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水 素

◆水素による出力変動吸収実験。
2017.03.27 水素と蓄電池を使い分け、再生可能エネルギーの出力変動を吸収
2018.11.02 再エネ水素由来のアンモニアでCO2フリー発電に成功
2018.11.06 「再エネ+蓄電+水素」の新型システム、太陽光を72時間にわたり安定供給

エネルギー管理:
水素と蓄電池を使い分け、再生可能エネルギーの出力変動を吸収
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1703/27/news039.html

東北電力が再生可能エネルギーの出力変動対策に水素製造技術を活用する実証システムの運用を開始した。長周期と短周期の出力変動に対し、蓄電池と水素製造 を使い分けるのが特徴だ。出力変動対策は蓄電池を利用するのが一般的だが、水素製造技術の適用が可能かどうかを検証していく。
2017年03月27日 09時00分 公開
[陰山遼将,スマートジャパン]

 再生可能エネルギーの導入を拡大する上で欠かせない出力変動対策。東北電力はこうした出力変動対策に、水素製造技術を活用する実証実験を開始した。仙台 市青葉区の研究開発センターに設置を進めていた太陽光発電設備や水素製造装置などの導入が完了し、2017年3月23日から実証システムの運転が始まっ た。

 研究開発センターの屋上に出力50kW(キロワット)の太陽光発電設備を設置している。水素製造装置の製造能力は5Nm3/hで、貯蔵タンクの容量は 220Nm3である。太陽光発電で発電した電力で水素製造装置を稼働させる。製造した水素をタンクに貯蔵し、燃料電池で発電して研究開発センターの電力と して利用する仕組みだ。

 実証のポイントは短周期と長周期の2種類の出力変動への対応だ。実証システムには容量67kWh(キロワット時)の蓄電池も組み込まれている。こちらで 太陽光発電設備の短周期変動を吸収する。短周期以外の出力変動の吸収に、水素製造を活用する。蓄電池と水素製造の最適な使い分け方を検証していく狙いだ。

水素は蓄電池の代替となるか
 東北電力は、再生可能エネルギーの出力変動対策の確立に向けて、国の事業として大型の蓄電池を活用した複数の実証事業に取り組んできた。

 新たに研究開発センターで行う実証事業は、こうした蓄電池を活用した出力変動対策に、水素製造技術を活用できる可能性があるかを検証していく狙いだ。実証期間は2019年3月までの約2年間を予定している。



世界初、再エネ水素由来のアンモニアでCO2フリー発電に成功
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1811/02/news016.html

日揮と産総研らの研究グループが、再生可能エネルギーの電力で製造した水素を原料とするアンモニアの合成と、これを利用した発電に成功した。世界初の成果だという。
2018年11月02日 07時00分 公開
[スマートジャパン]

 日揮および産業技術総合研究所(以下、産総研)などの研究グループは2018年10月、再生可能エネルギーによる水の電気分解で製造した水素を原料とするアンモニアの合成と、そのアンモニアを燃料としたガスタービンによる発電に世界で初めて成功したと発表した。

 同グループは、水素のエネルギーキャリアとしてのアンモニアの優位性に基づき、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プロ グラム(SIP)「エネルギーキャリア」による研究の中で、2014年から「新規アンモニア合成触媒および再生可能エネルギーによる水の電気分解で得られ た水素を原料としたアンモニア合成プロセス」の研究開発を進めてきた。

 2018年5月には産総研、沼津工業高等専門学校、および日揮子会社の日揮触媒化成と共同で、触媒に使用する担体や触媒の製造方法を改良することにより、低温・低圧下で効率的にアンモニアを合成できる新たなルテニウム触媒の開発に成功した。新たなルテニウム触媒は約400℃かつ5MPa(メガパスカル)の低温・低圧下でのアンモニア合成が可能だ。また、希土類酸化物を担体に用いることが特徴であり、既に工業化されている炭素系担体を用いたルテニウム触媒に比べて安定性に優れている。

 同グループは福島県郡山市にある産総研の「福島再生可能エネルギー研究所」の敷地内に建設した同触媒および、一時的な水素供給用に設置した高純度水素ガスボンベを用いてアンモニアを合成する実証試験装置により、実証試験を開始した。

