電 力総研 水 力あれこれ(天竜川[信濃区間]) 天竜川中上流域 天竜 川中下流域
と はずがたりな掲示板 (利 水スレ電 力スレ)
運開:20.11.26
阿知川・阿智川上流篇(21.5訪問/22.7再訪/22.8通過/23.7通過)

1.概況 2.現況と増強(上流篇黒川堰堤横川堰堤園原堰堤本 谷堰堤昼神発電 所駒場堰堤大沢川下流篇[駒 場発電所(諸元)・三穂堰堤湯川沢堰 堤三穂発 電所(諸元)・阿 知川堰堤阿知川発電所(諸元)])
3.開発(3-1 奥阿智第一発電所[+3.85MW]・奥阿智第二発電所 [+7.15MW]・清内路発電所[+5.7MW]・ 奥黒川発電所[+3.3MW]・昼神発電所増強案[+6.1MW]3-2:三穂・阿知川発電所リブレース[+15.6MW)


~沿川風景~

(20.11作成時点で)最上流の昼神発電所から見て行く。
昼神発電所への導水管は主に二手に別れていて一方は本谷川と横川川(なんちゅう河川名やw),もう一方は清内路川・小黒川・黒川等を集めた阿知川から取水 している。後者 は平 瀬野 田付近でも取水してる可能性があるけど取水してても流域面積から0.1m3/sのオーダーであろう。

昼神取水堰などと書かれている阿知川(黒川)であるが,この取水堰の流域面積は最奥部は摺古木山であり,山向こうの木曽谷だとまだまだ入口のイメージの与 川流域となっている。(清内路川の向こう側は蘭川)

この前(21.3)南木曾(柿其蘭川見た後)からR256清内路峠抜けたのでもう夕暮れ時ではあったが直 ぐ傍通りがかってたのにすっかり失念してた。。orz

→堪らず21.5再訪。以下の写真はその時のものである。

木曽は遠い。R19が木曽高速と呼ばれる程信号も余りなくて快適に飛ばせるとは云え遠い。神坂(みさか)PA辺りにスマートICでも出来(て出来れば馬籠 峠が長大なトンネルでぶち抜かれたりす)ると違うんじゃが。。今ある中津川ICは西に偏りすぎていて落合辺り迄R19が4車線完備とはいえやや不便なので ある。それに対して此処昼神は園原IC(名古屋方面のみ)に直結していて便利である。最近厭きてて名神ばかりだったが久々の名阪経由は新鮮で東海環状道経 由で昼前には着いた。

昼神発電所を中心に見たが,肝心の薗原川を見忘れていた。22.7に再訪を期す。下流の阿知発電所から総嘗めにする予定がR151の新野峠先が災害復旧工 事で通行止めであったので諦めた。その日の夕方5時に解放だったのだそうな。。惜しい。。この日は偶々兼山橋も工事中で渡れず,であった。。そんな日もあ る。


(源流)

黒川堰堤[場 所][ラ ピス]     
阿知川(黒川)・清内路川との合流部
取水量:4.16m3/s・ 残念ながら貯留量は無いようだ、、
標高:754m 付近
面積:68.7km2[推]

23.7,下流部より攻め上がった際に見かけた掲示により,この堰堤の名称は黒川堰堤である 事が(ほぼ)確定した。(清内路発電所 (後述)が竣工したら小黒川は兎も角黒川からの取水口はどない呼ぶねん。。清内路堰堤かな~?)

地図では調整池っぽく見えるけど昼神P/Sが流込式なので貯留量は無い様子。
谷底のような所にあり, 少量ではあるが貯留量を確保出来る筈である。
その谷底の様な場所にまあ適当に行けば行けるだろうとネットの スライド見て漠然と近づいてみたが全く無理だった。。
撮れた写真はこの有様w
21.5
アップにしてもこの程度である。

とはいえスライド (既に消失)で 取水量は4.16m3/sと判明している(現場では忘れてて悄然としていた。うろうろする中でこ の辺迄は行ったんだけど中電が工事してるし上へ上がって川はどんどん遠ざかるして止めてしまった。
鉄塔工事であったが,その後に再訪した時の写真がこれ。どうやら清内路水力発電所建設の為の送電線の新設らしい。清内路昼神線とあるので昼神発電所から先 は既存の
22.8
あと一寸進んで斜面を下るのが正解だった か。。)。][ラ ピス]によると吊り橋迄渡れるようだ!此 処らから歩くのか??

