水力発電あれこ れ(北陸)  北 陸電力水力発電所(抄)
九頭竜川(概要下流部(鳴鹿~富田)初期開発(西勝原・打波川)奥越総合開発真名川)
2020.12.01運開
九頭竜川水系石徹白(いとしろ)川電源開発
1.概要 2.沿川風景[石徹白ダム陸電案] 3.石徹白電源開発第一発電所(+6.6MW)第二発電所(+9.7MW)

九頭流川は大まかに云って鳴鹿~富田西勝原・打波川奥越綜合開発真名川辺りに分けてまとめて来たけど,此処石徹白は奥越綜合開発の一環として開発の手が入った。

1.概要
石徹白地区は九頭竜川流域にあって岐阜県郡上市に属している。元々越前国大野郡には石徹白及び和泉村(九頭竜駅付近・上穴馬村・下穴馬村)が同じく穴馬郷 を形成しつつ,江戸時代には郡上藩に属していたそうである[wiki]。 昭和の大合併時に石徹白は色々あって,上下穴馬村が合併して和泉村になる一方で越県合併して岐阜県郡上郡白鳥町に編入(平成の大合併で白鳥町は郡上市に) され,結局,和泉村も平成の大合併で大野市と合併して現在に至る。中島と穴馬を結ぶ現在のr230は穴馬道とも呼ばれていたそうだ が,藩を跨ぐ道路だったということか。結局穴馬の内,和泉村は旧大野藩の大野市に併呑されてしまった形。遠江国ながら吉田藩(現愛知県豊橋市)に属して今 でも遠州の片隅で浜松市に吸収されずに 独立を保ってる湖西市と一寸似ている。人工的に太古の五畿七道時代の旧国を基準とした道府県体制を無理矢理形成した明治政府の中央集権的地方行政を跨いで 江戸期から現代に繋がる地域の動きにはテンションあがるものがある。ただのクソ自民の金城湯池で悪印象の岐阜県であるが,その求心力はなかなかのもので石 徹白のみならず,長野県に属する木曽の山口村も中津川との合併を選んで岐阜県入りしている。松本推しとしては筑摩県を復活して欲しいところなんだけどねぇ (笑

斯くして無人の九頭竜川上流域を挟んで大野郡旧和泉村と桧峠で白鳥と結ぶ石徹白との温度差でもあったのかという感じだったが事態はもう一寸複雑な様子で あった。詰まり石徹白が白鳥町域なのは山口村が中津川市域になったのと同じ様な越県合併であり,和泉村が大野市に合併せずに平成の大合併まで存続してたの は湖西市的な存在だったからの様である。湖西市は自動車産業があって独立を保ったばかりか新居町も合併するなど奮闘してるが,和泉村は長野発電所と九頭竜 ダムでは独立を保つのは難しかったようだ。

また面白いNOTEみっけた♪石徹白川沿いに越美線が走っていた世界線があったかもである。
夢に終わった「越美線」を繋ぐ 机上編
こよりおれんじ
2024年9月6日 18:59
https://note.com/orange_koyori/n/nca0393a33418?sub_rt=share_pb

この石徹白の水は石徹白川を介して九頭竜川に合流しているが,合流点は九頭竜ダムよりも上流である。そこで石徹白川とその支流から九頭竜ダムへ導水するダムが3箇所も設けられている。
出典: 電発

電発由来の上の地図の縮尺が小さくて見難いので漁業組合の地図を持ってきた。見やすい♪イワナやアマゴが採れるようである (アマゴは酒匂川以西の太平洋側、大分県までに注ぐ河川だけに分布する日本固有種でありとあるのに長良川云々のあと日本海側の九頭竜川水系の石徹白川で もってのは可怪しい。)
出典:石徹白漁業組合

さてこの流域の水資源を最大限に使い果たして行きたい。

2.沿川風景

(九頭竜川出合[鷲ダム直下]424.6m)

山原ダム[→奥越開発]

那智洞谷出合(468m)

長倉谷・前坂谷出合(496m)

三面谷出合(532m)

石徹白取水ダム[国 交省][便 覧][電発
形式:自然越流方式・アーチ式重力ダムで
取水:最大26.0m3/s(導 路延長:7,360m)
河川     九頭竜川水系石徹白川
目的/型式/ゲート     P/重力式アーチ/ゲートレス
堤高/堤頂長/堤体積     32m/113.6m/20千m3
流域面積/湛水面積     104.6km2 ( 直接:96.8km2 間接:8km2 ) /11ha
総貯水容量/有効貯水容量     103万m3/91.7万m3
ダム事業者     電源開発(株)
本体施工者     飛島建設
着手/ダム本体完成/竣工     1965/1967.12/1968.2.27(貯水開始),3.1(導水トンネル内通水)
取水:三 面谷576m・石徹白川[石 徹白ダム]570m(利用水深4m)・智 奈洞谷564m
放水:九頭竜湖555m

石徹白ダム
石徹白ダムは、九頭竜川右支川石徹白川に建設された自然越流方式のアーチ式重力ダムである。
 このダムによって貯水された水は、石徹白川支川三面谷からの取水と合わせて、延長7,360mの集水トンネル(途中で石徹白川支流智那洞谷からも取水) によって九頭竜ダム貯水池に最大取水量26.0m3/sを注水している。
 石徹白ダムは、昭和41年(1966)3月に仮排水トンネル(吐口)の掘削に着手し、昭和42年(1967)12月にダム本体を完成し、翌43年 (1968)2月27日に貯水を始め、3月1日トンネル内へ通水して九頭竜ダムへの導水を開始した。
出典:国 交省 近畿地方整備局 福井工事事務所『九頭竜川流域における水力開発の歴史』より

