電力総研 水力あれこれ(四国) 四国 水力
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20.10.06運開

伊尾木川の発電所(+安芸川)

四国の南側は瀬戸内と打って変わって多雨地帯のイメージであるが,特に那賀川・物部川流域以南が多雨地帯である。この辺は多雨地帯として同じく有名な 紀伊半島南部とよく似ている。律令制下の南海道の括りは伊達ではないのだw

その多雨地帯,和歌山県の中部(?;紀ノ川流域でも南紀でもない辺り)には1箇所だけ大きめのダムが造られ大きめの発電所が設置されてるケースが多い(有田川[二川ダム(多目的)・岩倉発電所]日高川[椿山ダム(多目的)・美山発電所]日置川[殿山ダム(発電)・殿山発電所]・古座川[七川ダム(多目的)・佐田発電所]) が高知県東南部も一寸似てゐる状況ではあるが,こちらは超デカイ奈半利川から極小の西ノ川(吉良川)迄河川毎のバラツキが大きい印象である。そんな中で伊 尾木川は和歌山県と似た感じである。とは云え水量は大したことなく発電規模もそこそこ。放水位も低く(EL20m)て下流での電源開発は無理そうって感じ ではある。

上流の余地を探るのがメインになりそう,,

現状 地域の概況 電源開発 結果 安芸川

現状    

伊尾木川(いおきがわ)ダム[水力
四国電力(株)
目的:発電
堤高:22.8m、堤頂長:57m
総貯水容量:88.7万m3    有効貯水容量:32.7万m3
着手/竣工:1952/1954
流域面積:86.1km2    湛水面積: 11ha
湖面標高:162m下で調べたように実際は170m超っぽい

湛水面積11haもあって堤高22.8mもあって32.7万の有効貯水量はちと少ないが,この場合のダムは水量と云うより高さを稼ぐ役割を果たしているよ うだ。
総貯水量88.7万m3の半分以上は死容量となっている訳だし。とは云え計算してみると13時間近くは持つ計算に。スコール貯めといて次の日迄に需要に追 从して使うと云う運用ぐらいは出来そうだ。


伊尾木川発電所[水力
四国電力(株)
運開:1954.3
ダム水路式・調整池式(約13時間)
認可最大出力:7,700kW 常時出力:320kW
最大使用水量:7.00m3/s (81%)

有効落差:129.00m
導水路:総延長10121.1m
取水:伊尾木川[伊尾木川ダム]166.80m
放水:伊尾木川20.09m

さて近隣の水系から取水すると64.5km2は増やせる。江川川の二支流は導水路に接続するのが良さそうで,秋川本流とその3支流は伊尾木川ダムへ導水す ると良さそう。

これだけで少なくとも5m3/s程は稼げそう。


先ずは導水で水量を増強するとこんな感じである。

[増強私案]伊尾木川発電所
認可最大出力:7,700kW→13.2kW[+5.5MW] 
最大使用水量:7.00m3/s (81%)→12m3/s
有効落差:129.00m
導水路:総延長10121.1m+畑山線5.8km他
取水:伊尾木川[伊尾木川ダム]166.80m
放水:伊尾木川20.09m

畑山・張川の面積が結構広いので伊尾木川ダムも容量増やしたい感じにはなる。
取水位がEL166.8m(地理院の湖面標高は162mしかない)なので増やしてみた。170mで取ってみると6.8haとなる。なんと,もうこのくらい は貯留してるんだな。

EL180mだと19.6haとなって県道も一部水没するのでこの間(上の図と下の図の170~180mの間)に実際の満水位はあるようだ。

ダムを出た所の川面標高が163m程なので堤高22mだと180m位迄は貯められそう。5mで8ha増やすと倍増できるんちゃうか。
県道の嵩上げなんかやって一寸ばかし増強できないだろうか?

地域の概況  
地図

出典:四 国電力


雨量
多くの部分は2500mm以上,最上流部は3000mmに達している様だ
出典:四 国電力


電源開発   

今,大きく開発されたのは電発が開発した奈半利川の魚梁瀬ダム(堤高115m・流域面積117.1km2[含む間接]・湛水面積291ha・有効貯水量 7,250.0万m3280.0万m3・最大供給水量50m3/s・最大認可出力36.0MW・常時出力4.2MWで対応する水量は推定5.83m3/s 程度)位である。この水量と貯留量の関係はフル稼働で402h(16日と9時間ちょい)持つ量である。
まあこれが多いか少ないかは兎も角,夏の間はフル稼働して秋の間かけて貯めておいて冬の間ちびちびち尖頭発電すると一年を通じて活躍出来る感じであろう か?一日4時間なら100日持つからな。12~3月はそんな感じで運用している内に春になりそう。

こんなやつが後,一つ二つ欲しい訳だがこの地域の川の内,第一候補が伊尾木川ではなかろうか?