ということで,22.8下旬,帰省の序でに落合ダム・山口ダム蘭川と共に此処を組み込んで寄ってみた。前 回引き返してしまった箇所をずいずい進んでいくと広場があったのでクルマを停めて歩く。阿智川も3回目である♪

吊り橋

利水標

上流の様子。利用水深数mで貯留できそうな感じだけど。。後述の直上に建設中(完成遅延中)の清内路発電所の放水位が気になる所である。




昼神取水堰の流域面積だけで68.7km2程もある。豪雨地帯ではないとはいえ小雨地帯でもない。4.16m3/sは少々小さいのではないか。
さてどんだけ増やすかであるが,但し3,000m/年な地域でもないので其処迄は増やせないのではないだろう。
年3000mm級の降雨地帯では10km2で1m3/s程の経験則(物部川の法則と勝手に呼んでる)から2400mm程の此処らは5.5m3/s程取れる のではないか?
4.16の5.5に対する比率は74.3%ってとこだ。1800mm級の雨しか降らないってことはないだろうから取水量を控えめにしているだけであらう。


クルミ沢
堰堤
堤高:2.0m 流域:2.0km2 取水:

阿智川の上流部の支流本谷川流域に取水口が幾つかある。ここをどんどん奥へ行くと南側は和知野川上流,西側は中 津川や落合川の上流(木曽川水系)となる。

本谷堰堤[公文書]
堤高/堤頂長: 8.96m/26.50m
取水量:1.92m3/s (1.32 にも1.82にも見える。。惜しい→矢も盾も堪らず見に行ったw が,行った時にはラピスなどのことはすっかり忘れて新鮮に興奮できてたww 以下参照)
標高:753m
面積:31.5km2

前日の大雨で河は濁流,ゲートは全開だった。
21.5
23.7も大雨でゲート全開。。
23.7

お約束の吊り橋。

厳重に封鎖されてるけどちゃんと水利標は見えるとこに♪GJだ☆

1.92m3/s確認ヨシ!

調べてみると32km2程有る。2,400mm/年なので(2400/3000)*32*0.1=2.56m3/sだからもう一寸欲しい気がする。他と併 せて増強可能なら増強って 感じか。

当初案では本谷川(場所は横川山駒)から3.33m3/s取ろうとし ていたらしい。これが今の本谷堰堤か不明だけどそれ位取水しても良い様な気がする。


公文書館で色々資料を漁っていると本谷堰堤の魚道を撤去して排砂門を新設したという記事 に遭遇した。
出典:公 文書(長河第155号)
(昼神発電所は)1944(S19)年12月以来運転中のものであるが1957(S32)年の第五号台風により本谷堰堤(堤高8.96m・堤長 26.50m)の上流部に土砂流入が甚だしく,発電に支障をきたすことになったので,今回,既設堰堤の左岸護岸から延長6mの間の魚道及び固定堰を撤去し て,その跡に排砂路(巾4m・長9.8m)を築造しようとするものであり…とある。現在あるゲートは 排砂門ということになるのかな?また魚道も昔はあったが漁協の同意を経て廃止 (撤去・閉塞)されたらしい。
大雨の度にゲート開放してるのは排砂をしてるのかねぇ??まあ泰阜ダムに貯まって行くんだけどw

園原堰堤    
薗原川
取水量:0.36m3/s[73%程度]
標高:こ の辺
流域:4.9km2程度

前回21.5訪問ですっ飛ばしてしまった川。怪しかったんだけど。。地図には何も載ってない…と思ったら堰の印しあったねぇ。。
川を遡っていくとあっさり見つかった。
22.7
利水標も頂きました。昼神は割とイイ感じで整備されている♪




~横川川~   
横川を遡っていくと。。鉄管付きの橋発見!地 図より本谷川側の全水量をこれで通している様だ。

恰度道端に広くなっている場所があったのでクルマを停めて渡ってみる。

この日は濁流で下が見えるのはちと怖い。

看板はこんな感じで書いてある。(マウスオーバーで看板拡大)
可成り強めの警告だがよく見ると紐で境界を誇示してるけどその境界は道路の向こうで山に用のない私には関係の無い看板で熊はちょっと怖いけど安心して川沿 いの道に歩を進める事ができる。
寧ろさっきの吊り橋みたいに封鎖されてないのはこの山へ立ち入る必要がある為の中電の好意ってとこか。
ありました。(痛恨のピンぼけ。当方,これをメインに来たのに。。)

勿論施設も。

堰の様子は角度の関係で収められなかったけど当方はそういうの(堰マニア)じゃあないんで。。

取水堰からの水は此処を通るのか??溝には水が流れていなかった。
さっきのゲート全開の本谷に引き続いてこんな大雨で水が溢れている時(まさ に洪水時)に水力発電は取水出 来ないのか?台風が来ると機械止める風力発電みたいなもの??

