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20.10.09運開

蓮ダムと櫛田川(21.7.27上流逍遙)

蓮ダムが目に止まった。早速開発だ。どうやら「はちす」と訓(よ)むらしい。

A.概要(雨量図歴史取水位 置)    0.青田発電所 1.蓮発電所と蓮ダム 2. 櫛田 川からの導水と増強 3.宮前発電所他 4.下流域
~沿川~
櫛田川:(源流)─【蓮ダ ム導水】─(蓮川:【上流部開発】青田川(青田発電所)──蓮ダム蓮発電所──)─宮前発電所──波多瀬発電 所──下出江発電所──


雨量図
出典:櫛 田川河川維持計画(国交省)

櫛田川氾濫の歴史
郡境をめぐり古代は紛糾も-氾濫繰り返した櫛田川
三 重県
 もともとの櫛田川の本流は現在の祓川筋であり、平安時代の初めには「多気川」と称して、飯野郡と多気郡の郡境をなしていた。しかし、承和14年 (847)多気川は大氾濫を起こし、北西方向に約4㎞、すなわち飯野郡内へと、その流れを移動してしまったのである。それが現在の櫛田川とされている。
 郡境であった河川の移動は、早速、大きな問題を引き起こした。
 いまだ律令制下にあった当時は「班田収授法」と言って、6年に1度、農民に口分田を班給することを原則としていた。班田の作業は各国衙が主体となって実 施されたが、実務は、各郡の行政官である郡司に任されていた。
 多気川が氾濫した2年後の嘉祥2年(849)に実施された班田で、多気郡司は、郡境であった川の移動は郡境そのものの移動であるとして、現在の櫛田川と 祓川に挟まれた、本来飯野郡内である田を勝手に多気郡の農民に班給してしまったのである。
 もちろん、多気郡司が主張するような郡境の移動はありえず、飯野郡司と、この周辺に荘園があった東寺からも、猛烈に抗議されている。この事態は、当時飯 野郡が伊勢国司の管轄であったのに対し、多気郡は神郡として伊勢神宮の管理下にあったことから発生したものと考えられている。…

(県史編さんグループ 小林 秀)

主な取水位置
出典:中 部地方整備局


~櫛田川~

源流
支流の蓮川にダムが建設されたが本流は特になしである。
蓮ダムに水を寄せたい。

櫛田川から蓮ダムへの導水   

先ずは水量増強の為に導水検討
この辺の年間降水量を先ずは確認。こ の資料だと2,400mm以上に含まれ半分ぐらいは2,600mm以上に覆われる感じ
80km2で9.0m3/sといのは勿論2840万m3の貯水池もあるがこの雨量の恵もあるに違いない。

櫛田川から310m程度で導水。
この辺(306m)…堰を造って嵩上げ。まあまあ近い4.6km
流域面積は結構広めの34.2km2。2,400mm 以上ではありそうなので2.7m3/s程度は期待できそう。


若しくは青田発電所の下部,蓮ダムまでの僅かな落差を使って発電する時のサポート役に面積は減ってしまうがEL.365m程度 での取水。L=3.8km22.8km2

更に1km伸ばすと太 良木川に至り4.98km2。合計L=4.8km27.8km2
 


~蓮川~


~青田川~

調べてみると蓮ダムの上流に青田発電所が超落差で発電している。

中部電力(株) 青田発電所[水力] [現 地看板]
所在地:三重県松阪市飯高町青田
運開:1995.10[三重県企業庁] ・譲渡:2015.4
水路式・流込式
認可最大出力:2,800kW      常時出力:360kW[12.8%]
最大使用水量:1.50m3/s (1,27) →あちこち見た後だと小さい。。(→ 参考)
有効落差:224.30m
水車:ペルトン・出力2920kW(定格2800kW)×1台
   導水路(青田川→菅谷川):延長433.675m
   導水路(菅谷川堰堤内水路):延長44.300m
   導水路(菅谷川→上部水槽):延長2512.199m
   導水路:総延長2481.2m(水力発電所データベース)
   取水位標高:599.30m(上部水槽水位)
 流域面積:11.8km2
    取水:木 屋谷川[青田川取水堰堤]600m(地図597m)→菅 谷川[菅谷川取水堰堤]599m(地図595m)
    放水:青 田川(木屋谷川)359.96m

青田発電所は蓮ダム建設後に三重県によって開発された発電所である。

三重県企業庁の発電用資産は行政のスリム化のお題目の下で中電に順次譲り渡されることになった(2011.8.2NL) が,青田発電所に関してはその後の2011.9襲来の台風12号によって導水路などが破潰されて譲渡時期がずれ込んだ様だ(2012.7.12NL)。
譲渡時期は2015.4なので勿論既にとっくに中電のものに成ってるけど現地には未だ三重県・青田発電所という石碑が鎮座していた。(当日のtwitter でのレポはこちら)

