電 力総研TOP 水力発電あれこれ
とはずがたりな掲示板(電 力スレ利 水スレ)
2022.1.10加筆
2021.6.4作成

設楽ダム・寒狭(かんさ)川・豊川水系の発電(22.1訪問)

0.概要(→別項)豊川水系の取水降水量]   1.設楽ダム・寒狭川( 長 篠発電所堰堤]横川発電所寒狭川頭 首工・導水路横川 堰堤布里発電所布里堰堤増強案(+10.9MW)】・設楽ダ ム=建設中 )  2.豊川用水(大入頭首工・振草頭首工・宇連ダム・大野頭首工) 3.豊川

豊川水系に於ける主な取水    
豊川にも発電所があるらしいと宇連ダム以下大野頭首工迄必死に調べていても堰堤と 発電所でてこーへんやん,と思ってよく見たらそちらは宇連川で豊川とは別河川(支流)であった。更に宇連川と分 流後の本流は本来寒狭川と書き,かんさがわと訓(よ)むらしい。なるほどねえ。
飛騨川と益田川みたいな関係か。ここはちゃんと寒狭川を呼んであげよう。
頁を分けて見ていく。
出典:国 交省

沿川降雨量     
概ね2,000~2,400mm/年で設楽ダムが集水予定の深山部では2,400mm~が拡がると云う形の降雨量の様である。設楽ダムの完成が 望まれるところである。
支流の巴川という名が気になるが,巴川源流には巴山があり,作手地区を裂く形で矢作川側へ流れる川こそが小規模ながら発電所も複数設置されている巴川である。
[出典:中 部地方整備局(pdf)


~沿川風景~

[鋭意建設中]設楽ダム

豊鉄田口線の旧線敷を利用した道路を利用出来たのであるが奥地は設楽ダム建設に伴い通行禁止になってしまった。残念だ。

布里(ふり)発電所は布里の聚落の外れにある堰堤で取水して川の迂回を使った高低差で発電している。
布里は山の中の聚落とは云えそれなりに開けた盆地にあって,新城から直通の県道が指定されている。現状分断県道であるが,なかなか香ばし い様子[tw]であった。
田 口鉄道(豊鉄田口線)[tw]は鳳来寺山への連絡を重視し,その後海老川を玖老勢(くろぜ)・海老と遡って長大な稲目トンネルで豊川筋に転線する のであるが,豊川沿いに遡ればこの聚落にも駅が出来て車庫などがあった三河海老駅に代わって拠点駅になってたかもしれない。
現代に於いては国道257・420号線の重複区間が布里を通り,海老川沿いは県道となっている。地位は逆転したと云う程ではないかもしれないが差はなく なってきている感じはある。

布里堰堤[場 所(gsi)][場 所(ggl)][DB]     
取水位:113.71m
取水量:4.8m3/s
流域面積:251.4km2
堤高:2.70-7.20m

遠景:がらんとした場所ではある。殆ど堤高のない堰堤で水を堰き止めている。もう一寸高くして調整池を設置して水量も20m3/s位にしても良さそうであ る。


布里発電所。4.8m3/sとそこそこの水量で発電しているが,251.4km2に対して4.8m3/sとその比 率は2割を切る少なさである。また有効落差も20m余と小さい。結果820kW程度のしょぼさである。
常時出力も結構高く(最大比75%),水を全く使い切れていない。
例えば近年の流れから見て20m3/s程度は取水して出水に備えることは出来そうである。ただ5倍にしても4.0MW程度でその増強量は3.2MW程度に 止まる。

中部電力(株) 布里(ふり)発電所[水力]       
所在地:愛知県新城市布里
運開:1919.8[ 不明]
水路式・流込式
認可最大出力:820kW     常時出力:620kW[75.6%]
    最大使用水量:4.80m3/s [0.19]→5倍位の規模にしたい。5倍で5.0MW級になる。
    有効落差:20.79m
    水車: 出力850kW×1台
    導水路:総 延長537.1m
    流域面積:251.4km2
    取水:豊川[布里堰堤]113.71m
    放水:豊川[横川発電所取水口92.30]92.40m