この石徹白川から九頭竜ダムへの導水路の落差を利用して小水力が建設されたようだ。国交省の頁に最大23m3/sとか云ってたけど使用されたのは僅かな 3.22m3/sと落差7.4m。多分智 奈洞谷ダム(EL564m)との間の落差のみ使えたってことであろう。
20m3/sとか取れるのはダムがあって比較的大丈夫そうではあるけど発電所を止めざる得ない洪水時であるからもとよりそんな規模には出来ないだろうけ ど,これならポテンシャルを使い果たしてるとはとても言い難い。

電源開発(株) このき谷発電所[水力]
着工:2014.10/運開:2016.12.1
水路式・流込式
    認可最大出力:199kW      常時出力:   kW
    最大使用水量:3.22m3/s
    有効落差:7.4m
    流域面積:117.0km2?
    取水:三面谷[三面谷ダム]→石徹白川[石徹白ダム]→智奈洞谷[智奈洞ダム]564m
    放水:此の木谷[九頭竜ダム]555m

那智洞ダムと九頭竜ダムの間の10m程度の落差を利用して200kW程度の小水力が設置された。
3.22m3/sは割と小さめで,10m3/s程とれば600kW程度の発電が見込めそうなんだけどねぇ。。

九頭竜ダム[便覧
河川    九頭竜川水系九頭竜川
目的/型式    FP/ロックフィル
堤高/堤頂長/堤体積    128m/355m/6300千m3
流域面積/湛水面積    301.5km2 ( 直接:184.5km2 間接:117km2 ) /890ha
総貯水容量/有効貯水容量    3億5,300.0万m3/2億2,300.0万m3
ダム事業者    近畿地方建設局(電源開発(株))
着手/竣工    1962/1968


石徹白流域は九頭竜ダム の間接流域なので117km2で最大26m3/s取水していることになる。豪雨時に取水して九頭竜貯水池に貯めるので各地でこの手の導水の取水量は高めの数値には設定 してるのだろうとは思って居たがそれが始めて裏付けられた形である。

福井県側の600m地点で取水するとすると約103.9km2となる。まあ10m3/s取れて40m程の落差で発電するとすると3,300kWとなる。余 り高出力にはならないようだ。
【陸電案】
なんと石徹白川沿いに巨大ダム(後野ダム・後 野はこの辺)を更に建設して発電する計画もあったようだ。電発と競っていた北陸電力の案だそうである。
出典:雀の社会 見学帖(原典:北陸電力 『北陸地方電気事業百年史』 (1998))
今は九頭竜ダムの下部調整池に小ぶりな鷲ダムがあって,そこから石徹白川の山原ダムを経由して湯原発電所・仏原ダムへ流れ込む形になっているが後野ダムが 三面谷取水口・石徹白ダム・鷲ダムと山原ダムに分割された感じである。
恐らく後野Dと九頭竜Dの間で揚水発電が行われる事になってたのだろうが,使える水の水量は今の鷲ダム・山原ダムがこぶりなので増えたが有効落差は減ったものと思われる。

wikiにはもっと詳しい経緯の他,色々な疑惑迄載っている。所得倍増でなんか今では好印象の池田勇人まで当時カネに塗れてたとは,保守政治はカネに汚いねぇ
>長野ダムの入札をめぐっては第1工区で最高額で応札した鹿島建設が落札、他の4社が最低落札価格を超えていないとして失格になった。池田勇人首相 への政治献金を約束した鹿島建設と電源開発、政府が一体となって仕組んだ汚職だとの疑惑が広がり、衆議院決算委員会で田中彰治代議士らが追及した。だが、 池田首相の秘書官だった中林恭夫と、決算委員会で証言した元朝日新聞記者、言論時代社主幹の倉地武雄が不自然な死を遂げ、事件はうやむやになった。この経 緯は石川達三が『金環蝕』として小説化しており、大映によって映画にもなった。

また揚水発電は両者(電発と陸電)の計画を一本化するなかで通産省主導で入れた様だ。


【石徹白電源開発】

[私案]石徹白第一発電所
出力;6,300kW~6,600kW[+6.6MW]
水量:6.0m3/s
落差:125m
流域:57.7km2[10.3]+三面谷5.8km2[3.86]+扇川2.1km2[3.68]
導水:5.6km+1.5km(三面谷)+0.57km(扇川)
取水:石徹白川(朝日添(わさびぞ)川出合) 俵谷 (三面谷) (扇川)700m
放水:石徹白川[石徹白ダム]570m




流域
導水
1案
2案
3案
4案
石徹白・俵谷 57.7
5.6




三面谷 5.8
1.5




扇川 2.1
0.57




流域


57.7
63.5
59.8
65.6
導水


5.6[1.125]
7.1
6.2[1.06]
7.7
水量


6.0[1.04]
6.6[1.04]
6.2[1.04]
6.8[1.04]
出力


6.3
7.0
6.6
7.2

1案と3案が導水出力比を満たすので規模のでかい3案を採用。

[私案]石徹白第二発電所
出力;7,700kW~9,700[+9.7MW]
水量:3.5m3/s[1.63]~4.4[1.61]
落差:260m
流域:21.4km2+牧川(僅少)+朝日添(わさびぞ)川5.97km2
導水:7.0km+1.1km(朝日添川)
取水:石 徹白川倉 谷初 河(はっこ)谷保 川牧川朝日添川 970m
放水:石 徹白川700m