現在は伊尾木川ダム(堤高22.8m[19.8%]・流域面積86.1km2[73.5%]・湛水面積11ha[3.8%]・有効貯水量32.0万m3 [0.44%]・最大供給水量7.0m3/s[14%]・最大認可出力7.7MW[21.4%]・常時出力0.32MW[7.62%]で対応する水量は推 定0.3m3/s程度)位である。この水量と貯留量の関係はフル稼働で12.7h持つ量である。[]内は魚梁瀬ダムに対する比率。

有効貯水量が極端に少ないことがよく判る。堤高(ダムの高さ)も湛水面積(ダム湖の広さ)も小さいのが有効貯水量の少なさにもろに反映されてる感じがあ る。

さて。上流に魚梁瀬ほどではないにせよダムの建設を検討してみよう。

伊尾木川沿いは上流迄延々と廃村らしい。r207大久保伊尾木線の終点から先は林道が駒背峠を越えて居るようだ(林道東 川千本谷線[舗装されてて走りやすいとのこと])。山の向こうは那賀川である。

この無人の豪雨地帯に電源開発するのは日本の次世代型エネルギー構造の為には意義深いものがある。

伊田淵聚落の立ち退きが必要になるが,EL=246mに堤高60m[52%/263%]程のダムを建設(満水位EL300m)。48ha[16.5% /436%]となる(貯留量 の推定は未開発。。)[対魚梁瀬/対伊尾木川]。まあ魚梁瀬に較べれば余りデカくはないが伊尾木川ダムよりはそこそこデカいだろう。

[私案]伊田淵ダム
立地http://maps.gsi.go.jp/#17/33.640285/134.009804/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1
平面図

魚梁瀬との大小比較


流域:55.1km2 [47%]

[私案]新伊尾木川発電所
出力:5,900kW[+5.9MW]
水量:5.5m3/s
落差:130m

まあまあである。

あとはどの程度の貯留量を期待出来るか比較してみる。



比較検討



堤高
湛水面積
貯留量
流域
水量
発電所
出力
時間容量
その他
[私案]伊田淵ダム P
伊尾木川
60m
48ha
450万m3?
55.1km2
5.5m3/s
[案]新伊尾木川
5.9MW
227.3h(9日と11時間半)程度??

伊尾木川ダム
P

22.8m
11ha
32.7万m3
86.1km2
7.0m3/s
伊尾木川 7.7MW
12.7h(半日とちょい)

松尾川ダム P
松尾川 67m 59ha 1,260万m3 103.7km2 6.3m3/s 松一・松二
42.2MW
555h

魚梁瀬ダム
P
奈半利川
115m
291ha
7,250.0万m3
117.1km2
50m3/s
魚梁瀬
36.0MW
402h(16日と9時間ちょい)

久木ダム
P

28m
29ha
134.0万m3
146.3km2
45.0m3/s
二又
72.1MW


平鍋ダム
P

38m
35ha
98.0万m3
233km2
40.0m3/s
長山
37.0MW


殿 山ダム
P
日置川
64.5m
137ha
2,544.6万m3
294km2
26.0m3/s
殿山
15.0MW
271h

七 川ダム
FP
古座川
58.5m
179ha
2,540.0万m3※
102km2
16.0m3/s
佐田
7.2MW
441h
※:洪水対策容量含んでいる可能性あり(360万m3程?)
二川ダム
FP
有田川
 67.4m
86ha
1,670.0万m3※
228.8km2
15.0m3/s 岩倉
11.0MW
309h
※:発電容量


魚梁瀬ダムと久木ダムの最大使用水量ってのが流域に対してデカすぎてちょっと参考にならない感じ。。そもそも流域も狭いからこそ安田川からも導水している のであろうし比較するなら松尾川辺りとかも。
流域相当の12.0m3/s程度だとすると1,678h=約70日もつ。

一方我らが伊田淵ダムの弱点は同じ様な堤高60m内外のダムに対して湛水面積が小さい事である。松尾川は此処でも優秀だが。


別案を検討してみる

175m・古井付近に満水位250mでダム。堤高80m。湛水面積72.1ha。

古井ダム[場 所

これなら2,000万m3程期待出来そう。
導水も4.7km程で西 ノ川張 川政 藤川で行ける(安芸川本流筋の畑山川は低い)。これで89.2km2


流域面積に関係なく貯水量を活かして15m3/s程水源開発出来るかな?
この場合併せて下の伊尾木川発電所も15m3/s程に出来そう。

新伊尾木川発電所 落差80m 水量15m3/s 10.0MW

伊尾木川発電所 水量15m3/s 16.0MW


更にダムに流し込むもっと上での取水を考える

そりゃもう別役実ファンとしては別役(べっちゃく)ダムでしょう。

ここ別役EL353mに堤高60m程のダムを建設して満水位400mを確保。27.6haである。

一寸小さいかな。。
こ の辺EL349は標高あんま変わらないけど一寸下がるのでダムをそれ程大きくせず(想定堤高65m程)湛水面積は増やせそうである。堤頂は 120m程になるか。
湛水面積は40.5haに拡がった。此処だと影野ダム・別役湖って感じかなあ。。1000万m3とか水量とれへんやろか。