 アンモニアの生産能力は1日当たり20kg(キログラム)で、同実証試験を通じて、新たに開発した触媒が低温・低圧で高い活性を有することを確認すると ともに、再生可能エネルギーの使用時に課題となる急な運転条件の変更によるアンモニア製造量の変動に対応できることが検証できたという。それを受けて、こ のほど同グループは実証試験時に使用した高純度水素ガスボンベに替わり、敷地内に設置されている太陽光発電設備で発電した電力による水の電気分解を通じて 製造した水素を用いてアンモニアの合成。さらに、合成したアンモニアを燃料に出力47kW(キロワット)のガスタービンによる発電試験を行い、これに成功した。

 同グループによる再生可能エネルギーを活用した水素ならびにアンモニアの製造とこれを燃料とした発電は世界で初めてだという。これにより、製造から発電 に至るまでCO2を排出しないアンモニアを活用したCO2フリーなエネルギーサプライチェーンの確立に前進したとしている。


今回実証した再エネ由来水素とアンモニアを活用するエネルギーサプライチェーンのイメージ 出典:日揮

 今後も同グループは、引き続きアンモニアの合成試験を実施し、再生可能エネルギーを活用したアンモニアの製造コスト低減に向けて研究開発を行う計画だ。


「再エネ+蓄電+水素」の新型システム、太陽光を72時間にわたり安定供給
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1811/06/news008.html
2018年11月06日 07時00分 公開
[スマートジャパン]

 東北大学と前川製作所は2018年10月、新エネルギー・産業 技術総合開発機構(NEDO)の事業で、仙台市の「茂庭浄水場」に構築した電力と水素の貯蔵設備を組み合わせた「電力・水素複合エネルギー貯蔵システム」 による実証の結果、72時間(3日間)の連続運転に成功したと発表した。これにより、太陽光発電の出力や負荷消費電力の不規則な変動に対しても、再エネ由来の電力を高品質かつ長時間安定供給できることを実証したとしている。

 東日本大震災では約4日間の停電があり、宮城県内の石油備蓄基地の被害や物流の遮断により燃料確保が困難となった。…これらの浄 水場には非常時を想定し、ディーゼル発電機を導入しているが、災害時には燃料輸送や確保が困難かつ、あらかじめ大容量タンクに備蓄しておくと経年変化で動 作不良につながる恐れがある。一方、太陽光などの再生可能エネルギー電源を活用するには、需給変動を正確に制御するのに即応性・大容量性・耐久性を兼ね備 えたエネルギー貯蔵装置が必要で、全ての要求に応えるには複数のエネルギー貯蔵装置を組み合わせる必要がある。

 そこで両者はNEDOの事業で、大容量のエネルギー貯蔵とエネルギー需給の不規則な変動の補償を目的に、共同実施先である日本ケミコン、神鋼環境ソリューション、北芝電機とともに電力・水素複合エネルギー貯蔵システムの開発に取り組んできた。

 大容量非常用電源を確立するための技術課題に対しては、大容量エネルギー貯蔵にエネルギー密度の高い水素吸蔵合金または液化水素タンクの導入と、太陽光発電出力と負荷消費電力の差分に対し、両者の差分の変動を長周期変動分と短周期変動分に分解して、長周期変動分を水素貯蔵システムで、残りの短周期変動分を電力貯蔵装置で補償するシステムを考案。

 さらに、DC BUSと水素BUSを設け、長周期変動分を補償する水電解装置入力と燃料電池出力については電力制御(アクティブ制御)、短周期変動分を補償する電気二重 層キャパシタについては電圧制御(パッシブ制御)を行う。また、電力貯蔵システムと水素貯蔵システムのエネルギー貯蔵量は逐次測定し、常時の変動補償制御 と並行して、両エネルギー貯蔵量がそれぞれの目標範囲内に収まるようにエネルギー貯蔵量を制御するといった手法を導入した。


「電力・水素複合エネルギー貯蔵システム」の基本構成 出典:NEDO

 このシステムの有効性を確認するため、仙台市茂庭浄水場に20kW(キロワット)の実証システムを構築し、2017年8月より大規模自然災害による長期停電を想定した連続運転を実施。その結果、2018年10月4~6日の3日間、合計72時間の連続運転に成功した。

