木曽川上流域の発電所
20.10.27運開
伊奈川の水力開発と与川と滑川
wiki]
伊那川は、木曽山脈(中央アルプス)の最高峰・木曽駒ヶ岳に端を発し、南西へと流 れ木曽川に合流する河川である。急峻な地形に加え、冬の豪雪によって流量 を豊富であったことから、水力発電の適地として古くから注目されていた。大正時代、下流より橋場発電所・田光発電所が順次運転を開始し、昭和初期に相之沢 発電所が完成。木曽発電による伊那川開発はこれで一段落した。
戦後、伊那川を含む木曽川筋の水力発電所を継承した関西電力は、未だ開発の余地を 残す伊那川に注目。上流に伊奈川ダムを建設し、木曽川との間に存在する標 高差440メートル余りを利用した大規模な水力発電を計画した。伊奈川ダムは1974年(昭和49年)に着工し、1977年(昭和52年)に完成。伊奈川 発電所が運転を開始した。
開発はその後も続行され、1986年(昭和61年)、伊奈川ダム上流に伊奈川第二 発電所が完成。伊奈川発電所とは異なり大ダムを伴わない水路式発電所であ るが、400メートルにも及ぶ落差を利用し、新たに最大2万1,600キロワットの電力を発生できるようになった。これにより、関西電力の木曽川における 発電所総出力は100万キロワットの大台を突破した。

伊奈川第二発電所[水力
関西電力(株) 
運開:1986.2.5
水路式・流込式
認可最大出力:21,600kW  常時出力:2,500kW
最大使用水量:6.50m3/s
有効落差:399.48m
水車:出力22300kW×1台
導水路:総延長4422.6m
導水路:総延長3117.1m
導水路(3本):総延長5170.5m
流域面積:38.8km2
取水:伊 奈川金 沢東 川ケ サ(今朝)沢、他1410.8m
放水:ケサ沢[伊奈川ダム]998.00m

伊奈川系統はなかなか効率的なというか400m級のどでかい落差二連発力を誇る発電系列である。伊奈川ダムの水量が不安であるので積極的に取水していきた い。
隣の滑川水域(同じ木曽川水系)になるけど,その上流から6.2km程度の導水で12km2を確保できる。1.0m3/s程は行けるかな。まあ補完的に集 水して余ったら余水吐から伊奈川ダムに貯めれば宜しい。
使用水量に上乗せすると24.9MW[+3.3MW]程度には出来るけど元々強気の使用水量なのでそのままでも良い。22.3MWの水車の容量を睨んで増 やす程度か。
運用してみていけるとなれば」,1986年運開で経年35年程度だから未だだろうけど,来たるリプレース時にでも増強はやって貰えれば良い,程度か。


伊奈川ダム[地 図][松 本市[水力][]便覧
河川     木曾川水系伊那川
目的/型式     P/重力式コンクリート
堤高/堤頂長     43m/105m
流域面積/湛水面積     76km2 ( 直接:54km2 間接:22km2 ) /6ha
ダム事業者     関西電力(株)
着手/竣工     1974/1977
総貯水容量:80.3万m3 有効貯水容量:50.5万m3 →まあ小さめのダムではある。。
取水位:伊奈川PS:995m /相之沢PS:982.0m
取水量:伊奈川PS:11.0m3/s /相之沢PS:3.11m3/s

この伊奈川ダム(1977竣工),なんと伊奈川発電所(木曽川沿・40.7MW・11.00m3/s・438.00m・1977運開)と相之沢発電所(伊 奈川沿・6.2MW・3.11m3/s・243.0m・1938運開)に水を供給している。後からダムが建設されてより高効率の新発電所が建設されたが, 生き残った例である。なかなか珍しい。

使用水量が伊奈川発電所と相之沢発電所の計14.11m3/sに対して有効水量は50万m3しかなくて,最大でも10時間弱しか持たない様だ。但し,相之 沢の取水位はだいぶ低いので伊奈川発電所が発電停止となっても発電出来そう。この場合有効貯水容量はどうやって決めてるのかねえ??

P/S名
出力
水量
落差
水効率
伊奈川P/S
40.7MW
11.00m3/s
438m
3.7
大桑P/S
12.6MW
38.40m3/s
39.09m
0.32



477.09m
4.02
相之沢P/S
6.2MW
3.11m3/s
243m
1.99
田光P/S
2.5MW
2.78m3/s
108.79m
0.90
橋場P/S
1.9MW
4.09m3/s
55.80m
0.46

10.6MW

407.59m
3.35
両ルートの比較をすると云うまでも無く新ルートの圧勝である。基本的に相之沢を使用する必要が感じられないけど水が溢れそうな時に使う感じかな?橋場がぎ りぎり大桑発電所の取水口の下で発電してるのも悶絶である。
但し伊奈川ダムの流域は76.6km2と使用水量に比べて小さい様な気がする。