発電所建屋の周りはベンチなど置いてあって公園みたいになっていて公営発電所の雰囲気を残していた。旧一電の無愛想な発電所(勿論そっちの方が好きw)と は明らかに雰囲気が違う。

水圧鉄管の様子。多分細い方が余水管。

放 水口から水は出てないようで運転はしてない様であった。

鳥瞰図・諸元


増強案。4.18km延長して,里川()・ヌ タハラ谷千 石谷から取水して7.1km2である。
6.9km2(木梶川)
合計して11.8+7.1+7.0=25.9km2となる。4.0m3/s程度行けそう。


[増強案]青田発電所
出力:7,500kW[+4.7MW]
水量:4.0m3/s[+2.5m3/s][1.54]
落差:224.30m
流域:25.9km2
導水:
取水:里川()・ヌ タハラ谷千 石谷木 梶川木 屋谷川[青田川取水堰堤]菅 谷川[菅谷川取水堰堤]
放水:青田川360m



櫛田川・蓮導水で得た27.8km2と青 田拡張で得た蓮川7.1km2を もともとの青田川流域22.3km2に 加えた57.2km2を50m程下げてみる。

[私案]新青田発電所
出力:2,300kW[+2.3MW]
水量:6.0m3/s
落差:45m
導水:2.24km
取水:青田川[青田発電所・櫛田蓮導水]・沢・沢360m
放水:310m

蓮川からの導水する場合は3.6km程同水路を建設して江馬木屋川の下流に堰堤かな。でもこちらは発電に使うのでとりま不要である。



【蓮川源流部開発】



[私案]奥蓮発電所
出力:5,600kW[+5.6MW]
水量:2.2m3/s[1.54]
落差:300m
流域:14.25km2
導水:7.9km
取水:奥 ノ平谷宮 ノ谷(高滝)風 折滝沢ノ エ股沢・五ヶ所滝(前 沢沢 1沢 2沢 3)・魔 の谷620m
放水:蓮川[蓮ダム]310m


[私案]新青田発電所
出力:2,100kW  2,800kW
水量:6.0m3/s  8.0m3/s
落差:41m
流域:
本導水路:2,2km・(櫛田川 3.8km)
取水:青 田川[青田発電所]蓮 川[堰堤337m]360m
放水:315m

とりま保留。








1.蓮ダム   
ダム湖の様子。最奥部のその向こう川は奈良県の川上村中奥・瀬戸である。惜しむらくは車道では繋がっていない。こちら (三重 県)側は結 構奥迄県道蓮峡線(r569)が入り込んでいるんだけど。大台ヶ原とは逆のパターンである。


蓮(はちす)ダム[水力] [便覧
国土交通省中部地方整備局
水系:櫛田川水系蓮川
目的:洪水・不特定利水・上水道・発電
着手/竣工:1971/1991
堤高:78m、堤頂長:280m(内、越流部52.5m)
総貯水容量:3,260.0万m3
有効貯水容量:2,940.0万m3
   洪水調節容量:1,700.0万m3(有効貯水容量の内、洪水期)
  利水容量:2,840.0万m3(有効貯水容量の内)   
標高
   堤頂標高:319m
     洪水時満水位標高:317m(サーチャージ)
   常時満水位標高:316m→取水標高
   洪水期制限水位標高:299m
    最低水位標高:276m
    減勢工堤頂標高:263m
    副ダム頂標高:253m
    減勢工床標高:244m
    基礎標高:241m
  国土地理院図湖面:308~309m
面積
    流域面積:80.9 km2
    湛水面積: 120ha



堤頂が319mで洪水時満水位317mってめっちゃ余裕なくない??→洪水期は299m迄落とすと書いてある様である。

目的にややこしい潅漑が這入っていない。これは行けるw(→と当時の現地の私は想った訳だが不特定利水って要するに慣行水利権の潅漑向けにも流量を安定さ せる役目がある。)


2.蓮発電所

蓮発電所[水力
中部電力(株)
運開:1990.4[三重県企業庁~2014.3]
ダム式・貯水池式
認可最大出力:4,800kW  常時出力:0kW
最大使用水量:9.00m3/s[1.11]
有効落差:67.40m  常時有効落差:50.15m
水車:2台 総出力5100kW(定格4800kW)
        1号機3400kW、2号機1700kW
取水:蓮川[蓮ダム]316.0m
放水:蓮川245.45m

ダムと発電所

減勢工?副ダム?逆調整池?