 NEDOは今回の成果について、「電力・水素複合エネルギー貯蔵システムが実用化可能な技術レベルにあることを示すもの」とし、化石燃料が不要で、非常 時でも高品質な電力を長時間安定して供給できるという特性から、CO2フリーの新たな非常用電源として、浄水場をはじめ、各自治体の大規模自然災害発生時 の避難場所などへの導入が期待されるとしている。

 今後同事業では、実証システムの信頼性の向上および早期実用化に向けて、システム試験を継続して行い、関連データの蓄積を進めるとともに、さまざまな天候や運転条件において長時間連続運転を実施する予定だ。



◆水素を燃料に市街地に電気供給

LNG混焼も出来るみたいだ。石炭がバイオマス混焼が標準になりつつある様に,LNGも水素との併燃が標準になってくるかも。

水素が燃料、市街地に電力供給 神戸に初の施設完成
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24468530Q7A211C1000000/

18年2月から実証運転
2017/12/10 12:26

水素を燃料とする電力を世界で初めて市街地の施設に供給する発電所が10日、神戸市で完成した。水素ガスタービンを使い、周辺の市民病院など公共施設4カ 所に電気を送る実証運転を2018年2月上旬に始める。川崎重工業と大林組が発電所を建設、神戸市が施設への供給などで協力した。水素は温暖化ガス削減に 向けた次世代エネルギーと有望視されており、地域での有効利用をめざす。

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成を受け、電気と熱を供給する施設を人工島のポートアイランド内に完成させた。1000キロワット級 のタービンで水素を天然ガスと混ぜて発電するほか、水素だけでの発電も実証する。水素は燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出しないため、その比率が高いほ どCO2削減につながるとされる。総事業費は約20億円。

工場内などで水素発電を利用する例はあるが、市街地の複数の施設に供給するのは世界初という。政府がめざす、水素を広く活用する「水素社会」への一歩ともなる。

実証運転は現在は17年度末までの予定だが、18年度以降も実用化へ向けて活用する方向で検討する。

水素は現状では化石燃料を使うより割高だが、30年ころには経済性も見合うようになると参加企業などは見込む。同日開いた式典で、川崎重工の金花芳則社長は「水素社会へのけん引役である水素発電の実用化」への意欲を示した。


世界初、市街地で水素100%による熱電供給を達成
―地域コミュニティーにおけるエネルギー最適制御技術の確立へ―
http://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100945.html
2018年4月20日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
株式会社大林組
川崎重工業株式会社

NEDO事業において、(株)大林組と川崎重工業(株)は、4月19日と20日に実施した実証試験において、市街地における水素燃料100%のガスタービン発電による熱電供給を世界で初めて達成しました。

神戸市ポートアイランドにおいて2017年12月のプラント完成以降、水素と天然ガスの混焼および水素専焼によるガスタービン発電機単独での実証や、天然ガスによる熱や電気供給の実証などを行ってきましたが、今回、水素のみを燃料として近隣の4施設への熱電の同時供給を実現しました。

1.概要
水素は、ガスタービンによる発電や燃料電池自動車などさまざまな用途で利用が可能で、エネルギーとして利用する際にCO2を排出しません。

今回のNEDO事業において、株式会社大林組と川崎重工業株式会社は、世界で初めて※1、市街地で水素のみを燃料としたガスタービン発電によって、熱と電気を近隣施設に供給するエネルギー供給システムの実証試験を4月19日と20日に実施しました。(図2)

今後も引き続き実証試験を進め、季節変動による水素ガスタービンの性能変化やエネルギー制御における最適な熱電併給バランスに関するデータを取得していく 予定です。これらの実証試験を通じて、燃料となる「水素」と「天然ガス」、コミュニティーで利用する「熱」と「電気」、これらを総合管理し、経済性や環境 性の観点から最適制御するために開発した統合型エネルギーマネジメントシステム(統合型EMS※2)の確立を目指します。

2.実証試験の実施内容
昨年12月に、1MW級水素ガスタービン発電設備「水素コジェネレーションシステム(水素CGS)※3」の実証プラントを、神戸ポートアイランドに完成させ、1月から試験運転を開始、2月の天然ガスによる熱電供給など、さまざまな技術の検証を行ってきました。

開発した水素CGSは、水素だけを燃料とすること(専焼)も、水素と天然ガスを任意の割合で混ぜ合わせたものを燃料とすること(混焼)も可能で、試験を通じて燃焼安定性や運用の安定性を確認しました。