【伊奈川の課題】 これで課題は粗方出尽くした感がある。
①伊奈川ダムへの取水量増大(→地図見て無いと思ったけど水力さんに寄ると越百川からの導水はちゃんとあるらしい。)
②相之沢系統の有効活用。田光発電所への新水源開発と出力増強?
③橋場発電所の高効率化
と云った所だ。

①に関しては伊奈川第二の増強もその一端を担っている。


関西電力(株) 伊奈川発電所[水力
運開:1977.11.4
ダム水路式・調整池式
認可最大出力:40,700kW  常時出力: 3,100kW
最大使用水量:11.00m3/s
有効落差:438.0m
水車:出力42000kW×1台

導水路(越百川→伊奈川ダム):総延長3366.3m
導水路(伊奈川ダム→発電所):総延長2688.7m、
面積
流域面積:76.6平方キロメートル
河川
取水:越百(こすも)川→伊奈川[伊奈川ダム]995.00m
放水:木曽川539.50m→地 図からも空 撮写真からも放水場所が判らない。。

水圧鉄管が途中で地下に潜る大胆な配置。
 

増強案であるが以下の様に相之沢・田光の課題と併せて水量増やせば良さそう。

相之沢発電所[水力
関西電力(株)
運開:1938.3[木曽発電(株)]
ダム水路式・調整池式(伊奈川ダム建設以前は水路式・流込式だった筈)
認可最大出力:6,200kW 常時出力:0kW
最大使用水量:3.11m3/s
有効落差:243.80m(運開当時245m)
水車:出力6420kW×1台
流域面積:76.6平方キロメートル
取水:伊奈川[伊奈川ダム]982.0m
放水:伊奈川・田光発電所711.50m

読書ダムが後補で設置されてサブになった読書発電所1~3号機的な発電所がこの相之沢である。勿論規模は相当に小さいがそれでも6.2MWはある。有効落 差の勝利である。

水 力さんの資料だと相之沢の放水先に伊奈川が載ってなくて田光の取水先に相之沢の他に伊奈川も載ってるのに使用水量が減るのは可怪しいので伊奈川を 入れて 置いた。

田光発電所[水 力][ひろし
関西電力(株)
運開:1924.12.17[中央製紙(株)]※
水路式・流込式
認可最大出力:2,500kW  常時出力:0kW
最大使用水量:2.78m3/s
有効落差:108.79m
水車: 出力2550kW×1台
導水路:総延長2445.4m
取水位標高:711.37m
放水位標高:587.54m
流域面積:88.6平方キロメートル
取水:相之沢発電所、伊奈川711.37m
放水:伊奈川587.54m

※元々製紙メーカーの自家発電だった様だ。中央製紙はこ こ(wiki)参照。中津川市で操業中の王子エフテックス中津工場。
御料林からの払い下げ木材を目当てに会社を立ち上げたが払い下げには失敗,北海道や樺太から買い付け名古屋港や富山県の伏木港で陸揚げし、須原まで鉄道輸 送だったとのこと。
結局それがきっかけで高コストの工場は閉鎖,もともと田光の電力を工場のほか大桑村全域に供給し、余剰電力を大同電力へ売電していたが,橋場の水力発電所 と田光発電所は木曽工場閉鎖後、大同電力系の伊那川電力(後の木曽発電)が継承し、橋場の水力設備については改造されて橋場発電所となったそうな。歴史で すなぁ。橋場の項も参照されたし。

ひろしさんのレ ポによるとこ この沢渡りはサイフォンになってる模様。しかも新しい様子。今更増強(=新投資)は無理やね。
また相之沢発電所の少し上流にある取水堰堤からとのこと。こ の辺か?

相之沢より使用水量が減ってしまうのは可怪しいとはいえピーク電源とはそういうものではある。
そもそもどの程度の独自の面積を持っているかが重要。伊奈川ダムより上流側を除いた面積が知りた いがどうもどっかにエラーがあるらしく田光の流域面積から 相之沢のそれを引くと11km2になってしまって如何にも狭すぎる。調べてみると実際は35km2程らしい。降水量はそれ程多くないから2.1(60%) ~2.8(80%)m3/sってとこか。相之沢の放水量を無視すれば現況の設定は良い線いっとるってことか。。

先ずは田光発電所への集水の可能性を検討する。
浦川710m付近より 18.32km2 1.8m3/s程度か

更に隣には下 山沢18.3km2なんかもある。ただしここは与川流域で与川発電所に使用されている。


~与川~(→こちらに独立)
伊奈川の直ぐ南側の川。柿其川蘭川(≒読書発 電所)の間で木曽川に合流する。

与川発電所[水力
 関西電力(株)
運開:1926.12.10[T15:信美電力(株)…同じ大同系伊奈川電力に合併]
水路式・流込式
認可最大出力:1,760kW  常時出力:1,220kW→常時が割りと高い。
最大使用水量:1.67m3/s
有効落差:135.40m
水車:出力2030kW×1台
導水路(下山沢→与川):総延長306.6m
導水路(与川→発電所):総延長2152.9m
流域面積:44.7km2
取水:下山沢→与川(567.71m)
放水:木曽川(424.24m)

