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再生エネ主導グリッド 再生可能エネスレ
巨大蓄電池とそのコスト 系統側蓄電池による風力発電導入(北電)

蓄電池価格低下


日本はサービス過剰の国である。矢鱈と高サービスが当然の如く要求される。
マクロ経済的な不効率を恐らく招いているのであろうが,このガラパゴスでいいサービスを国民は享受しているとも云える。日本の労働効率の悪さがしばしば指摘されるが日本がサービス特化型の経済にガラパゴスして欧米の基準でその部分が測れてないのだらうとは思う。

閑話休題(それはさておき),電力も勿論その日本的品質至上主義から逃れられていない。
縦横無尽に連系線が繋がる欧州と対比して余り連系線が繋がってないのは停電を恐れて無闇に連系出来ないのである。

そう云ふ訳で,日本では蓄電池が高コストにも拘わらず多用される方向である。間歇性のある再生エネを日本型グリッドに連系するには不可欠の技術となる。
資源エネルギー庁も色々考えてはいる様である(この様な資料も:資源エネ庁(2017年3月):定置用蓄電池の価格低減スキーム)があるが,リチウムイオン電池の価格低下はグローバルな競争原理に基づく自律的な価格低減レジームに入りつつあるように見える(この様な記事も:金子憲治=日経BP総研()2017.8)「風力でも蓄電池併設型が急成長も」、TMEIC・杉山氏、木暮氏に聞く)。弊電力総研としてもこの辺(巨大蓄電池とそのコスト)に纏めて居るのでご参考にされたい。
更にはこれ以外にも技術立国(製造部門の劣化甚だしく技術立国の可能性が棄てきれないのが残念な今の日本・・)の意地を見せて,色々な蓄電技術が実証実験されている。

そんな訳で,Liイオン電池やNAS電池,レドックスフロー電池等は既に確立された案件のものを此処では取扱い,それ以外の技術系は此処では紹介して行きたいと思う。



基本情報:
 定置用蓄電池の価格低減スキーム(2017年資源エネ庁) 
 「風力でも蓄電池併設型が急成長も」(日経BP総研 2017.8)

各ニュース:
 住友電工、レドックスフロー電池で安価な電解液開発へ(電気新聞・2018.10.30)
 超低価格のカーボンナノチューブ量産化、電池容量が飛躍的に向上(JB Press 2018.11.2)

定置用蓄電池の価格低減スキーム
2017年3月8日
資源エネルギー庁新エネルギーシステム課
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy_environment/energy_resource/pdf/005_08_00.pdf



因みに産総研で太陽電池の研究をされてる桜井さんがこの資料を見て「…うぐぅ、2020年時点で9万円/kWh(工事費除く)って、もう現時点でpowerwallの方が安い orz」と呻いてらっしゃった(笑)よく解ってないがもうもっと安いシステムが普通に普及しているようだ。2018年4月の記事は此処参照

<蓄電池価格>
Liイオ ンだと思われるが一寸前迄20万円/kWhだったのが10万円/kWhを切ってきて量産効果見込むと5万円/kWhって声も聞こえてくるって事で実に 1/4が視野に入りつつあって,この辺から判断するにもしかすると揚水発電がNASに代替可能となる日がそう遠からず来るやも知れない。
2017/04/21 08:49
ニュース
圧縮空気で風力発電の出力変動を緩和、早稲田大など実証
https://tech.nikkeibp.co.jp/dm/atcl/news/16/042107275/
工藤宗介=技術ライター
クリーンテック ラボ

Liイオン2次電池は、コストダウンが急速に進んでいる。最近では、新車向けのセル価格で1kWh当たり1万円前後が目標価格になっている。

エネ蓄電池プロジェクト最前線
「風力でも蓄電池併設型が急成長も」、TMEIC・杉山氏、木暮氏に聞く
電池価格の低下で、系統負荷を抑えた再エネが補助金なしで拡大へ
https://tech.nikkeibp.co.jp/dm/atcl/feature/15/415282/081000020/?ST=msb&P=1

2017/08/21 14:36
金子憲治=日経BP総研 クリーンテック研究所

蓄電池の低価格化で補助金なしで事業化
――蓄電池併設型のメガソーラーでは、国の補助金制度を利用することが多いなか、「ソフトバンク苫東安平ソーラーパーク2」では、補助金なしで事業開発を進めました。

木暮 もちろん補助金制度を利用できれば、事業性は高まります。ただ、ここにきて、蓄電池の価格が急速に下がってきたことで、補助金なしでも事業性を確保できるようになってきました。蓄電池の価格はかつてkWh当たり20万円といわれましたが、ここにきて韓国など海外メーカーは、10万/kWhを切る水準まで下げてきました。量産効果を織り込んだ場合、約5万円/kWhという声まで聞かれるようになっています。



