電 力総研 水 力あれこれ
と はずがたりな掲示板 ( 利 水スレ電 力スレ )
21.5.19作成

只見川の水力発電(その3)

阿賀野川(中下流) 阿賀野川(上流・大川) 只 見川(下流) 只見川(上流) 奥只見(最上流) 只見川(支流)伊南川  奥只見・檜枝岐 魚野川・黒 又川(信濃川水系)
滝ダム 只見 発電所只見ダム田子倉発電所田子倉ダム大鳥発 電所大鳥ダム奥只見発電所奥只見ダム大津岐発電所大津岐ダム奥只見西部開発(+20.7MW)桧枝岐ダム奥只見南部開発(+41.1MW)

莫大な水量を誇る奥只見ダムが流れ込む只見川。阿賀野川合流部から伊南川合流部迄のその1に引 き続き只見ダムから源流までのその2を取り扱う。
大津岐D(965m)→ 大津岐PS→奥只見D(4億5,800万m3・750m)→ 奥只見PS(562.8MW・389.75m3/s)→大鳥D(50.0万m3557m)→ 大鳥PS(182MW・427m3/s)→田子倉D(3億7,000万m3・510m)→ 田子倉PS(400MW・420m3/s)→只見D(2,000万m3・390m)→ 只見PS(65.0MW・375m3/s・370m)(→只見第二PS[+50MW])→)只見川下流域(滝D:2700万m3・350m/ 滝PS:92MW・300m3/s)

田子倉から放水される420m3/sを375m3/sしか使えないのに2000万m3しかない只見がネックかな?
45m3/sで水を貯めるのに2000万m3は123時間。5日程だからまあ大丈夫か。

もっと年周期的な事を考えて見る。
『只見川 その自然と電源開発の歴史』(1964)福島民報社に拠ると以下の様な記述がある:
只見川の流域は約三千八百平 方キロメートルもあり,春の雪どけ期にはこ こからどっと只見川に水が落ちる。雨量になおして年間二千五百ミリから三千ミリだが,春四,五,六月の三ヶ月で一年の60%が流れ出す(※1)。
田子倉付近で一年間に只見川を流れる水は二十五億トンにもなるという(※2)。

上の※1※2より,4~6月の三ヶ月に田子倉付近を通過する水 は15 億トン程度となる。
また滝ダム只見ダム田子倉ダム大鳥ダム奥只見ダム大津岐ダムの貯留量はそれぞれ 1,030万m3・200万m3・3億7,000.0万m3・50.0 万m3・4億5,800.0万m3・56.0万 m3で合計で8億4,146万m3である。
概ね水を2回転(正確には1.7回転)させる必要があることになる。もう 一寸貯留して冬の渇水期に備えたい気がする。
奥只見ダムの直ぐ横の袖沢や,田子倉ダムの支流白戸川の上流に更にダムが欲しい気がする。本項では導水を中心に検討したが貯水量が足りないとなると巨 大ダムも欲しくなってくる。頁を改めて検討したい。

因みに奥只見発電所の流域は595.1km2。約六百平方キロメートルであり, 田子倉発電所のそれは816.3km2である。比率が同程度とすると奥只見地点での年間通過水量は18億トン,4~6月期の通過水量は11億ト ン程度と推計出来る。やはり2回転程(正確には2.4回転程)させる必要がある。

同じく4~6月増水期に2回転程であるが,田子倉ダムの方が余裕がありそうな 事 が解る。

また※2及び田子倉ダムの流域面積816.3km2より100km2辺り3億トン超と なる。これは天竜川での推計と似たような数値となる。
~沿川風景~
只見川上流篇(滝ダム~田子倉ダム)はこちら


田子倉ダム(諸元抜粋)[→ 只見川上流篇
有効貯水容量:3億7,000.0万m3[10d4h42m]
満水位標高:510.00m   低水位標高:458.00m      放流水位標高:391.00m
流域面積:816.3km2 ( 直接:702.3km2 間接:114km2 )    湛水面積: 995ha
取水位:510m
最大使用水量:420.00m3/s(田子倉発電所)

