっていると云う事が文書上確かめられたことになる。
出典:滑 川市

早月川 電力発電所

早月川電力株式会社 早月発電所[水力
運開:1980.4
水路式・流込式
認可最大出力:6,000kW     常時出力:0kW
最大使用水量:15.18m3/s
有効落差:47.25m
    水車:立軸カプラン水車 出力6250kW×1台
    導水路:総延長2921.5m
    流域面積:130.1平方キロメートル
    取水:合口用水(早月川)[蓑輪頭首工204m・新早月発電所191m?]
    放水:合口用水127.82m[こ の辺?131m



北陸電力(株) 早月第二発電所[水力
運開:1919(T8).12[富山電氣(株)]
水路式・流込式
    認可最大出力:1,400kW  常時出力: 600kW
    最大使用水量:6.96m3/s
    有効落差:28.00m
    水車:横軸フランシス水車 出力1520kW×1台
    導水路:総延長1529.4m
    流域面積:130.7km2
    取水:蓑輪発電所(大浦用水?)184.64m
    放水:大野崎用水早月第一発電所](多分こ れ)・他用水(多分こ ちら/合口用水にも)152.71m

入会橋の袂から一寸だけ這入った所にある。余り有効落差がある様には見えないが一応28mあるらしい。
23.5

大崎野用水へ放水

帰って写真を見返してみると,上の写真だと二手に別れてて手前の方に水がたくさん流れている様にも見える。下流方向の下の写真ではよく解らん。次の機会を 待ちたい。


水土里ネットの資料[→概況]の一部拡大抜粋(凡例:A=潅漑面積 ha・Q^1=代掻水量m3/s・Q^2=常時水量m3/s)
出典:水 土里

国営導水路(合口用水?)[地 理院]…上図だと「左岸幹線」である。


合流部[地 理院EL.131m

上画像右手:早月発電所(早月川電力・ 運開:1980.4・最大使用水量:15.18m3/s・放水位127.82m)からの水(「左岸幹線」此処ではQ=15.18m3/s)
上画像左手:早月第二発電所(運開:1919(T8). 12・最大使用水量:6.96m3/s・放水位152.71m)からの水(「幹線補給連絡」Q^2=1.41m3/s)

右手・早月発電所放流水


左手・早月第二発電所放流水


早月第二側は放水位から合流点迄30m程の未利用落差があるので利用出来ないものかとも思ったが,元々少なめの水量に加えて,恐らく大野崎用水に多くを供 給する為にこちらへの流入は少なめとなっている様である。

水門[地 理院はこれ?]…模式図だと此処では 早月川への放水路を分岐させているようだ。放水するぐらいなら下流で発電するべきだがどの程度経常的に放水しているか不明。分水状況はよく解らなかったが 緊急時の余水吐的な機能か?


落差工…勢いのある水流である。十分発電に使えそうな感じはする。季節ものだったりして難しいのであろうが。。


右岸連絡水路[地 理院]… 川向こうへの分水をしているようだ。常時水量1.82m3/sとのこと。


この先で早月第一の水を併せて且つ,郷用水・鋤川用水等と分岐する箇所があるようだ。


北陸電力(株) 早月第一発電所[水力
運開:1918(T7).4[富山電氣(株)]
水路式・流込式
    認可最大出力:1,050kW    常時出力: 600kW[57.1%]
    最大使用水量:4.73m3/s
    有効落差:29.10m
    水車:横軸フランシス水車 出力1081kW×1台
    導水路:総延長1480.0m
    流域面積:133.5平方キロメートル
    取水:早月第二発電所+早月川(大崎野用水) 152.71m(←早月第二放水位)
    放水:上大浦用水、森野用水、野川用水、鋤川用水、北野用 水、中村用水、早月川 113.60m





合口用水

早月第二の水も併せて更に扇状地全体に供給しているようだ。
この日はこの辺で打ち切って常願寺方面へ急いだ。




<鋤(すけ)川用水>

早月川沿岸土地改良区 早月川沿岸第一発電所[明 電舎]   
運開:
出力:530kW
水量:4.2m3/s
落差:17.9m
水  車 : クロスフロー水車             585kW-17.9m-4.2m3/s
発 電 機 : 横軸三相誘導発電機     530kW-6600V-60Hz