横川川取水堰[横川堰堤?]   
取水量:0.96m3/s[54.8%]
標高:こ の辺
面積:17.5km2

17.5km2なので1.4程欲しい所0.96m3/s。
本谷が2.56欲しい所を1.92で75%。横川が1.4欲しい所を0.96で68.6%。0.64と0.44で1.08m3/sの上乗せは微妙だなあ。 既存の管で行けると簡単で良いんだけど


昼神発電所[水力] [松 本市教(行政はurlぴんぴんと変更して仕事したふりするのやめえや)][場 所][公 文書][DB]    
中部電力(株) 
運開:1944.12(日本発送電(株)) 着手:矢作水力(株)(1937・河水使用工事許可申請)
水路式・流込式
認可最大出力:8,700kW(8,000kW)  常時出力:2,700kW[0.31](3,600kW)
最大使用水量:7.40m3/s→12.6m3/s 位にしたい(詳しくは3.1奥地開発参照)  常時水量:?(3.30m3/s)
 (昼神4.16m3/s・本谷1.92m3/s・横川0.96m3/s→7.04m3/sううっ,,こりゃ未だどっかに取水口隠しもっとる。。園 原川か?→あっ た![空撮][す とびゅ]0.36m3/s)
有効落差:137.88m(137.00m) 常時有効落差:?(139.00m)
水車: 出力8950kW×1台
導水路:総延長8058.9m、主要導水路 幅2.02m×高2.44m、延長7698.9m
流域面積:126.4km2
取水:本谷川[本谷堰堤]横川川阿 知川(清内路川合流部 他4ヵ所(園 原川) 計7ヵ所(←こんなにもあるの!?)753.10m
放水:阿 知川駒場発電所取水口直上]607.84m

1960年頃の最大・常時の水量(Q)・有効落差(H)・出力(P)の出典はこれ。最大出力がアップしてるのは良いとしても常時水量が低下するのは出力上 げた水車特性のせいなのか?? DBによる現行施設運転開始年月は1991.03である。
出典:公 文書(長河第155号)

22.7
発電所の進入路の北側に謎の基礎。


戦中の運開だが使用水量が流域面積に比べて小さい。とはいえ雨の比較的少なめな駒ヶ根山系にある(冒 頭や木曽川の降雨 図等より王滝川寄り>駒ヶ根山系>南アルプスの様だ。)。
公文書館で全取水口を確認してきた。
黒川・本谷・薗原・横川(阿知川堰堤入口で見かけた掲示に出てたやつと一致)の 合計が恰度発電所の最大使用水量に一致する7.4m3/sである。

水利量
流域面積
増強
その他
黒川堰堤
4.16m3/s
68.7km2 5.5m3/s(+1.34m3/s)

クルミ沢
0.03m3/s 2.0km2

補給用
野 田の沢 0.08m3/s

補給用
本谷取水堰
1.92m3/s
31.5km2
2.56m3/s(+0.64m3/s)

薗原取水堰
0.36m3/s
4.9km2?


横川取水堰
0.96m3/s
17.5km2
1.4m3/s(+0.44m3/s)

夜烏川
0.06m3/s

補給用
昼神発電所
7.40m3/s
126.4km2
9.82m3/s(+2.42m3/s)


水量7.40m3/sを12.6m3/sに増やすと出力8,700kWを14,100kWに[+5.4MW]出来る計算に なる。
発電機の容量が8,950kW程有るのに実際の容量は8,700kWである。7.61m2/s[+0.21m3/s]に増強すると恰度8,950kW[+ 0.25MW]に出来る。ちょいと頑張って9,000kW程度に出来ないだろうか?時々水車の性能が良くて予定よりたくさん発電出来るとかある場合がある し♪
増やすにしてもこれではささやかすぎるな。。リプレースに併せるとすると,水量10m3/s[+2.6m3/s]程度出力11.7MW[+4.3MW]程出 来るのではないか。2400/3000を掛けてみた。これぐらい纏まった水量だと2号機を4500kW程の発電機を設置して実現しても良いかも知れない。

また出力を増やすと云うよりは発電量を増やす為にも昼神取水堰をダム化して貯留量を確保して欲しいとこ。谷底みたいなとこなので


駒場ダム[場 所][DB]      
取水量:7.235m3/s
流域:140.4km2
(主要取水設備) 高さ     (m)       9.11
  (主要取水設備) 堤頂長     (m)       36.91
  (制水門) 型式             スライド・ゲート
  (制水門) 門数     (門)       2
  (制水門) 径間(口径)     (m)       2.48

22.7
さてここもスライドを忘れて徒渉。利水標の発見に大喜びした。(昼神発電所は気付いたら過ぎてた。)
いきなり土手べりに立ってて笑える。いつもこのくらいのオープンさで置いといて欲しい。薗原堰堤を 見逃していたので22.7再訪。
21.522.7

貯 留量はなしのようである。21.5は豪雨後で何処もゲートを全開にしていて水量は低下してたけど一寸貯められそうには見えるんだけど。。22.7はゆった りと水が貯まっていた。
7.235という中途半端な水量は尺貫法を示唆してますなあ~(260立方尺である)。上流の昼神Pの使用 水量は7.40m3/sで日本発送電による戦時下(1944)の運開だけどもう尺貫法は使ってなかったのか,どこかの 段階で増強した際にメートル法に併せたのか?