また試験運転では、水素CGSから発生した熱(蒸気)や電気を近隣4施設(中央市民病院、ポートアイランドスポーツセンター、神戸国際展示場、ポートアイ ランド処理場)に供給するための基礎的な試験を行い、地域コミュニティー内でのエネルギーの最適制御システムの動作を検証しました(図3、図4)。

そして4月19日と20日に、水素のみを燃料に使用した運転を行い、中央市民病院とポートアイランドスポーツセンターの2施設に2800kWの熱を、これら2施設に加えて神戸国際展示場とポートアイランド処理場の合計4施設に合計1100kWの電力を供給し、水素のみでの実供給における各機器とシステムの性能を評価するとともに、システム全体が問題無く稼働することを確認しました。

3.実証事業の概要
【1】事業名:水素社会構築技術開発事業/大規模水素エネルギー利用技術開発/水素CGS活用スマートコミュニティ技術開発事業
【2】実施期間:2015年度~2018年度
【3】開発内容
(1)水素コジェネレーションシステム(水素CGS)の開発
担当:川崎重工業(株)

水素専焼、水素と天然ガスの混焼において、安定した燃焼を実現する技術の確立
水素と天然ガスの燃焼(専焼・混焼)が可能な1MW級のガスタービンを設置し、運転試験により出力、回転数、排気温度、圧力などの各種データを取得し、運転および運用の安定性を確認
(2)統合型エネルギーマネジメントシステム(統合型EMS)の開発
担当:(株)大林組(事業幹事社)、大阪大学(共同研究者)

電気、熱、水素を総合管理し、経済性と環境性を両立できるエネルギーマネジメントシステムを確立

【注釈】
※1 世界で初めて
これまでに発表されているガスタービンメーカーの公開資料を基に川崎重工業(株)にて調査したもの。
※2 EMS
エネルギーマネジメントシステム(Energy Management System)の略称。ビルや工場などで省エネを図るため、ITを活用してエネルギーを最適制御するシステムのこと。
※3 水素コジェネレーションシステム(水素CGS)
コジェネレーションシステム(Co-Generation System)の略称で、熱源より電力と熱を生産し供給するシステムの総称であり、国内では「コジェネ」あるいは「熱電併給」、海外では、 “Combined Heat & Power”あるいは“Cogeneration”などと呼ばれる。


◆コージェネ

「小水力水素」でコージェネ、東芝と岩谷が北海道で実証
https://tech.nikkeibp.co.jp/dm/atcl/news/16/052511141/?ST=msb

2018/05/25 12:18
工藤宗介=技術ライター

 東芝エネルギーシステムズ(川崎市)と岩谷産業は、北海道釧路市・白糠町などにおける水素サプライチェーン実証実験の本格運用を開始した。このほどすべての実証設備が完成し、(2018年)5月24日に現地で開所式を開催した。

 再生可能エネルギーの電気で水素を製造・運搬・貯蔵し、燃料電池コージェネレーション(熱電併給)システムと燃料電池自動車(FCV)で利用する。

 環境省に採択された実証事業「小水力由来の再エネ水素導入拡大と北海道の地域特性に適した水素活用モデルの構築実証」で、水素の製造から貯蔵・運搬・利用までの一貫した低炭素なサプライチェーンモデルを構築する。実証期間は2019年度末まで。

 白糠町にある庶路ダムに200kWの小水力発電所を建設した。同発電所で発電した電気を用いて、東芝エネルギーシステムズ製の水電解水素製造装置で水素を製造する。同装置は、1時間あたり最大約35Nm3の水素製造能力があるという。

 製造した「小水力水素」は岩谷産業が貯蔵・運搬する。釧路市内の福祉施設、白糠町内の酪農家、白糠町温水プールに東芝エネルギーシステムズ製の燃料電池 「H2Rex」を設置し、水素を燃料に電気と温水を供給する。また、トヨタ自動車・士別試験場のFCVにも水素を供給する。

 寒冷地域である北海道は熱利用が多いため、地域一体となった水素サプライチェーンを構築することで、H2Rexが供給する電気と温水の両方を最大限に活用できるとしている。北海道に適した再エネ導入のあり方を検証する。