この辺だと流域面積は35.4km2ってとこ。
水量3.5m3/sとして落差150mとすると4,300kW。
ダムあるしざーっと雨は降るし7m3/s程にしておくと8,600kWとなる。

他のダムと比較して貯留量を類推してみる。

比較検討



堤高
湛水面積
貯留量
流域
水量
発電所
出力
時間容量
その他
[私案]別役ダム
P
伊尾木川
65m
40.5ha
800万m3?
35.4km2
7.0m3/s
伊田淵
8.6MW

+8.6MW
[私案]古井ダム
P

80m
72.1ha 2,000万m3?
89.2km2[含間]
15.0m3/s
古井
10.0MW

+10.0MW
伊尾木川ダム
P

22.8m
11ha
32.7万m3
86.1km2
22.0m3/s[案] 伊尾木川 24.0MW
6.3h
+16.3MW
松尾川ダム P
松尾川 67m 59ha 1,260万m3 103.7km2[含間] 6.3m3/s 松一・松二
42.2MW
555h

永瀬ダム FNP
物部川
87m
208ha 4,147.0万m3 295.2km2 30.0m3/s 永瀬 22.8MW

吉野ダム
P

26.9m 32ha
47.4万m3
343.4km2
37.0m3/s
吉野
4.9MW


杉田(すいた)ダム
P

44m
94ha
573.2万m3
343.4km2
40.00m3/s
杉田
11.5kW


小見野々(こみのの)ダム
P
那賀川
62.5m
89ha
1,142.0万m3
270.8km2[含間] 60.58m3/s
蔭平
46.65MW

混合揚水
長安口ダム
FNP

85.5m 224ha
4,349.7万m3
→3,680.0万m3
538.9km2[含間] 60.0m3/s
日野谷
62.0MW


川口ダム
P

30m
87ha
95.0万m3
656.7km2[含間] 70.0m3/s
川口
11.7MW


魚梁瀬(やなせ)ダム
P
奈半 利川
115m
291ha
7,250.0万m3
117.1km2[含間] 50m3/s
魚梁瀬
36.0MW
402h

久木ダム
P

28m
29ha
134.0万m3
146.3km2
45.0m3/s
二又
72.1MW


平鍋ダム
P

38m
35ha
98.0万m3
233km2
40.0m3/s
長山
37.0MW


殿 山ダム
P
日置川
64.5m
137ha
2,544.6万m3
294km2
26.0m3/s
殿山
15.0MW
271h

七 川ダム
FP
古座川
58.5m
179ha
2,540.0万m3※
102km2
16.0m3/s
佐田
7.2MW
441h
※:洪水対策容量含んでいる可能性あり(360万m3程?)
二川ダム
FP
有田川
 67.4m
86ha
1,670.0万m3※
228.8km2
15.0m3/s 岩倉
11.0MW
309h
※:発電容量

那賀川も奈半利川も物部川もダム発電三連発で一寸似てるが,別役と古井が出来るとこっちも規模(流域面積)こそ小さいけど比肩しうる体制となるぞww
2番目が一番大きくて一番下が一番小さい那賀川タイプとなる。

以上で計34.9MWの新規開発か。まあまあだな。

なお伊尾木川発電所で発電後,放水路で下流に少し運んで落差を稼いで居るが,安芸川から取水する場合,安芸川方面にも放水路を延ばした方が良いのかも知れ ない。


以下ダムを造らず流込で対応の別案(廃案)

伊尾木川

スドウ380m
http://maps.gsi.go.jp/#16/33.676283/134.005373/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1

横荒川茗荷380m
http://maps.gsi.go.jp/#16/33.658228/134.036121/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1

上部水槽381m
http://maps.gsi.go.jp/#16/33.603539/133.984258/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1

集水面積:35.8km2。伊尾木ダムの集 水面積に対する伊尾木発電所の最大使用水量の比率を援用すると2.9m3/s。


放水:165m
http://maps.gsi.go.jp/#16/33.605988/133.980203/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1

有効落差:210
導水路延長:11.9km


[試案]奥伊尾木発電所  
最大出力:5,000kW[+5.0MW]
最大使用水量:2.9m3/s
有効落差:210m
導水路延長:11.9km (0.42)

なんかこの作業にも熟練してきたぞw
まあこのくらいの設備投資で5MW,いい感 じだ。