この与川沿いに中山道がある。
>木曽川沿いの中山道は水害でたびたび通行不能となり、その迂回路として三留野から野尻へと峠越えをする与川道(よがわみち)ができました。[南 木曽町
とのこと。木曽町は木曽福島町,南木曾町は三留野町が良いなあ♪(;´Д`)

熊野古道が山の中を突っ切るのは最短距離でもあるし川沿いの道は不安定だったのだろうなあ。

取水が2箇所あるが内訳とか不明でなんとも言い難い所ではある。調査待ち。

44.7km2から1.67m3/sしか取水せず1926運開の余りやる気のない発電所なので(常時は結構高め。。)こちらで水を取り上げても問題は無さ そう(かも)。
44km2から18km2取り上げたとして残りが26km2。最大使用水量1.67m3/sにお似合いの水域にはなりそう。。

勿論,与川経由より田光経由の方が水を有効活用できる。
P/S名
出力
水量
落差
水発電効率
与川P/S
1.76MW
1.67m3/s
135.4m
1.05





田光P/S
2.5MW
2.78m3/s
108.79m
0.90
橋場P/S
1.9MW
4.09m3/s
55.80m
0.46
読書4G
74.6MW
75m3/s
111.89m
0.99

4.4MW

407.59m
2.35

ここから一寸工夫すると大桑発電所(0.33)でも発電出来る。

ただ古いシステムに中途半端に投資するよりは伊奈川を活かしたい。
寧ろ浦川からは伊奈川ダムへ送る方が面白いかも。これで課題の①に対応出来るのである。

差し当たっての増強案としては以下:
先ずは伊奈川支流・越百川の990m地点より取水して伊奈川ダムに送水する。26km2。2m3/s程取水出来そう。

更に浦川1010m付近より。11.6km2。1.1m3/s程獲って越百川経由で伊奈川ダムへ。

勿論,伊奈川の容量を増やす必要はなし。
現況でも76.6m3/sの流域面積で無理して11m3/sに3.11m3/sを供給してる感はある。ダムに貯めて発電量を増やす方向が良さそう。
田光の相之沢の放水迄考えると使用水量が少ない問題も全て解決しよう。

と云う事で田光の増強は伊奈川・越百川の伊奈川ダムに取られない残り箇所から取水すると云う方 針にする。ここの35km2からここの26km2を引くと 9km2程。
この通常時9km2(→0.5~0.8m3/s)に加え,ピーク時相之沢PS3.11m3/sを用いて現行最大水量の2.78m3/sの中で発電していく のが現実的であろう。
全部は使い切れない(オーバーフローが起きて一部の水を逸失してしまう)けど,水車の交換や増設が必要となる発電力の増強なんかは非現実的で稼働率向上で 発電量を増やす方がいいだろう。先述の様にひろしさんのレポに よると途中の鉄管も更新されちゃったみたいで今更のタイミングで増強は望めない。


関西電力(株) 橋場発電所[水力
運開:1929.2.14[伊奈川電力(株)]※
水路式・流込式
認可最大出力:1,900kW  常時出力:220kW
最大使用水量:4.09m3/s
有効落差:55.80m
水車:出力1935kW×1台
導水路:総延長1913.6m
流域面積:119.5km2
取水:伊 奈川(588.48m)
放水:伊奈川525.94m

wiki (木曽発電)に拠ると
>伊那川電力株式会社(いながわでんりょく)の社名で1928年(昭和3年)に設立され、製紙会社樺太工業が経営した長野県木曽地域での電気供給事 業を引き継いだ。
とある。wiki (中央製紙)に拠ると
>橋場の水力発電所と田光発電所は(とは註:中央製紙が設置し樺太工業が継承した)木曽工場(の 1928年7月の)閉鎖後、大同電力系の伊那川電力(後の木曽発電)が継承し、橋場の水力設備については改造されて橋場発電所となった
とある。
元々橋場には田光発電所を設置した中央製紙の水力発電設備があったが橋場の水力発電設備は発電所では無かったというのか?また伊奈川電力の設立時期から考 えて木曽工場廃止に伴い伊奈川電力も設立されたのかも知れない。

須原で取水されないのでもっと下流まで流せないかとも思ったけど発電所そのものは84.95%と最高率だった。
その際に水量も再検討。田光発電所取水口以下で取水出来る流域として測ってみると27.55km2を得る。ここから伊奈川ダムへ導水したい浦川11.6km2を除くと約16km2ってとこ。
田光の2.78m3/sと橋場の4.09m3/sの使用水量の差,1.29m3/sを埋めるには恰度良い程度の大きさか。同じく伊奈川ダムへの導水が実現 した暁には田光の実質的な専任流域面積が9km2程度に なる計算なので併せると25km2の2m3/s程度が通常水量,空く2.09m3/sが相之沢発電所か ら流れてくるピーク水量での発電量という事になろう。

橋場の放水設備の小改造で須原での取水を増やせる。。

大桑の増強と併せてもっと剛胆に行くとこんな感じもありかも。