取水設備は駒場ダムと云うらしい。
>制御ソフトの不具合が原因となり、洪水吐きゲート2門が突然開き、堰堤上流の貯水が下流に 放流される事故が発生した[EIC
らしい。。

ダム湖の一画から水が流れ込んでる。恰度利水標の裏ぐらいである。
これが昼神発電所の放水口なのか??地図ではた だの中州っぽいけど。。
22.7

取水堰全景

21.5
21.5訪問時,此処でも濁流に対して取水は止めてる印象だった。昼神発電所の放水位が607mなのでそれ程高 くは出来ないが608m程度にすると久々野ダム程度の利用水 深3m(笑)ぐらいは実現出来るのでは無 い か!?
満水位610mで2.9ha。昼神の放水なんとかしてダム的なの造りたいけど難しいかなあ。。
23.7訪問時も取水を止めてるようだった。この日,下流の三穂堰堤ではしっかり取 水してたのにねぇ。。ここや本谷堰堤,あと和知野ダムも放流状態だっ た。どうも洪水(高水) に対して余裕を持っておく必要があって全門開放して取水停止する必要のある発電所と既に余裕があるのかなくてもリスクが低くて対策が必要ないのか取水を続 行出来る発電所の二種類がある様に見える。鳴鹿大堰みたいに二重構造に改造したらOK?
それとも単に土石流が流 れ込む危険のある山間部は不可?(和知野や駒場とちがって三穂はだいぶ開けた場所にある。)
若しくは三穂(立石)発電所は三穂堰堤で取水后一旦湯川沢堰堤に貯めるのが効いてるのであろうか?この辺の解明も課題となる。
23.7

駒場堰堤では140.4km2に対して 7.235m3/sの水量を取水している(係数0.51)。一寸物足りない流量である。
更に大沢川からも取水出来そう。

大沢川14.8km2→1.2m3/s


と,思ってたら本当に嘗て大沢川から取水をしていたそうな。


こっちこそネット初公開情報と思われるが,今は阿智川のみで取水してる駒場発電所には嘗て大沢川から も取水する支水路があったが昭和30年代後半に廃止されてしまった様だ(公文書館で発見)。見に行ってみたがよく解らず。一帯も人家はあったがそうそう都 合良く親切な地元のおじさんも歩いてなかった。。 pic.twitter.com/Fpfonbckdy

— とはずがたり (@tohazugatali1) July 13, 2023

「駒場発電所水利使用計画変更(大沢川水路廃止)」とある。日付は昭和33年(1958年)4月15日付けの文書である。
出典:公文書館
同文書によると「大沢川引用水路ノ流量ハ一秒時間〇・〇四立法米(一四・四立方尺)(要は0.4m3/s) ヲ標準トスル」とあって,昭和33年って未だこんな前近代的な文書を本邦官庁は作成・やりとりしてたのかと可成りカルチャーショックを受ける。そら日本国 憲法も旧字体で書かれてるわな~。

場所は良く解らない。。公文書館ではコピー不可でぶれぶれの写真で撮った地図を拡大してみるとこんな感じ。
ヘアピンのカーブ(現代だとこ こ?)の後の橋の直上にある?


流石に再訪してまともな写真を撮ってきたい。。今R153が阿知川橋で華麗にR256で分岐する辺りに昔は本導水路から大沢川引水の導水路が華麗に岐れて 阿知川を導水管で渡っていた様だ。

中央道大沢橋の真下にある市道の橋。上の地図だと小野川の野の字辺りっぽいのだけど。

聚落内で見かけた伊那街道の説明板。古い物が載ってる!と色めき立ったが残念ながら昭和30年代廃止みたいな新しい物には触れられてなかった。

平面図なんかでも標高でも,こ の橋の直上(上の図の現在地の 近くの橋)が怪しい。
伊那街道が川と面している場所が擬定地近傍ではあったが,覗き込んでも特に何も見当たらなかった。基本的に撤去されてるだろうし,廃止直後に訪問した室生発電所の堰堤もかなり気配は消えてて堰堤跡 は完全撤去されてたしまあ已む無しか。


この辺の奥にありそうな感じもあったけど私有地っぽくて断念した。


以下下流篇に(駒場発電所三穂堰堤)