自然エネルギー:
北海道の水素エネルギー普及計画、2040年までのロードマップ
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1608/19/news037.html


太陽光からバイオマスまで再生可能エネルギーの資源に恵まれた北海道で、水素エネルギーの普及を目指す長期的な取り組みが始まる。再生可能エネルギーから 作った水素を道内全域に供給できるサプライチェーンを構築する計画だ。2040年までに道外を含めた広域の水素供給体制も実現させる。
2016年08月19日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 広大な土地を有する北海道では再生可能エネルギーが各地域に分布する一方、エネルギーの消費地が都市部に集中するために地産地消がむずかしい。この問題 を解決する有効な方法が水素エネルギーの活用だ。再生可能エネルギーで作った水素を貯蔵・輸送できるサプライチェーンを道内に構築して、地域の活性化と産 業の育成を目指す(図1)。

図1 水素サプライチェーンの構築イメージ。出典:北海道環境生活部

 北海道庁は構想の実現に向けて「水素サプライチェーン構築ロードマップ」を策定して8月4日に公表した。2040年までに3つのステップに分けて計画を推進する。第1ステップ(STEP1)は2016年から2020年までの5年間で実施する。札幌市などの大消費地を中心に燃料電池のエネファームと燃料電池車の導入を促進しながら、再生可能エネルギーが豊富な地域では水素を地産地消する実証プロジェクトに取り組んでいく。

 国が2014年に発表した「水素・燃料電池戦略ロードマップ」に合わせて、2030年までにエネファームを北海道の全世帯(240万世帯)の1割に、燃 料電池車を9000台に拡大する目標を掲げた。さらにサプライチェーンを完成させる2040年には、道内の全域に水素ステーションを展開する計画だ。その 目標に向けて2016年4月に北海道で初めての水素ステーションが室蘭市で稼働した。

 室蘭市を含めて水素エネルギーの実証事業や導入計画が6つの地域で進んでいる。実証事業は西部の苫前町(とままえちょう)で風力発電、中部の鹿追町(しかおいちょう)では乳牛の糞尿から作ったバイオガス、東部の白糠町(しらぬかちょう)では小水力発電を利用して水素を製造する試みだ(図4)。それぞれのプロジェクトには民間の有力企業が参画して、官民一体で取り組んでいく。


図4 水素エネルギーの実証事業と自治体の取り組み。出典:北海道環境生活部

水素の製造可能量は消費量の2倍にも
 続く第2ステップ(STEP2)は2030年までの10年間を対象に、水素サプライチェーンを広域に拡大する。…大消費地の都市部に定置式の水素ステーションを増やすのと同時に、水素を貯蔵して遠隔地まで輸送するシステムの構築も進める予定だ。

 北海道には地域ごとに再生可能エネルギーが分布している。…それぞれの地域の特性に合わせて、再生可能エネルギーから作った水素を地産地消するモデルを展開できる。

 北海道庁の調査によると、道内で1年間に製造可能な水素の量は北海道全体のエネルギー消費量と比べて最大で2倍程度を見込める。…2030年からの第3ステップ(STEP3)では、道内の全域に水素サプライチェーンを構築するのと合わせて、道外にも水素を供給できる広域の輸送システムを完成させる(図7)。

 こうして3つのステップを通じて、水素の製造から貯蔵・輸送・利用までの拡大策を官民連携で実施していく構想だ(図8)。…


図8 水素サプライチェーン構想のロードマップ(画像をクリックすると拡大)。出典:北海道環境生活部



◆日豪褐炭水素プロジェクト

>水素のステーション価格は現在、1立方メートル(0度、1気圧の標準状態)あたり100円程度だが、政府は商用化を目指し30年に30円まで下げる目標を掲げる。

2018.9.28 10:00
脱炭素化の新たな選択肢
~石炭から水素の安定製造目指し、日豪約9000キロを結ぶサプライチェーン構築へ~
https://www.sankei.com/life/news/180928/lif1809280009-n1.html

 オーストラリア南東部ビクトリア州の州都メルボルンから約150キロ東に位置する炭鉱地区、ラトロブバレー。19世紀から石炭を採掘し、電力産業が盛ん な同地区で、「脱炭素化」の切り札となる水素を軸にした世界初のプロジェクトが始まった。現地で未利用のまま豊富に存在する石炭から水素を製造し、約 9000キロ離れた日本に運ぶ壮大なサプライチェーン(供給網)の構築を目指す実証事業だ。Jパワー(電源開発)、川崎重工業、岩谷産業、シェルジャパンの4社が設立した「技術協同組合CO2フリー水素サプライチェーン推進機構(HySTRA)」が中心になって進める。