大鳥発電所[水力]      
電源開発(株)
認可最大出力:182,000kW ( 1号機:95,000kW ・ 2号機:87,000kW ) 常時出力:12,800kW
最大使用水量:427.00m3/s ( 1号機:220.0m3/s ・ 2号機:207.00m3/s)
最大有効落差:50.80m (1号機) 48.10m (2号機)
放水:只見川[田子倉ダム]502.77m

大鳥ダム[水力]     
着手/竣工:1961/1964or63
堤高:83m 堤頂長:187.9m
総貯水容量:158.0万m3    有効貯水容量:50.0万m3
    流域面積:656.9km2 ( 直接:542.9km2 間接:114km2 )
    湛水面積: 89ha
取水位標高:557.00m
取水量:427.00m3/s

奥只見発電所の逆調整池なのだろう。有効貯水量は大したことはない(V=50.0万m3)が使用水量(427.00m3/s)は奥只見のそれ(387.00m3/s・維持水量除く)を(田子倉をも)上回る!大 鳥で大量に水を使ってもその下の田子倉も また巨大ダムな ので心強いという寸法である。揚水的な尖頭供給力という感じであろう。
容量小さめの大鳥ダム(V=50.0万m3)に水が滞留することは無さそうなので標高の高い上流から田子倉ダムへ流れ込む水は大鳥ダムに導水して発電すると 良いかも知れない。

~袖沢・白戸川~

800mから取水。奥只見ダムの導水とかち合いはするけどこちらは発電用で導水用では無い。


[私案]袖沢発電所
出力:12,800kW[+12.8MW]
水量:6.4m3/s
落差:235m
流域:40.9km2
導水:
取水:袖沢[袖 沢(ダイコロシ沢)下 ダイコロシ沢滝 沢不 動沢]・北 沢白 戸川(中沢出合)・小沢・芦安沢・洗戸沢 800m
放水:只見川[奥只見発電所放水路※]560m

※奥只見発電所の使用水量は400m3/s近いので6.4m3/s程度を入れ込む事は流石に可能であろう。

白戸川流域18.2km2分の水は新規に大鳥で発電可能となる。




奥只見発電所[水 力]   
電源開発(株)
開発決定/着工/運開 : 1953/1957/1960
増強:2003.6  4号機及び河川維持流量機運用開始・2012.12 河川維持流量機増強(2,800kW)
ダ ム水路式(発電機は此処にあるっぽい。これは馬瀬第二がダム式ならダム式では?)(維持はダム式?)・貯水池式
認可最大出力:562,800kW[1~3号機:120,000kW×3,4号機:200,000kW,維持2,800kW(以前は2,700kW)]
常時出力:54,700kW[1~4号機:52,600kW,(維持)2,100kW]
最大使用水量:389.75m3/s [1~3号機:83.0m3/s×3,4号機:138.0m3/s,維持2.75m3/s(以前は2.56m3/s)]
有効落差:170.00m(1~3号機)・164.20m(4号機)・130.30m(維持)
水車:(1~3号機)最大出力137000kW×3台+(4号機)最大出力205000kW+(維持)
導水路:総延長5852.6m(1~4号機・維持)
流域面積:595.1平方キロメートル
取水:只見川[奥只見ダム]750.00m(1~4号機・維持)
放水:只見川[大鳥ダム]552.50m(1~3 号機?)・609.00m(維持)
佐久間なんかと並び立つ 押しも押されもせぬ日本最大級の発電所。出力・有効貯水容量・重力式ダムに於いて堤高なんかが日本一である。
建設に際して今は観光道路として活用されているシルバーラインが建設され,また映画ホワイトアウトの奥遠和発電所のモデルにもなった。
 
奥只見ダム[水 力][便覧]     
電源開発(株) 目的:発電
着工/竣工:1953/1960
堤高:157.00m
総貯水容量:6億0,100.0万m3  有効貯水容量:4億5,800.0万m3
満水位標高:750.00m    4号機低水位標高:725.00m 低水位標高:690.00m 基礎標高:598.00m
流域面積/湛水面積: 595.1km2 ( 直接:425.6km2 ・  間接:170km2 ) /1,150ha
取水:袖 沢→南沢(小 屋場沢本 沢)→只見川[奥只見ダム](389.75m3/s )
放水:只見川