木の向こう側の下手な写真で恐縮ですが,まあこんな雰囲気。


有効落差約20mである。寒狭川の発電所は現行3箇所あるがいずれも20m程度,800kW程度の小規模である。
寒狭川頭首工の取水量は最大15m3/sもある。布里発電所の使用水量も4倍程度に増やして発電量も4倍程度いけるんのではないか。
設楽ダムで平準化された水は主に夏期を中心とした農繁期に集中して投入されることになろうかとは思うが,水力発電側でもカネを出して一年を通じてこのくら いの水量を利用するに効率性を確保出来る程度の対処は欲しい。

増強・新設案    

布里堰堤に向けて発電したい。
当初案ではEL.200m程を東 栃沢川(雁峰林道沿)西 栃沢川(r438沿)巴 川(作手大和田)島 田川を8.3kmかけて 流域面積:71.4km2確保してもまあ水量は6.0m3/s程度。
布里堰堤では落差も85m程度で出力が4.2MWしか取れない。これじゃあいかんら。。

地図を睨むと巴川と島田川に大きく水源は分かれている。巴川は本流だけあって削れてて標高が低そうである。
また布里発電所の使用水量が余りに低いので布里をスルーする形で下流で発電しても良さそう。
その辺を睨んで再調査してみた。


結果的に寒狭川頭首工など直送は距離が伸びてしまうので布里堰堤へ持って行く。
EL.285mの巴 川[堰堤]支 流支 流で取水して36.5km2。Q=3.5m3/s,H=170mで発電して5,000kW。L=7.7km。

[私案]本宮山発電所
出力:6,300kW[+6.3MW]
水量:4.5m3/s[1.23]
落差:165m
流域:36.5km2
導水:7.7km
取水:巴 川[堰堤]支 流支 流 285m
放水:寒狭川(豊川)[布里堰堤]113m

まあ実は当初案でも面積に対する水量比の係数を1.23でとると8.8m3/s程度になって,6.300kW出るんだけど,高い係数は落差が欲しくてこっ ちの方が落差が一寸高めな上に,導水距離も短く取れるという点で効率的である。

併せて布里発電所も増強したい。現行布里の分で下流の横川発電所の水量は賄えるので一気に寒狭川頭首工迄送ると纏まった形になる。

[増強案]新布里発電所
水路式・流込式
最大認可出力:4,600kW[+4.6MW]  常時出力:0kW
最大使用水量:20.0m3/s
有効落差:27.0m
流域面積:251.4km2
取水:豊川[布里堰堤(本宮山発電所(案)4.5m3/s)]113.71m
放水:豊川[寒狭川頭首工15.0m3/s]83.3m

問題点があるとしたら,お隣の遠州育ちなのでよく解るが渇水の著しい冬期[→豊川もこんな感じ]に水が確保出来 ないだろうなという点で,寒狭川頭首工も取水はしていないようであるので其処へ持って行く必要もない上に,布里・横川への水量が恰度良い位になりそうで開 店休業を強いられそうと云う点である。
布里堰堤ちょっとだけでも強化したり,完成する設楽ダムの不特定利水(あれば)を利用したりしたい所である。


横川発電所取水堰[場 所]    
取水量:4.452m3/s (160立尺)
取水位:92.30m
流域:254.5km2
取水:豊川[布里発電所放水口]92.40m
送水:横川発電所