2017年3月には2020年に目標9万kWhと云ってたのが1年後の2018年4月のこの記事では2020年頃には6万円/kWhとなってるぞ。

蓄電池の損益分岐点「ストレージパリティ」、FIT切れのPV設置ケースで2020年に達成予定
2018年04月25日
https://pps-net.org/column/54647

一般社団法人エネルギー情報センター
新電力ネット運営事務局

経済産業省は4月、「ソーラーシンギュラリティの影響度等に関する調査」報告書を公開しました。固定価格買取制度の期限が過ぎた太陽光発電と組み合わせることにより、2020年前後には「ストレージパリティ」を達成するとしています。

6万円/kWhでストレージパリティ達成
太陽光発電は天候等の要因により発電量にバラツキが発生するため、安定的な電力確保は不得手としますが、蓄電池を組み合わせることでベースロード電源に近 い働きを期待できます。一方、蓄電池は費用対効果の面でみるとメリットが薄く、市場原理に基づくと普及は難しい現状にあります。

ただし、技術革新や量産効果等により、太陽光発電(PV)や蓄電池の経済メリットは近年高まっています。そのため、「蓄電池を導入しないよりも、蓄電池を導入したほうが経済的メリットがある状態」であるストレージパリティに到達しようとしています。

経済産業省が公開した「ソーラーシンギュラリティの影響度等に関する調査」報告書によると、蓄電池価格が6万円/kWhとなることでストレージパリティは達成可能としています。

蓄電池メーカーにおける現実的な蓄電池容量を5kWhとすると、蓄電池価格6万円/kWhでストレージパリティが成立します(従量料金の場合)。一方、季時別料金の場合は6万円/kWhではストレージパリティに達しませんが、4万円/kWhになればストレージパリティに達します(図1)。


2019年以降のFIT切れ太陽光、2020年前後でストレージパリティの見込み

PVを保有している平均的な住宅において「ストレージパリティ(21円/kWh)」となるのは2020年前後と見込まれ、FIT買取期間終了の住宅が発生し始める2019年と同時期です。ただ、これは既にPV設置費用をFITにより回収しているケースです。

低圧需要家にPVと蓄電池を「新規導入」する場合は、ストレージパリティは2020年代後半となる見通しです。

FIT切れの事業用PVに電源安定化の目的で蓄電池を設置する場合、ストレージパリティは概ね2032年の予定です。ただ、これはFITにより投資回収が 完了しているケースです。新規の事業用PVの電源安定化を目的としたストレージパリティは、2032年以降となる見込みです(図2)。

小売電気料金との比較においては、2020年後半にはPV+蓄電池による単価が従量料金より小さくなる見込みです。一方、現在(2018年時点)の場合、 グリッドパリティは達成していますが、PV+蓄電池による単価は従量料金より大きくなります(図3)。グリッドパリティとは、PVによる発電コストが既存 の電力のコストと同等以下となる分岐点のことです。



蓄電池普及の問題点、送配電網のデススパイラル
蓄電池やPVの導入が進み、分散電源が拡大することは環境面からは望ましい一方、インフラ(送配電網)の維持に関して問題が発生します。電気はインフラを 通して建物等に運ばれますが、その利用料として託送料が発生しており、この託送料によりインフラは維持されています。ただし、分散型電源が進むにつれてイ ンフラを利用した電気購入は少なくなり、インフラ維持が難しくなっていきます。

また、再エネ賦課金に関しても、分散型電源(自宅の屋根など)から電気を利用する場合、発生しません。そのため、PVや蓄電池を導入していない需要家は、 託送料や再エネ賦課金の負担が重くなっていくことが想定されます。その負担を避けるため、PVや蓄電池の導入がさらに進むこととなります。

この一連の流れを、送配電網のデススパイラルと呼びます(図5)。そのため、今後は送配電網のスリム化などの対策も必要になっていくと想定されます。ただ し、託送料金が現在はユニバーサルサービスであるため、過疎地も都市部も同じ料金でインフラが利用できます。そのため、地域としてもコンパクト化、最適化 に取り組むインセンティブが働きづらいといった問題があり、今後対応が必要になってくると考えられます。



産業・技術
住友電工、レドックスフロー電池で安価な電解液開発へ
https://www.denkishimbun.com/archives/34055
New 2018/10/30 4面

