電 力 総研 水 力あれこれ 宮川
とはずがたりな掲示板(利 水スレ電 力スレ)
20.10.15運開

角川発電所と下小鳥発電所問題(解決済)(20.11 彷徨)(23.7駆け足)

角川は出版社と同じ「かどかわ」ではなく「つのかわ」(近くに高山本線の角川(つのかわ)駅もある),下小鳥は地名や河川名と違って「しもおどり」ではなく「しもことり」と読む。ややこしい。
が,その取水・導水・放水の構造も同じ様にややこしかった。。その解明のメモである。

さて宮川中枢部の発電利水模式図は以下の通りとなっている

出典:国 交省

注目して欲しいのは下小鳥発電所と角川発電所の放水部(取水部が●で,放水部が▼で,途中の導水部が━で繋がれている)である。
両発電所の導水部が交叉して下小鳥が宮川,角川が小鳥川で放水 するように見える。

次に北陸地方整備局。
そこでは角川の取水と下小鳥の放水は交わらず,角川・下小鳥の両放水は宮川で放水と 云ふ事に成ってゐる。また角川発電所へも小鳥川から,下小鳥ダムへは金山谷川からも導水がある事が示されている。
出典:北 陸地方整備局

さて国 土地理院である。発電所名と取水元のみ書き込んでみた。解りにくいので角川と下小鳥の導水路も色を変えて書き込んだものがマウスオーバー。
これでは下小鳥発電所は宮川ではなく稲越川に面しており,と同時に角川発電所の導水路と部で交叉してゐる。



下小鳥発電所の直下に角川発電所の導水路が走っているのが解る。そして斯界の先駆者にして重鎮の水力.com様の記述(一部抜粋・ゴチ強調及び丸数字付加はとはずがたり) は以下の如くなっている。

http://www.suiryoku.com/gallery/gifu/tunokawa/tunokawa.html
関西電力株式会社 角川発電所   
昭和30(1955)年4月:運用開始
認可最大出力:23000kW      常時出力: 4500kW
最大使用水量:81.00立方メートル毎秒
有効落差:33.15m
導水路:総延長1643.9m、主要導水路 圧力トンネル 口径4.80m、延長1643.9m
放水路:幅8.50m×高11.90m、総延長67.1m
取水位標高:467.00m
放水位標高:429.80m
流域面積:983.3平方キロメートル
取水:宮川[打保ダム]、小鳥川、稲越川
放水:宮川

http://www.suiryoku.com/gallery/gifu/simokoto/simokoto.html
関西電力株式会社 下小鳥発電所
 昭和48(1973)年5月:運用開始
認可最大出力:142000kW      常時出力:  8600kW
最大使用水量:65.00立方メートル毎秒
有効落差:251.10m
導水路:総延長8536.1m、主要導水路 圧力トンネル 口径4.70m、延長8283.3m
放水路:口径5.10m、総延長566.8m
取水位標高:702.00m
放水位標高:430.30m
流域面積:186.1平方キロメートル
取水:下小鳥川[下小鳥ダム]
放水:宮川、角川発電所

これに拠ると①角川発電所は稲越川からも取水しているのが解る。
地図だと解りにくいが取水堰堤があるのであろう。→うむ,ありますな~[G マップ

そして②より下小鳥発電所の放水は宮川と角川発電所に向かうシリーズ発電所の ようだ。
これは地理院地図の記載とも符合する。(国交省北陸地方整備局とは矛盾するが多数決だw)

となると課題として③の幾つかの要素から新しい下小鳥が大量の水を角川に注ぎ込むの に,流域面積が5倍程ある角川は水量が小さすぎて容量が足りないのではないか,となる。角川発電所の隣りにある小川もこの使い切れない分の 余水吐か!?と思えてくる。



と云う訳でもう現地にいくしかないとのことで20.11に現地に飛んだ。


下小鳥川でも宮川でもなく稲越(いなごえ)川沿いにある下小鳥発電所。地下式?のなにやら素っ気ない雰囲気の発電所は同じく関電の木曽発電所(1968運開・116.0MW)を思い出させる。
こちらは1973運開。似た様な時期である。規模も同じ様にデカい。この頃の標準的な開発思想なのであろう。立地してるのが川沿いでも立地場所では川との 関わり合いが無さそう(発電所からっぽい放水は一切無し)な点も似ている(木曽ダムは大桑発電所用の導水路から冷却水を取ってはいた。)。