寒狭川頭首工・寒狭川導水路

寒狭川頭首工は鳳来町玖老勢(くろぜ)の豊川上流・寒狭川(豊川)と支流海老川の合流点下流約250m(河口から約43km)の所に位置する豊川用水の施 設であり,最大15m3/sを寒狭川から取水して豊川用水の取水をする大野頭首工 約1.2km上流の宇連川に導水している。
大野頭首工では30m3/sであるが,宇連川上流の宇連ダムは水量が足りず天竜川水系の大千瀬川・大入川より導水し,足りない時期には佐久間ダムより導水 するが,更に大島ダムを建設,それでも水量が足りず現在本流に設楽ダムを建設中という訳である。東三河の農業用水需用の旺盛さを物語るものであろう。本流 の水流が安定化させられると農業用水の安定化のみならず,布里発電所の発電量の安定化,更には佐久間導水(最大14m3/s!)の導水量の節約が佐久間発 電所・佐久間第二発電所・秋葉発電所・船明発電所の発電量の増加にも寄与出来そうで楽しみである。
中 部地方整備局
堤高4mに満たない小さな頭首工っぽい堰堤だけどちゃんと貯留量が設定されてて6.4万m3だそうな。 15m3/sで取水したら1時間11分で空になる量だから知れてるけど。。

寒狭川堰の概要
河川 豊川水系豊川(寒狭川)
堰 位置:愛知県新城市 形式:可動堰 堤高/堤長:3.9m/58.0m
貯水池 集水面積:300.0km2 湛水面積:0.048km2(4.8ha) 総貯水量:8.8万m3 有効貯水量:6.4万m3 常時満水位: EL.83.30m 最低水位:EL.81.00m 計画高水位:EL.91.20m

寒狭側導水路の概要
河川 豊川水系豊川(寒狭川)・豊川水系宇連川
導水路 位置:愛知県新城市 形式:開水路トンネル 水路断面:2R標準馬蹄形(R=1.60m) 計画最大通水量:Q=15.0m3/s(内 1.3m3/sを不特定補給) 導水路長:5,315m 水路勾配:I=1/1,200
[中 部地方整備局]

寒秋川頭首工[豊川用水][愛知県
事業主体:水資源機構
目的:水道用水・農業用水・治水(愛知県) 潅漑・水道及び工業用水(利水標) 
取水量:最大15m3/s
竣工:2002年 完成?1997年
堤高:3.9m 常時満水位:83.3m 最低水位:81.0m 計画高水位:91.2m
有効貯水容量:6.4万m3
放水先:宇連川[大野頭首工直上]

利水標


頭首工近景  
水門付近




頭首工遠景

農閑期の冬の訪問だったせいかゲートは全開で取水してる様子は無かった。農閑期は取水してないらしい。
この日,直ぐ下流の横川発電所の稼働の有無は確認出来なかったが,更にその下の長 篠発電所への水路はフルで流れている様子だった。
横川発電所もフルで4.45m3/s使用してたのであろう。4~5m3/s取水するだけで瀬切れ寸前のからからぶりである。

寒狭川頭首工の計画高水位は91.2mとのこと[ソース]。計画高水位(けいかくこうずいい)とは「川の堤防 工事などの基準で,その堤防が耐えられる最高の水位」だそうな[ソー ス]。
詰まり,余裕を持って運用する事は必要だからマージン無しの高水位で運用するのは非現実的としてもその辺迄は耐えれるとして,この水位は布里発電所の放水 位92.4m[ソース]及び横川発電所の取水位92.3m[ソー ス]に匹敵する。
頭首工を増強してこの場所で92.3mで取水出来る様にしても良さそうである。まあ主な効能の調整池化・横川・長篠の調整力電源化ではあるが併せて 1.6MW程度と僅少ではあるけど。

建設省長楽水位観測所
看板には未だ建設省と明記されていた。当日は川を遡ったがこの手前付近から寒狭川頭首工が見えてきた。


横川発電所。長篠同様,有効落差20m内外の小規模な発電所である。下流の長篠PSの10年程後からの運開となる(上流の布里PSよりも遅く)が規模的には大差ない一方で,看板一 つ立って無くて産業遺産的に全く評価されてない様子。
1912年(大正元年/明治45年)と1922(大正11年)の差はでかいか。。前者はもしかすると明治,こちらはもう数年で昭和である。