◆原料にチタン、マンガン
 住友電気工業は、蓄電池の一つである「レドックスフロー電池」を拡販するため原価低減に取り組む。電解液の原料に安価なチタンとマンガンを利用。初期投 資を抑えて顧客が導入しやすい環境を整える考えだ。現在の電解液原料はバナジウム。希少金属なので原料費が高く、製品コストを押し上げている。安価なチタ ン・マンガン系電解液を開発して早期の商用化を目指す方針だ。


最先端EV用電池素材で日本に勝利したロシア
超低価格のカーボンナノチューブ量産化、電池容量が飛躍的に向上
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54549
2018.11.2(金) 渡邊 光太郎

 カーボンナノチューブは電流容量や強度で優れた物性を持ち、期待の新素材であった。

しかし、1グラムで数万円、ざっくり金の10倍という高価格だった。そんな高いものを使っては、まともなコストで製品作りができないので、誰も実用的な用途を見つけられなかった。

 そんな中、ロシアでOCSiAl社によって、1グラムで300円という低価格でカーボンナノチューブを製造する方法が開発されたのだ。そして、実際に供給体制を整え、本当にその価格での販売が始まっている。

カーボンナノチューブとは

 カーボンナノチューブとは、炭素原子が筒状に結びついて、分子サイズのパイプになったものである。

 炭素の結晶であるダイヤモンドが示すとおり、炭素原子は原子間の結びつきが強く、それが硬さなどの高い物性をもたらす。

 カーボンナノチューブの物性は、耐えられる電流量は銅の1000倍、熱伝導度は銅の約7倍、強度は炭素繊維の8~80倍とされている。

 カーボンナノチューブは名前のとおりナノサイズなので、単体では使いようがない。しかし、物性がこんなに優秀なので、少量を他の材料に混ぜることで、性能を大幅に向上できる。

 例えば、プラスチックにカーボンナノチューブを少量混ぜれば、電気を流す性質を与えることができる。

 現在、最も期待されている用途は、自動車のEV化の進展で期待の高まっている2次電池の性能向上である。

 粉末の中に混ぜると、粒子間を電気が流れやすいものでつなぐようになる。リチウムイオン電池の電極材にカーボンナノチューブを混ぜることで、粒子間を電気が流れやすくなり、電池の性能が上がる。

 また、2017年物質・材料研究機構と科学技術振興機構により、正極にカーボンナノチューブを用いたリチウム空気電池という別のタイプの電池が開発されている。

 この電池はリチウムイオン電池の15倍の蓄電容量があるという。ソフトバンクと共同で実用化研究が行われている。

 電池の内部では化学反応が進むと、電気の流れを阻害する物質が溜まる。
 カーボンナノチューブは、変形しながらこうした物質を溜め込みつつも、電気を流す経路を作りやすい性質により、電池内の電気の流れを維持する。

 これまで、カーボンナノチューブを用いて様々な製品の性能向上ができることが分かっていたが、前述のように金の10倍の価格では手が出なかった。

 カーボンナノチューブは、パイプ状の壁一つの単層カーボンナノチューブと壁が複数重なった多層カーボンナノチューブがある。
 単層カーボンナノチューブが性能的には優秀であるが、価格があまりにも高かった。
 そこで、単層カーボンナノチューブの安価な製法の研究開発がなされてきた。
写真3 カーボンナノチューブの構造(出所:産総研ウエブサイト)

 日本でも日本ゼオンなどの企業が参加するNEDO主体の国家プロジェクト(とは註:低炭素社会を実現するナノ炭素材料実用化プロジェクト)で、単層カーボンナノチューブの廉価製法の開発がされてきた。
 従来製法に対し、3000倍の成長効率で、長さも500倍の単層カーボンナノチューブを製造できるようになった。

 かつて、1グラムで数万円した単層カーボンナノチューブは、1グラムあたり1000~2000円程度まで安く作れるようになった。

 さらに、この単層カーボンナノチューブの純度はロシアのカーボンナノチューブを凌ぐ。

 しかし、ロシアのOCSiAl社は、金属の粉の上に単層カーボンナノチューブを成長させる技術を開発し、1グラムあたり300円で単層ナノチューブを製造できるようになった。

日本の単層カーボンナノチューブにとって残念なことに、現時点で単層カーボンナノチューブが期待されている用途では、純度はそこまで求められていない。
 単層カーボンナノチューブを混ぜ物として用い、強度、電気の流れやすさ、熱伝導度を上げるには単層カーボンナノチューブが存在し、機能してくれていればよい。
 リチウムイオン電池の性能向上でも、OCSiAl社の単層カーボンナノチューブ程度の不純物ではそれほど問題がないようだ。

 OCSiAl社の単層カーボンナノチューブは、1グラム300円での供給体制が整いつつある。
 ロシアは日本の素材産業の3分の1以下の価格で、同じ価値のある素材を提供することに成功した。