大津岐(また)発電所[水 力
電源開発(株)
 運開:1968.12
ダム水路式・調整池式
認可最大出力:38,000kW 常時出力:39kW
最大使用水量:22.00m3/s (常時:0.22m3/s?)
最大有効落差:205.56m
水車:出力39900kW×1台
導水路:総延長4960.6m
取水:(小ヨッピ川[大津岐ダム]→滝 沢)+(袖 沢(御神楽沢)ミ ノコクリ沢一 ノ沢)→発電所 965.0m
放水:大津岐川[奥只見ダム]745.55m



大津岐ダム[水 力][便覧] [場 所(965.9m)]  
着手/竣工:1965/1968
堤高:52m
総貯水容量:182.5万m3    有効貯水容量: 56.0万m3
流域面積:179.6km2 ( 直接:17.4km2/ 間接:162km2 )   湛水面積:10ha
取水:舟 岐川[舟岐取水堰]檜 枝岐川(伊 南川)[檜枝岐取水堰]→小ヨッピ川[大津岐ダム]・大 ヨッピ川[大ヨッピ取水堰]→小ヨッピ川[大津岐ダム]、

国 交省作成資料に取水ダムと維持流量の期別パターン状況が載っていた。数字と括弧内数字の関係がよく判らないが取水ダムの名前は判明する。上の地図 と下の地図で取水堰堤は罔羅できていた様だ♪(奥袖沢のみ直接確かめられていないがラス一で条件にも当て嵌まるので間違いない。)

大津岐ダム 0.044(0.252)、大ヨッピ取水ダム 0.031(0.292)、滝沢取水ダム 0.015(0.294)、一の沢取水ダム  0.004(0.285)、
ミノコクリ取水ダム0.024(0.226)、;奥袖沢取水ダム 0.037(0.180)、舟岐取水ダム0.129(0.300)、檜枝岐取水ダム  6/1~11/30 1.3(1.830) 12/1~5/31 0.213(0.300)

【奥只見西部開発】    

大津岐が東側を罔羅しているのに対してがら空きの西側を開発してみる。まず,流域を総嘗めしてから更に上流から取水(橙線)してみた。
合計で20.7MWと満足である。




[私案]西奥只見発電所or奥只見第二発電所or中ノ岐川発電所
出力:14,900kW[+14.9MW]
水量:10.0m3/s
落差:175m
流域:82.0km2
導水:本導水路:9.3km・北ノ又支水路:5.7km 計15.7km
取水:恋 の岐川二 岐沢中 ノ岐川北 ノ又川大 ビラヤス沢灰 ノ又沢 930m
放水:只見川[奥只見ダム]745m

西奥只見発電所へ上流から発電してみる。南奥只見開発案を前提とすると赤線(B案)でも良さそう。理論的に発電量は変わらな い筈だが,調べていると近そうに思えた赤線の方がやや距離があるし不利か。
やたら導水路が長い西奥只見発電所(中ノ岐川発電所)を保留にするなら(B)案もありかも。奥只見ダムへ到達する距離は明らかに長いのでその分の損失落差 迄計算するとB案の方が有利となるかも知れない。
今はそこら辺無視というか割とアバウトである。



[私案]西奥只見第二発電所or二岐沢発電所((A)の時のみ)
出力:(A) 5,800kW[+5.8MW] / (B) 6,800kW
水量:3.0m3/s
落差:230m/270m
流域:17.8km2
導水:(A)本導水路6.56km・恋ノ岐支水路1.39km 合計7.95km /(B)合計 8.5km
取水;中 ノ岐沢平ヶ 岳先ノ沢ジョ ウ沢恋 ノ岐川1170m
放水:(A)二岐沢[西奥只見発電所] 930m / (B)南奥只見発電所  890m