未利用の「低品位炭」をクリーンエネルギーに転換

 事業の中核になる石炭は英語で「brown coal(褐色の石炭)」と呼ばれる「褐炭(かったん)」だ。一大産地のラトロブバレーは地表下から深さ 250メートルまで埋蔵が確認され、日本の総発電量の240年分まかなえる豊富な資源量を誇る。採掘コストも低く安価に入手できる一方で、炭素の含有量が 少なく、水分を50~60%と多く含むため、火力で使う瀝青炭(水分15%以下)などに比べ輸送や発電の効率が悪い。結果、需要は ほぼ炭鉱近くの発電所のみに限られ、「低品位炭」とされる。


石炭の種類

 実証では、この未利用資源である褐炭から水素を製造。液化して日本へ輸送し、荷役・貯蔵に至るまで、一連のサプライチェーン構築に向けて取り組んでい る。将来的には、水素製造の際に発生するCO2を分離・回収し、CO2フリーの水素サプライチェーンの実現を目指す。年内に現地の基礎工事に入り、 2019年に水素ガスの製造プラント、低温の液化設備、港湾の積み荷・揚荷用基地などを設置し、20年にも試験運転の開始に向けて一歩ずつ進めていく。


「貯(た)め」「運び」「利用」できるエネルギー源

 パリ協定発効後、世界では温室効果ガス削減に向けた「脱炭素化」への動きが急速に広がっている。… その1つである水素(H2)は、酸素(O2)と化学 反応することで発電し、排出するのは水(H2O)のみ。発電時に二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスを排出しないクリーンなエネルギー源だ(とは註:惜 しむらくは今回のプロジェクトでは石炭の水素化の際にCO2は排出される)。

 日本政府が昨年12月に策定した水素基本戦略は国内の再生可能エネルギーの余剰電力や海外の未利用エネルギーなどを水素に転換することで、「貯め」「運び」「利用」できる特性を指摘。日本にとって、「エネルギー安全保障と温暖化対策の切り札」と評価した。

 ただ、政府が目指す水素社会の確立には、需要と供給の両面でコストの壁が立ちはだかる。天然にほぼ存在しない水素は、現在は天然ガスなどを改質する製造 方法が主流だが費用がかさむ。それゆえ採算確保を不安視する供給業者は投資に及び腰だ。供給体制が整わない中、燃料電池車(FCV)の普及が進まないなど 需要拡大も見込めず、大量生産による費用低減は見込めない。「鶏が先か、卵が先か」の状態だ。

 水素のステーション価格は現在、1立方メートル(0度、1気圧の標準状態)あたり100円程度だが、政府は商用化を目指し30年に30円まで下げる目標を掲げる。

褐炭を「ガス化」して安価で大量の水素製造

 こうした需給の課題を一挙に解決する可能性を秘めるのが、今回の日豪の水素サプライチェーン構築実証事業だ。水素製造の過程で活用されるのが、Jパワーが培ってきた「石炭ガス化技術」である。

 ガス化の仕組みはこうだ。褐炭を細かく砕き、酸素とともにガス化炉に噴出。炉内で1000度以上に加熱すると、微粉炭の主成分の炭素(C)が水分(H2O)や酸素(O2)と化学反応し、主に水素(H2)と一酸化炭素(CO)の可燃性ガスになる。(とは註:COはどうするんだ??燃やしてCO2と電気にするとか?)