このたっぷり水量はこの後使われずしばし放流されるのみ。使ってやらねばならない。

諸元。常時有効落差は洪水期満水位に対応しているようだ。

水路断面図拡大




この2.7m3/sを使って最大値を2.7上げて11.7m3/sにして出力も6.0MWに1.2MW上げられるが,寧ろ常時を2.7m3/sにしつつ, 発電時間帯を増やす方向に行きたい。+2.7m3/s程度で配管やら水車やら発電機やら全て増強するのは多分投資効率悪い。
そしてピーク増強対応は此処から下流に造るダムとの合算で達成したいところ。


[増強私案]櫛田飯高発電所
認可最大出力:7,200kW[+7.2MW]
最大使用水量:10.50m3/s (蓮発電所9m3/s・唐谷・中の谷・名倉谷・奥川1.5m3/s)
有効落差:83.45m
導水:12km
取水:蓮川[蓮発電所]245.45m
放水:櫛田川[赤桶(あこう)ダム]158m

蓮発電所で単独で発電するよりも同じ水量で2.3倍(蓮4.8+櫛田6.2[蓮分の水量での発電分])の発電が出来ると云う事は発電量当たりの水量を減ら せると云う事で

3.宮前発電所    

下流はと見ると宮前発電所がある。赤桶ダム156.21mと蓮発電所放水位245.45mの間に100m近い未利用落差あり。また水量も少ない。。

赤桶ダム[『県別マップル24三重県』2011年版・場 所
取水堰

取水設備は国道とは反対側にある。

橋を渡って向かうも一寸迷った(廃保育園は発見した。人口減少厳しそうである)ので,ちゃんとナビを見て辿り着いた取水設備へのアクセスルートはなんと水 路の上だった!
相変わらずの白飛び失敬。どうも光の感度を上げすぎているようだ。どういじったら良いのか説明書も見当たらなくて。。

看板下部拡大。こんな函渠が埋まっているらしい。

途中の橋。上の函渠がそのまま沢を渡っている。橋にしてはあり得ない分厚さである。結構デカいがこれで3.86m3/sか。。コンクリートが分厚いのか ね??

暫く細い混凝土道を行くとやっと着いた。

魚道と対岸を走る国道


宮前発電所[場 所][水力
中部電力(株)
運開:1922[伊勢電気鉄道→三重合同電気(株)] 1979-80改修
水路式・流込式
認可最大出力:830kW     常時出力:420or428kW 
最大使用水量:3.896m3/s    常時使用水量:2.00m3/s
有効落差:28.57m (総落差有効落差差:▲0.74m→なかなか優秀)
 流域面積:212.8平方キロメートル
取水:櫛田川[赤桶(あこう)ダム]156.21m→地 図上だと161m
放水:櫛田川126.90m→地 図上だと129m

櫛田川沿いにある宮前発電所と吐水口。上流の蓮発電所が9m3/s使って発電してるのに4m3/s弱 しか使ってない。もっと強化出来る筈だ。木の陰に隠れて発電所の様子はよく見えない。橋の向こうを一寸上がると看板が立っていてもう立入禁止でそれ以上近 づけない。それは別として櫛田川の雰囲気は最高である。 pic.twitter.com/7RYP1rQ46y

— とはずがたり (@tohazugatali1) July 27, 2021

沈降橋の向こう側に発電所はあるが木でよく見えず。あんな分厚い函渠だったのに水圧鉄管は滅茶苦茶細く見えた。。
脇の滝?は多分野 々口川[地理院]


青田発電所とは対称的に,吐水口からは水が吐き出されてた。



<いちお此処に30m程の開発余地?>

ということで宮前発電所のシステムを見て見たがまあ完成形で態々これに限定して付加的に増強する事はなさそうってのが現地見ての結論。
蓮ダムからの9m3/s以外にも148km2もあるので2300mm平均として12m3/sは余分に取れそう。21m3/sの内5m3/s程を既存発電所 や農業用水に譲り渡すとすると残りは16m3/s程で発電出来そう。



[増強私案]櫛田飯南発電所
出力:7,500kW[+7.5MW]
水量:16m3/s
落差:57m
流域:148.35km2+蓮ダム流域
導水:12.1km (0.62)
取水:櫛田川[赤桶ダム]・野 々口川一 之瀬川栃 沢相 津川長 入川手 石川162m
放水:櫛田川[桜橋付近・立梅井堰直上]99m

立梅(たちばい)井堰[水力][場 所(93m程か)
井堰・立梅用水の取水→何処かで聞いた名前やなあと思ったら『山行が』だった!
道路レポート 三重県道745号片野飯高線 粥見不通区
特に5回目(最終回)辺りで詳し い状況が調査されている。必見!