~桧枝岐川[→伊南川]~
大津岐発電所は山を越えて伊南川流域からも取水している。伊南川は最上流(檜枝岐村村域?)では桧枝岐川と呼び名を変える様だ。

檜枝岐取水ダム(23.3 訪問)→伊南川





舟岐取水ダム[→伊南川

奥只見は檜枝岐(ひのえまた)村(西半分は魚沼市)であった。
奥只見開発が計画された時に,新潟県が強硬に魚沼への導水を主張したのも自分の県のものってこともあったのか(吉野川の高知側への分水仁淀川(面河川)の松山への分水なども同様である。)。新潟が鳩山系,福島が吉田系(東北 電力社長の白洲も吉田系)と色々とっちらかった様である。黒又川の開発に絡んで黒又第四まで計画され奥只見から導水する計画も有ったらしい。最終的には黒 又第二に巨大なダムが建設されて潅漑用水も確保されることで取り止めになったらしい。[wiki]
詳しくはこちら(黒又川開発)の頁参照。アツい!
勿論,発電的にはぐるっと喜多方近く迄回って水を増やしてこまめに大量に発電してった方が良かったのかも知れないが(多分より低い標高までずっと開発され てる),導水も一寸見て見たかった。計画が合理的か否かは奥只見ダムの放流量(発電に用いずにそのまま川に流す量)がどれ位あるかに拠りそうである。

また檜枝岐の読みは「ひのえまた」であるが,大津岐も亦「おおつまた」であった。なる程,この辺では「また」に岐を宛てるらしい。大津岐ダムの取水先の伊 南川の支流舟岐川は「ふなまた」とでも読むのであろう。

もう一寸延ばせそうな感じもしなくもないが,まあ面積狭小,投資効率悪いか。




【奥只見南部開発】    

大津岐が東側を,奥只見西部開発(弊案)が西側を罔羅しているのに対してがら空きの南側を開発してみる。尾瀬が近い ので慎重に行く。
適当に計算したら偶然にも西奥只見PS(当初案)と同量の出力となった。


[私案]南奥只見第一発電所or奥只見川第一発電所or奥只見大白沢発電所
出力:(A)14,900kW[+14.9MW] / (B)18,300kW[+18.3MW]
水量:(A)13.0m3/s( (B)+3.0m3/s=16.0m3/s)
落差:135m
流域:152.3km2(尾瀬沼から片品川への東電の取水あり・年間2万トンという記述は見かけたがm3/sは解らなかった。)
導水:6.4km
取水:只 見川(大白沢出合)[南奥只見第二発電所]・上台倉沢・下台倉沢(+西奥只見第二発電所(B)) 890m
放水:只見川[奥只見ダム]745m

>戦後を迎え、この水利権[とは註:尾瀬ヶ原分水]の一部として、尾瀬沼(尾瀬ヶ原の上流)から片品川(利根川支川)に年間2万トンを分水し て発電することが許可され、昭和24年(1949)に実現した。工事が容易で、工作物は小さく、分水量も少ない。尾瀬沼の水深が3メートルの幅で調節され るが、自然への影響は軽微と判断されたのであろう。また、背景には戦後復興の必要(たとえば電力不足のため停電が珍しくなかった)もあったと推測される。 [便覧

その南側(上流側)でも未だ未だ行ける。この辺は小細工無しですいすいである。

[私案]南奥只見第二発電所or奥只見川第二発電所
出力:13,100kW[+13.1MW]
水量:7.0m3/s
落差;220m
流域:92.2km2
導水:4.9km
取水:只 見川[奥只見第三発電所]・ド ロ沢松 岩沢 1120m
放水:只 見川(大白沢出合)[南奥只見第一発電所] 890m

その下(南・上流側)には滝2連発で高度が取れる。


[私案]南奥只見第三発電所or奥只見川第三発電所
出力:11,200kW~13,100kW[+13.1MW]
水量:6.0m3/s~7.0m3/s
落差;220m
流域:80~90km2程度
導水:km
取水:只見川(尾瀬原) 1344m
放水:只 見川[南奥只見第二発電所] 1120m

落差も水量も変わらないので同じ発電機を2機発注するとコストを下げられる。滝の景観などがあると休日は取水量減らしたりが必要となろう。そんな例が庄川の支流大白川での開発なんかでも実際にある様だ。

以下は尾瀬原に入って行くので開発はなし。以上3連発は川沿いに建設すれば良いので山の中をうねうね導水路這わすよりも効率的な投資になりそう。