下小鳥発電所
稲越川を登っていくと建屋が現れる。

出口付近。地下式のようだ。
20.11
ただこちらは水圧鉄管は剥き出しになっていたので発電所とは判る。(敷地内で地下に潜って居た。)
20.11
川を覗いて見るも放水している様子はなかった。



直上にはグーグルマップで確認した通り角川発電所の稲越川取水堰堤があった。

角川発電所稲越川取水堰堤(仮称)
20.11

結局,下小鳥発電所の余水を何処に吐き出すか問題であるが,冒頭の地図に余水吐!?と書いたが角川の脇にでも排水するのかとも思ったが,実際にはそんな様 子ではなかった(ただの谷川?)。

と云う事で,下小鳥角川を突撃してきたが結局下小 鳥の放水先は良くわからなかった。。

が,両発電所の各種の標高データを見れば明らかで,冷静に考えてみると水力さんの恐らく水力DBから引用の諸元の中の④の角川の放水位(429.8m)は下小鳥の放水位(430m)と大差なくしかもこ れはほぼ坂 上ダムの取水位(429.50m)でもある。
明らかに下小鳥の放流水は角川では使えないし下小鳥の発電に使う前に落差殺して角川に水を回す 事もなく放水先は下小鳥と同じで坂上ダムの様である。

詰まり皆一寸ずつ間違えてて(国交省は角川と下小鳥の放水がミス・北陸地方整 備局水力.com地理院図は下小鳥の放水先がミ ス(地理院は記載漏れ)という訳である。
こちも混乱してて現地ではそれに気づけなかった。データ見てから現地飛べば良かっ た。。
詰まり下小鳥も角川も坂上ダムに放水すると云うことで確定であろう。恐らく小鳥 川沿いに下小鳥PSの放流口があって(多分此 処)それを現地で確認すれば終わりだったけど,
みんなで寄ってたかって俺を惑わしやがってw



最終的には地理院には載っていない小鳥川と宮川の合流部付近の想定地付近で放水口を見付ければ良いのである。
まあ解決済みという気になって放置してたが23.7,有 峰を踏破して裏から跡津へ抜けたので序でに寄ることにした。
R360の小鳥川の橋の上から上流を眺める。


そして想定する区域に近づくとあっさり発見。ひっそりと口を開ける混凝土の排水口が!!



見つかればまあ当然だし巨大な下小鳥にしてはささやかな放水口に見える。
この辺(赤矢印) に向かって斜面を降りて河原へ。意外に苦労して見通しが悪い写真しか撮れなかった。


20年頃から調査を開始してあっという間にもう23年である。一寸感傷的な気分になって夕闇が忍び寄ってきてる水量たっぷりの頼もしい小鳥川の姿を下流に 向かって写真を撮り,天生峠を経て東海北陸自動車道へ取り付いて生駒迄帰って来た。


最期に政界の地図を掲げ,そのしたに諸元も纏めておく:



関西電力(株) 角川発電所[→宮川
運開:1955.4 →意外に新しかった。。
ダム水路式・調整池式
認可最大出力:23,000kW      常時出力:4,500kW
最大使用水量:81.00m3/s
有効落差:33.15m
水車:2台 総出力26000kW
導水路:総延長1643.9m
流域面積:983.3km2
取水:宮 川[角川ダム]小 鳥川小鳥川取水堰堤(仮称)]、稲 越川稲越川取水堰堤(仮称)]467.00m
放水:宮川[坂上ダム]429.80m

関西電力(株) 下小鳥(しもことり)発電所[→宮川
運開:1973.5
ダム水路式・貯水池式
認可最大出力:142,000kW   常時出力:8,600kW
最大使用水量:65.00m3/s
有効落差:251.10m
水車:立軸フランシス水車 出力146000kW×1台 ※1
導水路:総延長8,536.1m圧力トンネル 放水口:口径5.10m,総延長566.8m
流域面積:186.1km2
取水:小鳥川[下小鳥 ダム]702.00m
放水:小鳥川[坂上ダム]430.30m