ひとまず蓮発電所から立梅井堰迄を増強の対象とする。

水土里ネット
立梅用水概要(令和2年4月1日付)
http://www.tachibai.jp/about/
水路延長     幹線用水路26.0km・支線用水路1.0km
附帯施設     井堰1箇所、分水ゲート156箇所、放水ゲート38箇所
水路幅     2.5m(W)×1.6m(H)~ 0.55m(W)×0.35m(H)
水路勾配     1/1000~1/3000
取水量     発電用4.175t/s(中電・許可水利権)・かんがい用3.277t/s(慣行水利権)
かんがい面積     423ha(多気町勢和地域5地区262ha・多気地域8地区161ha)  


取水量は発電に許可水利権(中電)で4.175m3/s,潅漑に慣行水利権(なんたって江戸時代からある農業用水である!法律みたいな新参者の指図は受け ないですな~w)3,277m3/sだそうな。
これは許可水利権の範囲内で潅漑を行っていると云う事か?それと も取水量が7.452m3/sになるのか?→とうやら他所の事例など見るに4.175の中に3.277が含まれるるっぽいんだけど。

波多瀬発電所[水力][山行がの上のレポの1頁目の場面転換の 写真に出てくる右下の建屋がまさに波多瀬PSである]
中部電力(株)
認可最大出力:800kW      常時出力:  0kW
最大使用水量:4.175m3/s
有効落差:25.76m
取水:櫛田川[立梅井堰]92.78m
放水:櫛 田川66.37m(櫛田川のレベルっぽい)

蓮ダムからの最大9m3/sに櫛田川からの最低でも2.3m3/s位は期待できる水量があるのに宮前では3.896m3/sと云う最低レベルの(と云う程 小さく は無いけどw)取水量しか使っていない。

その下流の波多瀬P/Sなんかは水力.comさ んの表現に拠ると”農閑期には灌漑用水全部、農繁期には灌漑用水の余水を利用して発電しています”とのことでA(潅漑)が絡むとややこしくなる(奈良・三 重・滋賀辺りに手を出して懲りてるw)のでまあこれ以上は深入り止めとくけど,蓮~宮前間に一つと宮前本体は増強したい。

またこの表現から判断するに先程の疑問の答えは, 許可利水権の範囲内で潅漑を行っていると云う事か?とはいえ,ここで発電につかって櫛田川に流してしまうとすると幾らも残らんよねえ。。

そして波多瀬発電所によって66m付近で櫛田川に放流された発電用の水 4.175m3/sはすぐさま60m で下出江発電所の取水堰に絡め取られる。その量,まさに同量の 4.175m3/s。。

下出江発電所[水力
中部電力(株)
三重県多気郡多気町下出江
運開:1922[三重合同電気(700kW):着手:松阪水力電氣(株)] ・改修1986.9(740kW)
水路式・流込式
認可最大出力:740kW(改修前700kW)      常時出力:380kW(改修前260kW)
    最大使用水量:4.175m3/s
    常時使用水量:2.500m3/s
    有効落差:22.42m
    水車:出力790kW×1台
    導水路:総延長2634.3m
    流域面積:319.1平方キロメートル
    取水:櫛 田川60.45m
    放水:櫛 田川35.19m[空 撮]

ここで終わりだが飛騨川阿賀野川みたいな(←流石に褒めすぎw)見事な流域一貫開発と見紛う発電所間の 放水・ 取水の連係プレイを見せつけられたらもう一発咬ましたくなる。直下で取水し,弯曲のぶち抜きを使って格 差を短距離で得てみる。

[仮称]相可発電所
出力:930kW
水量:7m3/s
落差:16m
取水:櫛 田川38m
放水:櫛 田川19m

ちいせえwあかん。。
これが170m3/sとかだと阿賀野川になるんだけどねえ。。流石に小さくて一寸水量増やしてみたけどこんなもん。。
将来的に下出江共々10m3/sとかに実現して欲しい所である。

この櫛田川38m付近だが,嘗て発電所があったらしい!

鍬形発電所(跡)林道・ダム・鉱山の勝手な記録
・三重最初の水力発電ができた所
・櫛田川水系に有ったらしい。
・制御装置がノーコントロールになり、水車過回転となり、発電所の屋根を突き破って川原に飛んでいって、廃止になったらしい。←すげえw
・水路は現存していて利用されている。
・堰堤は津留に有る。
・(発電所跡は)現在は南勢水道沈砂池
・(取水堰は)南勢水道津留取水堰

とのこと。,弯曲のぶち 抜きは王道ですな~♪

4.下流域    


佐奈川




祓川



櫛田河口堰