 このガスから水素を取り出し、マイナス253度で液化して輸送することで、炭鉱から離れた国での大量利用を可能にする。また、低価格の褐炭を原料として製造費用を引き下げ、需要先は世界中に拡大できる。需給両面で水素の普及を後押しするシナリオだ。

 Jパワーの小俣浩次・技術開発部ガス化技術担当部長は「安価で、未利用のまま豊富に存在する褐炭をガス化することで、水素を最も安く製造する有望な方法の一つになる」と指摘する。

「EAGLEプロジェクト」の独自構造を採用

 Jパワーは1980年代から石炭ガス化技術の開発を開始した。元来は、化石資源を化学製品の原料として利用しやすい水素、一酸化炭素に転換する技術であったが、「石炭ガス化複合発電(IGCC)」とよばれる高効率発電技術の開発に取り組んできた。…
※IGCC:Integrated Coal Gasification Combined Cycle

 Jパワーは新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と共同で実施してきた「EAGLEプロジェクト」において独自技術を開発。酸素の供給量を適 切に制御することで、石炭ガス化炉の高効率化と安定稼働の両立を実現する。結果、EAGLEは1日150トンを処理できるガス化炉の大型化を実現するとと もに、石炭の発熱量をガスに移行する比率も世界最高水準の82%を達成した。

「当社は10年以上にわたり、この石炭ガス化炉の安定運転を続けた。蓄積した技術と経験、人財は今回の水素サプライチェーン構築に役立つものだ」と小俣氏は話す。

 ラトロブバレーに建設予定の小規模ガス化炉で試験を繰り返すほか、日本のJパワーのEAGLEガス化炉でも運用性やトータル性能を検証する予定だ。小俣 氏は「褐炭は成分にばらつきがあるので、多くのデータが必要になる。ガス化炉が安定稼働する条件を見つけ、どれだけ効率を上げられるかが課題だ」と説明し た。

目指すはCO2フリーの水素製造

 水素は発電時にはCO2を排出しないが、石炭をガス化して製造する際の排出は避けられないそこで、実証に併せ、ラトロブバレーではオーストラリア連邦政府とビクトリア州政府の共同基金で、新たなプロジェクトにも着手している。

 発生するCO2を分離・回収し、長期間貯留する「CCS技術」だ。排ガスから化学反応を利用してCO2を分離し、高純度で回収。枯渇したガス田などに輸送し、圧縮機で深さ1000メートル以上の地層の砂粒の隙間に封じ込め、実質的な排出ゼロを目指す。

 ラトロブバレーから約80キロ先の沖合には枯渇しかけた海底油田が存在し、大規模な貯留容量が見込まれる。…


脱炭素化の実現に向け取り組みつづける技術開発

 Jパワーは国内でも中国電力と共同で、「大崎クールジェンプロジェクト」(広島県)において、クリーンコール技術の商用化に向けた実証事業を進めている。…

提供:J-POWER(電源開発株式会社)

◆水素発電

日豪褐炭水素化プロジェクトに川崎重工が絡んでたのはLNG輸送船に引き続き水素輸送船も手がけるだけではなく水素発電設備での収益も狙っているらしい。
これは2014年の記事。

水素発電設備、川重が世界初の量産 17年メド
https://www.nikkei.com/article/DGXNASDD120G1_V10C14A2MM8000/

2014/2/16付日本経済新聞 電子版

川崎重工業は2017年をメドに、水素を燃料とする火力発電設備を、世界に先駆けて量産する。水素は燃やしても二酸化炭素(CO2)を排出しないほか、長 期的に発電コストが天然ガス火力並みに下がる見通し。川重は自家発電設備として日本や、温暖化ガスの削減を急ぐ欧州などで売り込む。三菱重工業や米ゼネラ ル・エレクトリック(GE)なども開発を急いでいる。水素発電は20年以降に普及しそうだ。

川重は火力発電の中核設備であるガスタービンの大手。水素燃料だけで発電するタービンを世界で初めて実用化する。標準家庭で2000世帯分を賄える出力 7000キロワット級など中小型機を明石工場(兵庫県明石市)で量産する計画。価格は従来のガスタービンより1~2割高い水準に設定する考えだ。

水素はガスと比べて熱量が大きいため燃やすとタービン内の燃焼温度が非常に高くなり故障の原因となる。川重は専用の冷却装置を取り付け、タービン内部の設計も改良し耐久性を高めた。

水素発電は燃料のコストの高さと安定調達が課題だった。トヨタ自動車など世界大手は今後、水素を燃料とする量販タイプの燃料電池車を相次ぎ投入、20年以 降に先進国で普及する見通しだ。水素が大量生産されることで、燃料価格が現在の3分の1程度に下がり、水素発電のコストも石炭やガスを使う火力発電に対抗 できる可能性がある。水素発電設備の世界市場は30年に2兆円規模になるとの予測もある。