中部電力(株) 横川発電所[水力]     
所 在地:愛知県新城市横川
運開:1922.2[不明]
水路式・流込式
    認可最大出力:810kW    常時出力:680kW
    最大使用水量:4.45m3/s
    有効落差:22.64m
    水車: 出力847kW×1台
    導水路:総 延長2933.8m
    取水:豊川[横川発電所取水堰・布里発電所放水口(4.8m3/s)]92.30m
    放水:豊川[長篠発電所取水堰]67.45m

発電所入り口は古そうなトラス橋(寒狭橋と云うらしい)の脇にあった。無事に帰ってねの看板を見て息子がユーチューブでみたことある!と声を上げた。この 先行き止まりの看板はあるが発電所を匂わすものは何もなかった。



発電所建屋

この写真右脇の通路を行くと鉄管があった。
恰度のタイミングで立入禁止の放送が流れたりしたので監視カメラなりなんかのセンサーなりあって監視しているのかも。皆さんもくれぐれも立入禁止区画には 立ち入らないように願います。

ここも有効落差は20m余の大したことない規模である。

寒狭川最下流にあるのが長篠発電所である。高低差は小さく750kW(0.75MW)しかない弱小発電 所である。
(恐らく)農繁期には15m3/sも寒狭川導水路で取水された残りで発電を強いられるのでこれ以上の増強も望むべくもない。
しかし歴史的に価値ある発電所のようである。取水堰は妙に新しかったが1983年に改良との事。

長篠堰堤(長篠発電所取水堰堤)[場 所][説明板]=土木学会選奨土木遺産    
取水:豊川[横川発電所放水口]67.06m
送水:取水:豊川[長篠発電所取水口]67.45m
堤高:8.18m
越流水路長:145.5m
流域面積:305.4km2

画面奥に見える橋が寒狭橋でその直ぐ上流に横川発電所がある。

長篠堰堤説明板


さっと見て残念ながら利水標は無いと思ってたけどなんと上の写真だと対岸,国道沿いに設置してあった。
22.8
アップ

崖下の取水施設を望む


中部電力(株) 長篠発電所[水力] [現地看板][中 電]      
所 在地:愛知県新城市横川
運開:1912.3[豊橋電氣(株)]・増設:1914.5(2号機)・1947:雷により発電所全焼・1983:水路改良・1998年:33kVから 6.6kVに降圧(鳳来変電所配電連系)・近年?:出力増強800kW
水路式・流込式
認可最大出力:800kW  (嘗ては750kW)   常時出力:690kW(そのまま?) 時期は不明だが増強されたようだ
 最大使用水量:5.565m3/s (毎秒200立尺)
有効落差:19.70m
水車:水車×2台 総出力1342kW
    導水路:総延長784.7m
    流域面積:305.4平方キロメートル
    取水:豊川[長篠堰堤(横川発電所直下)]67.06m
    放水:豊川45.39m
22.1
有効落差20m弱で派手な水圧鉄管なども見当たらなかった。

水槽手前の水路と水槽付近?:




さて,未だ山の中だしもう一,二回は発電をと思って標高を見るともうEL.45mしかない。意外に低い。


~豊川~       
(寒 秋川・宇連川合流・ 地理院39m)

更に下流で堰を造って導水距離へらしつつ,より下流に持って行きたいが,長篠PSの放水位45mで水を貯めるに一番下流を探すと,結構豊川が削った谷が深 いのでこ の辺(EL.27m)まで行けそう。
 5.8km程度で牟呂松原頭首工になる。19m。落差20m取れて水量も8m3/s以上取れるとしても2000kWちょい。まあ厳しいかな ~。。

牟呂松原頭首工[豊川用水]
取水量:8m3/s


豊川市上水道


(豊川放水路分流)


三菱レーヨン


豊橋市上水道


(河口)